誰かの幸せを願えること。| 幡野広志 | TEDxHamamatsu
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0:19 - 0:22こんにちは 幡野といいます
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0:22 - 0:25僕は36歳 写真家をしています
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0:26 - 0:30写真家というのは たくさんの人と出会い
いろんな場所に行きます -
0:31 - 0:35僕にとってカメラというのは
人や場所と繋げてくれるものです -
0:36 - 0:40写真家というのは
見聞の広がる とてもたのしい仕事です -
0:41 - 0:46僕は東京の郊外で
妻と3歳の息子と暮らしています -
0:47 - 0:50生まれたばかりの頃は
何もできなかった息子が -
0:50 - 0:53今では自分で歩いて
自分で食事をしてくれます -
0:55 - 1:00泣くことでしか意思を伝えられなかったのが
今では言葉で伝えてくれます -
1:01 - 1:04育児というのは
大変なこともありますが -
1:04 - 1:09子どもの成長とともに
日々 楽になっていることを感じます -
1:10 - 1:14たのしい仕事をして
家族や友人に恵まれ -
1:14 - 1:18ストレスとは無縁の 不自由のない
しあわせな生活を送っています -
1:20 - 1:25僕は 一見すると健康そうに見えますが
血液がんの患者です -
1:26 - 1:30現代の医療では治すことができない
病気にかかっています -
1:31 - 1:35今はこうして
立って話すことができますが -
1:35 - 1:37いずれ 体を起こすことも
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1:37 - 1:41痛みや苦しさで会話をすることも
できなくなるでしょう -
1:42 - 1:47もしくは体調が急変して 1ヶ月後には
もう死んでいるかもしれません -
1:50 - 1:53人間は 誰でもいつか 必ず死にます
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1:54 - 1:56これは 仕方がないことです
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1:57 - 2:02しかし 苦しんで死ぬということが
僕には耐えることができません -
2:04 - 2:08苦しさというのは
身体的なことだけではありません -
2:09 - 2:12好きなことができなくなり
嫌なことを押し付けられ -
2:12 - 2:16自由を奪われるという苦しさが
僕には耐えられません -
2:18 - 2:23自由というのは人間の尊厳であり
アイデンティティの基礎になります -
2:24 - 2:29人間は 生きているから素晴らしいのではなく
自由であるから素晴らしいんです -
2:31 - 2:35この自由が 病気になると
奪われようとします -
2:36 - 2:40しかし 病気が自由を奪うわけではありません
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2:41 - 2:45では 誰が病人から
自由を奪ってしまうのでしょうか -
2:47 - 2:53それは 病人の周りにいる家族によって
自由が奪われてしまうんです -
2:55 - 2:56家族というのは
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2:56 - 3:00「一分一秒でも長く生きてほしい」
そう願います -
3:01 - 3:05一見すると とても聞こえがいい言葉ですが
少し見方を変えると -
3:05 - 3:11自分の家族が死んでしまうことの
悲しみの先送りでしかありません -
3:12 - 3:16自分が悲しみたくないから
自分が心配をしたくないから -
3:16 - 3:21自分が安心をするために
病人の自由を奪ってしまうんです -
3:23 - 3:27ゆっくりしていなさいと
病人をベッドに寝かせて -
3:27 - 3:32本人の望まない治療や 延命措置を
施してしまうこともあります -
3:34 - 3:37本人の意思に関係なく
家族の判断によって -
3:37 - 3:43回復の見込みがないのに
機械によって強制的に生かす延命措置を -
3:43 - 3:46僕は正しいとは思いません
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3:47 - 3:51自由を奪うということは
人間の尊厳を奪う行為です -
3:54 - 3:58医者は患者の希望ではなく
家族の希望を優先します -
4:00 - 4:05患者が延命措置を拒否していても
家族が延命措置を求めれば -
4:05 - 4:08医者は延命措置を施します
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4:09 - 4:13運転免許証の裏にある
臓器提供意思カード -
4:13 - 4:17あれに 本人が提供する意思の
サインをしていても -
4:17 - 4:21家族が反対をすれば
臓器提供はされません -
4:22 - 4:27日本には 病人の意思を保障する方法が
一切ありません -
4:28 - 4:31僕たちの命は
僕たちが決めるのではなく -
4:31 - 4:35悲しみたくない という
家族によって決定されます -
4:37 - 4:41僕の妻は 僕の意思を尊重すると思います
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4:41 - 4:46しかし 僕の親族や妻の親族が
妻にプレッシャーを与えます -
4:47 - 4:51そのプレッシャーに
妻が負けてしまう可能性だってあります -
4:52 - 4:58日本の医療レベルというのは 世界的に見て
とても高い水準を保っています -
4:58 - 5:03しかしそれは 助けることができる
命に限った話です -
5:04 - 5:06助けることができない命に対して
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5:06 - 5:10日本の医療というのは
とても低いと言わざるを得ません -
5:13 - 5:18僕は自分の尊厳を守るために
安楽死をすることを検討しています -
5:20 - 5:25安楽死というのは 日本では違法行為のため
海外に行ってやることになります -
5:27 - 5:30しかしこれは そう簡単な話ではありません
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5:30 - 5:34体調が急変したり
タイミングが一つでもずれれば -
5:34 - 5:38海外に行って安楽死ということは
できないでしょう -
5:39 - 5:44僕は実際に 安楽死をするための
会員登録を済ませていますが -
5:44 - 5:49実際に安楽死ができる可能性というのは
とても低いと考えています -
5:49 - 5:52おそらくできないでしょう
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5:52 - 5:57日本人が海外で安楽死をするというのは
とてもハードルが高いことです -
5:59 - 6:04日本国内でも安楽死ができるように
法律を変える必要があると -
6:04 - 6:06僕は考えています
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6:07 - 6:11自分の命を 自然な寿命で
全うしたいという人 -
6:11 - 6:14延命措置をしてでも
生きたいという人 -
6:15 - 6:18これ以上苦しみたくないから
安楽死をしたいという人 -
6:19 - 6:24それぞれの価値観に対応していくには
選択肢の幅を広げるしかありません -
6:25 - 6:31そしてその選択肢を 家族ではなく
患者本人が選ぶ必要があります -
6:33 - 6:38家族であろうと 誰であろうと
人の価値観を否定してはいけないのです -
6:39 - 6:43人の価値観を否定して
自分の価値観を押し付けることが -
6:43 - 6:46自由を奪う第一歩です
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6:47 - 6:50全ては 価値観の否定から始まります
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6:52 - 6:57安楽死の話をすると 多くの人が
最後の死に方だけを注目します -
6:58 - 7:03しかし 本当に大切なことは
死に方ではなく 生き方です -
7:04 - 7:10好きなことをして自由に生きる
というのが 僕にとっては大切な生き方です -
7:12 - 7:16安楽死を選択することによって
最後に苦しまなくていい -
7:16 - 7:19という安心感が
生きやすさを後押ししてくれます -
7:22 - 7:26いつでも楽に死ぬことができる
そう考えることによって -
7:26 - 7:30ギリギリまで 最後まで頑張って
生きようという気持ちになります -
7:33 - 7:35「諦めるんじゃない」「がんばれ」
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7:36 - 7:40こういった言葉は健康な方から
たくさん言われてきました -
7:40 - 7:45これらの言葉は 助からない患者にとって
毒になる言葉です -
7:47 - 7:52僕は 自分の人生を諦めているわけでもなく
死にたいわけでもなく -
7:52 - 7:55ただ 最後まで たのしく生きたいだけです
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7:58 - 8:02僕は 自分の死と向き合うことで
「生きることとはなんだろう?」 -
8:02 - 8:05ということも
よく考えるようになりました -
8:06 - 8:11人は いつか死んでしまうのに
どうして生まれて 生きるんでしょうか -
8:13 - 8:15僕がたどり着いた答えは
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8:15 - 8:20人は人それぞれのしあわせを
享受するために生きている ということです -
8:21 - 8:25僕のしあわせと
誰かのしあわせは違います -
8:26 - 8:29自分のしあわせを見つけて
それを享受することが -
8:29 - 8:32生きる理由だと僕は考えています
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8:34 - 8:38子どもというのは
自ら進んで嫌なことはしません -
8:39 - 8:42自ら進んでやることは
たのしいことばかりです -
8:44 - 8:48子どもの好きなことを自由にやらせていれば
子どもはずっと笑顔です -
8:49 - 8:53本当は誰もが 子どもの時に
感じていたことを -
8:53 - 8:56大人になる途中で
忘れてしまったのかもしれません -
8:58 - 9:01しあわせを享受するという
とても簡単な答えを -
9:01 - 9:05僕は大きな病気をするまで
気付けていませんでした -
9:06 - 9:11そして健康な時に持っていた
欲の意味のなさにも気付きます -
9:12 - 9:16たとえば お金や名誉
女性にモテたい -
9:16 - 9:21いわゆる男性が想像しがちな
欲の意味のなさにも気付きます -
9:22 - 9:25これらは あの世に一緒に
持っていけるわけではないので -
9:25 - 9:28死ぬ人間にとっては
必要がないものです -
9:30 - 9:32病気になった今
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9:32 - 9:38僕は 自分の欲やしあわせではなく
誰かのしあわせを願うようになりました -
9:39 - 9:43妻や息子のしあわせや
友人たちのしあわせを -
9:43 - 9:45心から願っています
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9:47 - 9:52付き合った時間の長さではなく
付き合った時間の質が大切になり -
9:52 - 9:57たった数時間しか会わなかった人の
しあわせを願うようになりました -
9:58 - 10:00もしかしたら
本当のしあわせというのは -
10:00 - 10:04誰かのしあわせを願えること
なのかもしれません -
10:05 - 10:10そして 誰かのしあわせを願うには
まず自分がしあわせでなければ -
10:10 - 10:13心からは願えないでしょう
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10:14 - 10:20そして 自分がしあわせになるには
自由が保障されていなければなりません -
10:22 - 10:27生きることや しあわせについて
皆さんもぜひ考えてみてください -
10:27 - 10:32自分や家族が大きな病気になった時に
必ず 役に立ちます -
10:35 - 10:38(拍手)
- Title:
- 誰かの幸せを願えること。| 幡野広志 | TEDxHamamatsu
- Description:
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幡野 広志(はたの ひろし)
写真家/元狩猟家1983年、東京生まれ。
写真家であり狩猟家でもあった幡野氏は、かねてから生き物の命の営みを静かに見つめてきた。
2017年、多発性骨髄腫という血液のガンを発症。自身のガンを公表し、当事者としての率直な思いを発信し続けている。
病気のこと、残される家族のこと、死ぬことと生きること…
その言葉は私たちの気持ちを揺さぶり、大きな反響を巻き起こしている。このビデオは、TEDカンファレンスの形式で地元コミュニティが独自に運営するTEDxイベントにおいて収録されたものです。詳しくは http://ted.com/tedx をご覧ください。
- Video Language:
- Japanese
- Team:
- closed TED
- Project:
- TEDxTalks
- Duration:
- 10:46
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