0:00:01.034,0:00:02.378 こんなゲームを考えてみましょう。 0:00:04.121,0:00:06.165 イヴがボブに部屋に行くように指示しました。 0:00:06.165,0:00:09.626 部屋には、いくつかの鍵と、空っぽの箱、 0:00:09.626,0:00:12.838 一組のトランプカードの他には 0:00:12.838,0:00:16.508 何もありません。 0:00:16.508,0:00:18.511 イヴはボブにカードを1枚選んで 0:00:18.511,0:00:22.800 思いつく最高の隠し方で隠せと言いました。 0:00:22.800,0:00:24.891 ルールは簡単。 0:00:24.891,0:00:27.060 ボブは部屋の外に何かを持ちだしてはいけません。 0:00:27.060,0:00:30.021 カードと鍵は全て部屋の中になければいけません。 0:00:30.021,0:00:34.735 また、箱の中にカードを1枚しか入れてはいけません。 0:00:34.735,0:00:38.363 イヴは鍵を持っていません。 0:00:38.363,0:00:42.784 イヴが、隠されたカードが分からないならボブの勝ちです。 0:00:42.784,0:00:45.120 どうするのが最善でしょう? 0:00:45.120,0:00:48.123 ボブはダイヤの6を選びました。 0:00:48.123,0:00:50.834 そして箱に入れました。 0:00:50.834,0:00:53.628 最初、彼は何種類かある鍵を見て 0:00:53.628,0:00:58.133 南京錠でカードの入った箱に鍵をしようと考えました。 0:00:58.133,0:01:00.636 しかし、イヴはピッキングできます。 0:01:00.636,0:01:03.180 そこで、彼はダイヤル錠を選びました。 0:01:03.180,0:01:05.223 ダイヤル番号は鍵の後ろに書いてありますが、 0:01:05.223,0:01:08.977 それさえ消してしまえばピッキングは困難です。 0:01:08.977,0:01:12.063 これは最もいい選択のように思えます。 0:01:12.063,0:01:13.815 しかし、彼は問題点に気づきました。 0:01:13.815,0:01:15.984 テーブルの上に残されたカードを見て 0:01:15.984,0:01:18.487 どのカードが無いのか考えれば、 0:01:18.487,0:01:20.989 選んだカードがわかってしまいます。 0:01:20.989,0:01:23.992 箱の鍵はおとりでした。 0:01:23.992,0:01:25.494 選んだカードを山と別の場所におくべきでないのです。 0:01:25.494,0:01:28.123 ボブはカードを山に戻しました。 0:01:28.123,0:01:31.998 しかし、彼は選んだカードがどこにあったかわかりません。 0:01:32.244,0:01:34.711 なのでシャッフルして、十分にまぜました。 0:01:34.711,0:01:37.631 混ぜることが一番の隠し方なのです。 0:01:37.631,0:01:42.631 なぜなら、何を選んだかの情報がどこにも残らないからです。 0:01:42.678,0:01:47.402 混ぜたことで選ばれたカードは他のカードと[br]「同様に確からしく」なりました。 0:01:48.183,0:01:51.061 あとはカードの山を堂々と置いておけばよいのです。 0:01:51.061,0:01:53.731 これでボブの勝ちです。 0:01:53.731,0:01:56.942 イブはどんな情報も得られないので、 0:01:56.942,0:01:58.998 彼女にできることは、ただの推測しかありません。 0:01:58.998,0:02:01.405 最も重要なのは、 0:02:01.405,0:02:04.200 どんなに強力な計算能力を持っていたとしても、 0:02:04.200,0:02:08.502 イヴは推測以上のことはできないということです。 0:02:08.662,0:02:13.500 このことを、「完全秘匿(ひとく)」といいます。 0:02:13.500,0:02:17.504 1945年9月1日、29歳のクロード・シャノンが 0:02:17.504,0:02:20.215 このことを取り扱った論文を発表しました。 0:02:20.215,0:02:24.719 シャノンはどうしてワンタイムパッドがどうして解読不可能かを 0:02:24.719,0:02:27.430 始めて数学的に証明しました。 0:02:27.430,0:02:29.850 シャノンは暗号化の方法についてこのように考えました。 0:02:29.850,0:02:33.104 アリスが20字の文をボブに送る[br]という場面を考えてみましょう。 0:02:33.104,0:02:34.021 これはある一枚の紙を 0:02:34.021,0:02:35.522 「平文空間」から選び出すのと同じ事です。 0:02:35.522,0:02:40.110 ここでの「平文空間」とは、 0:02:40.110,0:02:42.863 20文字でできる全ての組み合わせの集合体です。 0:02:42.863,0:02:47.117 考えられるどんな20文字の文章も、 0:02:47.117,0:02:47.826 このなかに含まれています。 0:02:47.826,0:02:49.119 つぎにアリスは、1~26の数を20個使った 0:02:49.119,0:02:52.497 全ての組み合わせの表を用いて 0:02:52.497,0:02:55.792 「鍵空間」を作ります。 0:02:55.792,0:03:00.380 「鍵空間」は、あり得るすべての暗号の寄せ集めです。 0:03:00.380,0:03:02.675 つまり、暗号の鍵を作るのはこの「鍵空間」から 0:03:02.675,0:03:06.511 どれか1枚を無作為に選ぶのと同じ事です。 0:03:06.511,0:03:10.765 アリスが文章を暗号化し終えると、 0:03:10.765,0:03:13.810 最初の平文の代わりに「暗号文」が残ります。 0:03:13.810,0:03:16.479 「暗号文空間」は、ある暗号化を施した時の 0:03:16.479,0:03:18.607 あり得るすべての結果を表しています。 0:03:18.607,0:03:22.697 アリスが暗号の鍵を使うと、 0:03:22.697,0:03:25.030 全ての山の中から特定のページを指し示すことができます。 0:03:25.030,0:03:28.617 このとき、[br]「平文空間」 と 「鍵空間」 と 「暗号文空間」 0:03:28.617,0:03:30.785 このとき、[br]「平文空間」 と 「鍵空間」 と 「暗号文空間」 0:03:30.785,0:03:32.537 3つの大きさはすべて同じになります。 0:03:32.537,0:03:35.790 これが、「完全秘匿(ひとく)」です。 0:03:35.790,0:03:38.501 もし誰かが、「暗号文空間」のみに[br]アクセスできたとしても、 0:03:38.501,0:03:42.506 知ることができるのは、 0:03:42.506,0:03:44.883 あらゆる文章が「同様に確からしい」ということだけです、 0:03:44.883,0:03:48.387 どんなに計算能力があったとしても、 0:03:48.387,0:03:50.555 元の文を探る推測の助けにはなりません。 0:03:50.555,0:03:54.017 ワンタイムパッドの問題は、 0:03:54.017,0:03:56.636 膨大な長さの暗号化表を 0:03:56.645,0:04:00.231 共有しておかなければならないという点です。 0:04:00.231,0:04:03.360 この問題を解決するためには、 0:04:03.360,0:04:07.656 「秘匿性」について少し妥協して、 0:04:07.656,0:04:09.123 「疑似乱数」を使うことになります。