WEBVTT 00:00:06.855 --> 00:00:12.955 ケニヤのサバンナで２頭のメスの キタシロサイ ナイェンとファトゥが 00:00:12.955 --> 00:00:15.565 ムシャムシャと満足そうに 草を食べています 00:00:15.565 --> 00:00:18.040 このビデオの公開時には 00:00:18.040 --> 00:00:23.390 彼女たちは 地球上に残された最後の ２頭のキタシロサイとして知られています 00:00:23.390 --> 00:00:26.030 彼女たちの種は機能的に絶滅しています 00:00:26.030 --> 00:00:29.990 オスがいないので ナイェンとファトゥは 生殖ができないからです NOTE Paragraph 00:00:29.990 --> 00:00:34.410 しかしまだ キタシロサイを 蘇らせる希望はあります 00:00:34.410 --> 00:00:36.269 どうすればいいのでしょうか？ NOTE Paragraph 00:00:36.269 --> 00:00:38.700 このお話は約50年前から始まります 00:00:38.700 --> 00:00:42.330 そのころサイたちのツノを狙って アフリカ中で密猟者たちが 00:00:42.330 --> 00:00:45.340 何千ものサイたちを 違法に狩り始めました 00:00:45.340 --> 00:00:48.440 さらに彼らの生息地で内戦が起きたため 00:00:48.440 --> 00:00:51.640 キタシロサイの個体数が 激減してしまいました 00:00:51.640 --> 00:00:57.427 1970年代 心配した保護活動家たちは 捕獲した上で繁殖させようと始め 00:00:57.427 --> 00:01:00.707 オスから精液を採取し保存しました 00:01:00.707 --> 00:01:05.474 意欲的な繁殖プログラムによって生まれたのは 最終的には たった４頭でした 00:01:05.474 --> 00:01:09.824 ナイェンと彼女の娘のファトゥが 残された２頭となり NOTE Paragraph 00:01:09.824 --> 00:01:15.440 2014年そのどちらにも仔サイがいないことを 保護活動家たちは確認しました 00:01:15.440 --> 00:01:19.530 ナイェンはファトゥを産みましたが 今は後ろ足が弱っていて 00:01:19.530 --> 00:01:23.437 もし再び妊娠した場合 健康を害する可能性があります 00:01:23.437 --> 00:01:27.128 一方ファトゥは 子宮内膜が弱っています 00:01:27.128 --> 00:01:34.112 そして最後のオスのキタシロサイ スーダンは2018年に亡くなりました 00:01:34.112 --> 00:01:38.062 しかし まだ微かな希望があります 人工生殖です 00:01:38.062 --> 00:01:42.539 生きているオスとメスがいなくても 妊娠することは可能ですが 00:01:42.539 --> 00:01:46.531 これは控えめに言っても 複雑でリスクのあるプロセスです 00:01:46.531 --> 00:01:51.125 科学者が精液を保存していても 彼らは卵子を集めなければならず― 00:01:51.125 --> 00:01:56.759 それは最長２時間はメスを 大人しくさせる必要がある複雑な手順です 00:01:56.759 --> 00:02:00.419 そして彼らは生存可能な胚を 研究室で作ろうとしました 00:02:00.419 --> 00:02:05.150 それは今まで誰もやったことがなく 誰も知らない方法です 00:02:05.150 --> 00:02:06.980 それはまだ始まりにすぎず― 00:02:06.980 --> 00:02:10.341 別の種のサイが代理母になり 00:02:10.341 --> 00:02:13.272 受精卵を妊娠させなければなりません NOTE Paragraph 00:02:13.272 --> 00:02:17.422 キタシロサイの近縁種である ミナミシロサイのメスが 00:02:17.422 --> 00:02:21.092 研究室の受精卵を育てるための鍵となり 00:02:21.092 --> 00:02:25.062 代理母の有力な候補になりました 00:02:25.062 --> 00:02:29.552 キタシロサイとミナミシロサイは 100万年前に分岐しましたが 00:02:29.552 --> 00:02:33.542 今でも非常に近い関係の種です 00:02:33.542 --> 00:02:38.038 彼らは生息地が違い わずかに身体的特徴が異なります NOTE Paragraph 00:02:38.038 --> 00:02:42.108 幸運な偶然ですが ミナミシロサイの中に 00:02:42.108 --> 00:02:45.042 生殖能力に問題があるメスが何頭かいて 治療が必要だったので 00:02:45.042 --> 00:02:49.412 研究者たちは治療の一環として 卵子を採取することができました 00:02:49.412 --> 00:02:53.427 2015年10月 デヴォー・クラロヴェ動物園で 00:02:53.427 --> 00:02:59.111 IZWベルリン(野生動物研究所)の専門家たちが ミナミシロサイから卵子を採取し始め 00:02:59.111 --> 00:03:04.895 それをイタリアにある動物繁殖の研究所 アヴァンティアに送りました 00:03:04.895 --> 00:03:11.921 そこで科学者たちは生存可能な胚を 作成する技術を開発し完成させました NOTE Paragraph 00:03:11.921 --> 00:03:13.651 彼らがその技術を習得すると 00:03:13.651 --> 00:03:19.709 2019年8月22日 研究者たちは ナイェンとファトゥの卵子を摘出し 00:03:19.709 --> 00:03:21.769 イタリアに空輸しました 00:03:21.769 --> 00:03:25.187 ３日後 彼らは卵子をキタシロサイの 00:03:25.187 --> 00:03:27.737 オスの精子と授精させました 00:03:27.737 --> 00:03:32.029 １週間後２つの卵子が発生段階に入り 00:03:32.029 --> 00:03:36.111 胚が冷凍可能になり 未来へ保存 できるようになりました 00:03:36.111 --> 00:03:41.049 また2019年12月に別の採取が行われ さらにもう一つ胚を作ることができました 00:03:41.049 --> 00:03:47.919 2020年初頭ではナイェンとファトゥの 健康状態が良ければ 00:03:47.919 --> 00:03:49.809 卵子を年に３回採取する予定です NOTE Paragraph 00:03:49.809 --> 00:03:51.999 その間 研究者たちは 00:03:51.999 --> 00:03:55.179 有望なミナミシロサイの 代理母を探しています 00:03:55.179 --> 00:03:58.979 理想的なのは 過去に妊娠経験がある個体です 00:03:58.979 --> 00:04:02.289 代理母計画は 成功するとの 思いで行われており 00:04:02.289 --> 00:04:05.209 ミナミシロサイとキタシロサイは 00:04:05.209 --> 00:04:10.149 最後の氷河期や近年の1977年にも 交配していたことから 00:04:10.149 --> 00:04:13.859 ミナミシロサイが キタシロサイを妊娠をできると 00:04:13.859 --> 00:04:17.109 研究者たちは前向きに捉えています 00:04:17.109 --> 00:04:20.909 さらに この２つの種は 妊娠期間が同じです 00:04:20.909 --> 00:04:24.879 しかしそれでも 胚をサイに移植するのは 00:04:24.879 --> 00:04:27.179 子宮頸部の形状が 理由となり難しいのです NOTE Paragraph 00:04:27.179 --> 00:04:29.809 数十年かかる最終的な目標は 00:04:29.809 --> 00:04:34.249 キタシロサイの繁殖個体数を 彼らの元々の生息地に 00:04:34.249 --> 00:04:36.577 確立させることです 00:04:36.577 --> 00:04:39.969 研究では１世紀前にその種が持っていた 遺伝的多様性を再生するのに 00:04:39.969 --> 00:04:45.420 十分な数の個体から得た サンプルがあると示唆しています NOTE Paragraph 00:04:45.420 --> 00:04:47.890 この取り組みの詳細は ユニークなのですが 00:04:47.890 --> 00:04:52.146 多くの生物が絶滅危惧または 機能的絶滅に直面しているので 00:04:52.146 --> 00:04:55.529 同時に大きな疑問を 投げかける場でもあります 00:04:55.529 --> 00:04:59.846 私たち人間は危機に瀕している生物を 救う責任があるのでしょうか？ 00:04:59.846 --> 00:05:03.928 特に人間の活動そのものが 彼らを危機に追い込んでいる場合は？ 00:05:03.928 --> 00:05:06.724 絶滅の危機に瀕している 動物たちを救うために 00:05:06.724 --> 00:05:10.196 私たちが重ねるべき努力に 制限はあるのでしょうか？