0:00:01.560,0:00:02.840 さて この話から始めましょう―2年前 0:00:02.840,0:00:04.562 ある企画の担当者が電話してきました 0:00:04.562,0:00:06.556 スピーチイベントに[br]出ることになっていたのです 0:00:06.556,0:00:08.409 彼女は電話口で言いました 0:00:08.409,0:00:10.000 「今 困っているのよ 0:00:10.000,0:00:12.329 案内にどうあなたの紹介文を書くかで」 0:00:12.329,0:00:14.121 「困るって何が?」 0:00:14.121,0:00:16.461 「あなたのスピーチから考えたら 0:00:16.461,0:00:19.629 研究者だけど―[br]もし研究者なんて紹介してしまったら 0:00:19.629,0:00:21.680 誰も来ないんじゃないかと思って 0:00:21.680,0:00:23.804 退屈で縁のない話と思われたらね」 0:00:23.804,0:00:25.231 (笑) 0:00:25.231,0:00:27.359 「わかった それで?」 0:00:27.359,0:00:29.000 彼女はこう続けました「だけど― 0:00:29.000,0:00:31.346 あなたの魅力は話上手なところなの 0:00:31.346,0:00:34.248 だからストーリーテラーと[br]呼ぼうと思うんだけど」 0:00:34.248,0:00:37.760 研究者としての私は不安に思い 0:00:37.760,0:00:39.944 「なんですって?」 0:00:39.944,0:00:42.298 「ストーリーテラーよ」 0:00:42.298,0:00:45.734 「なんで魔法使いの妖精じゃないのよ?」 0:00:45.734,0:00:48.421 (笑) 0:00:48.421,0:00:51.227 私は「ちょっと考えさせて」と言って 0:00:51.227,0:00:54.190 自分の勇気を呼び出そうとしました 0:00:54.190,0:00:57.174 そしてこう思ったのです [br]私がストーリーテラー? 0:00:57.174,0:00:59.520 でも私は定性調査をしていて 0:00:59.520,0:01:01.384 物語を収集するのが仕事だし 0:01:01.384,0:01:04.150 魂のこもったデータを[br]物語と言うのだろうから 0:01:04.150,0:01:06.708 やっぱり私はストーリーテラーなんだと 0:01:06.708,0:01:08.278 「じゃあこういうのはどう? 0:01:08.278,0:01:11.000 研究者兼ストーリーテラー」 0:01:11.000,0:01:14.786 「そんなのありえないわ」と[br]一笑に付されました 0:01:14.786,0:01:16.515 (笑) 0:01:16.515,0:01:18.605 ですから私は研究者兼ストーリーテラーです 0:01:18.605,0:01:20.324 今日は物の見方を 0:01:20.324,0:01:22.370 拡げることについてお話します 0:01:22.370,0:01:24.000 また研究にまつわる 0:01:24.000,0:01:27.000 いくつかの話をしたいと思います 0:01:27.000,0:01:30.000 研究を通して私の見方は根本から拡がり 0:01:30.000,0:01:33.665 生き方 愛し方 仕事 子育てのやり方を 0:01:33.665,0:01:35.000 変えました 0:01:35.000,0:01:37.226 そもそもの始まりがこれでした 0:01:37.226,0:01:40.353 私がまだ若き研究者―[br]博士課程の1年生だったとき 0:01:40.353,0:01:42.210 指導教官の教授が 0:01:42.210,0:01:44.344 みんなにこう言いました 0:01:44.344,0:01:45.936 「つまりだね― 0:01:45.936,0:01:49.106 測定できないものは[br]存在しないのだ」 0:01:49.932,0:01:53.242 うまいこと言ってるだけだと[br]疑いましたが 0:01:53.242,0:01:55.251 彼は確信に満ちていました 0:01:55.251,0:01:57.229 ちなみに私はソーシャルワークで 0:01:57.229,0:01:59.605 学士号と修士号をとり そのときは 0:01:59.605,0:02:01.681 博士号を取得しようとしていました 0:02:01.681,0:02:03.186 ですから在学中はずっと 0:02:03.186,0:02:05.142 人生は煩雑なものだと信じ 0:02:05.142,0:02:08.101 だからこそ素晴らしいと思う人たちに 0:02:08.101,0:02:10.000 囲まれてきたのです 0:02:10.000,0:02:12.515 私はその人たち以上です [br]人生は煩雑で 0:02:12.515,0:02:15.000 それを片付け整理し 0:02:15.000,0:02:17.610 弁当箱に詰めてしまいます 0:02:17.610,0:02:19.520 (笑) 0:02:19.520,0:02:22.458 それが自分の生きる道ですし 0:02:22.458,0:02:24.396 天職だと思います 0:02:24.396,0:02:27.564 ソーシャルワークの分野で[br]よく言われるのが 0:02:27.564,0:02:31.233 仕事の苦しみに身をあずけろ[br]というものですが 0:02:31.233,0:02:34.112 むしろ私は仕事の苦しみを振り払い 0:02:34.112,0:02:36.702 押しのけて全部片付けてきました 0:02:36.702,0:02:39.036 私はそういう主義でした 0:02:39.036,0:02:41.288 それで この言葉でわくわくしました 0:02:41.288,0:02:44.171 またこう思ってました―[br]これが私の天職なんだ 0:02:44.171,0:02:47.000 どうしようもない話に興味があるし 0:02:47.000,0:02:49.400 それをどうにかしたいし 0:02:49.400,0:02:51.605 理解したいんだ と 0:02:51.605,0:02:53.555 こういった大事なことについて 0:02:53.555,0:02:54.879 どうにかして 0:02:54.879,0:02:57.430 誰もがわかるように[br]整理したかったのです 0:02:57.430,0:03:00.394 それで“関係性”から研究を着手しました 0:03:00.394,0:03:03.767 10年間ソーシャルワーカーの[br]仕事をしてみると 0:03:03.767,0:03:06.282 関係性が生きることの理由だと 0:03:06.282,0:03:08.278 気付くのです 0:03:08.278,0:03:11.310 関係性が生の目的や意味を[br]与えてくれるのです 0:03:11.310,0:03:13.555 関係性とはそういうものです 0:03:13.555,0:03:15.926 社会正義 メンタルヘルス 0:03:15.926,0:03:18.545 虐待や育児怠慢に関わる人なら誰でも 0:03:18.545,0:03:20.000 知っていることなのですが 0:03:20.000,0:03:22.927 関係性 つまり繋がっていると感じる能力は 0:03:22.927,0:03:26.000 神経生理学的にも認められた能力で 0:03:26.000,0:03:28.186 生きる理由なのです 0:03:28.186,0:03:31.000 そこで関係性から研究を[br]始めようと考えました 0:03:32.041,0:03:34.430 上司から評価を説明される状況を 0:03:34.430,0:03:36.000 想像できますね 0:03:36.000,0:03:39.225 上司はあなたの37の功績について[br]話したあとで 0:03:39.225,0:03:41.656 “成長の余地”について話します 0:03:41.656,0:03:43.158 (笑) 0:03:43.158,0:03:46.445 その“成長の余地”が[br]頭からはなれません 0:03:47.385,0:03:50.191 私の研究の過程でも[br]同じことが起こりました 0:03:50.191,0:03:53.082 というのも愛について尋ねると 0:03:53.082,0:03:55.213 相手は失恋について語ります 0:03:55.213,0:03:57.633 帰属意識について尋ねると 0:03:57.633,0:03:59.021 それではなくて 0:03:59.021,0:04:02.000 冷たくされた[br]ひどい経験について話し 0:04:02.000,0:04:04.329 関係性について尋ねると[br]語られるのは 0:04:04.329,0:04:07.292 関係性がうまくいかない場合の[br]話なのです 0:04:07.792,0:04:10.167 開始して6週間たったところで 0:04:10.167,0:04:13.323 この何と呼んでよいか[br]わからない状況に気付き 0:04:13.323,0:04:16.329 それまで理解も経験も[br]したことのない方法で 0:04:16.329,0:04:19.367 関係性が完全に解明できたのです 0:04:19.367,0:04:21.496 研究からいったん後退し 0:04:21.496,0:04:24.303 これが何かをはっきりさせる[br]必要があると考えました 0:04:24.303,0:04:27.171 結局それは“恥”であるとわかりました 0:04:27.171,0:04:29.625 恥というのは関係性喪失への怯えとして 0:04:29.625,0:04:31.666 容易に理解することができます 0:04:31.666,0:04:33.000 私も自分が 0:04:33.000,0:04:36.148 関係を持つに値しないと[br]思われることを想像すると 0:04:36.148,0:04:39.510 自分の中にも見いだせるものです 0:04:39.510,0:04:41.000 つまり 0:04:41.000,0:04:43.360 普遍的で誰もがもっているのです 0:04:43.360,0:04:45.000 逆に恥を経験しない人が 0:04:45.000,0:04:47.492 つながりや共感を[br]持ちえるはずがありません 0:04:47.492,0:04:49.547 恥について語りたい人はいませんが 0:04:49.547,0:04:52.000 話さないと余計に[br]大きいものとなります 0:04:54.000,0:04:56.000 この恥という感情 0:04:56.000,0:04:58.293 つまり 自分は十分じゃない と思う 0:04:58.293,0:05:00.424 誰もが知る感情のことですが 0:05:00.424,0:05:02.657 具体的には完璧じゃない スリムじゃない 0:05:02.657,0:05:04.334 金持ちじゃない 美しくない 0:05:04.334,0:05:06.157 偉くない とかそんなことです 0:05:06.157,0:05:08.100 こうした気持ちを芽生えさせるのは 0:05:08.100,0:05:11.176 耐えがたいような[br]心のもろさです 0:05:11.176,0:05:13.000 なぜなら 0:05:13.000,0:05:15.306 関係性を持つには 0:05:15.306,0:05:17.486 私たちは自分自身を 0:05:17.486,0:05:20.087 さらけ出さなければなりません 0:05:20.087,0:05:23.457 心のもろさについて私の考え―[br]私はそれが嫌でしたから 0:05:23.457,0:05:26.044 自分の心のもろさを[br]物差しで叩きなおす 0:05:26.044,0:05:28.273 よいチャンスだと思いました 0:05:28.273,0:05:31.000 私はこれを理解してやる 0:05:31.000,0:05:34.447 1年をかけて徹底的に解体してやる 0:05:34.447,0:05:36.455 どう働くのかを理解してやる 0:05:36.455,0:05:39.000 そしていつか[br]その裏をかいてやる 0:05:39.000,0:05:42.163 準備万端でしたし[br]本当に夢中でした 0:05:44.950,0:05:46.878 でも察しのとおり[br]うまくはいきませんでした 0:05:46.878,0:05:49.467 (笑) 0:05:49.467,0:05:51.000 わかりますね 0:05:51.000,0:05:53.344 恥についてはもっと[br]お話ししたいのですが 0:05:53.344,0:05:55.110 時間が足りません 0:05:55.110,0:05:58.000 けれども結果的に この発見は 0:05:58.000,0:06:01.000 この10年ほどの[br]研究の中で学んだ 0:06:01.000,0:06:03.606 一番重要なことです 0:06:04.480,0:06:06.176 1年のはずが 0:06:06.176,0:06:08.176 6年となり 0:06:08.176,0:06:10.384 何千もの話があり 0:06:10.384,0:06:13.442 長いインタビューや[br]フォーカスグループ研究をいくつも行い 0:06:13.442,0:06:15.610 ある時は誰かが雑誌の記事や 0:06:15.610,0:06:17.823 自身の体験談を送ってきて 0:06:17.823,0:06:21.736 それは6年の間に[br]何千ものデータになったのです 0:06:21.736,0:06:23.773 それで理解の糸口を[br]得ることになりました 0:06:23.773,0:06:25.412 また恥が一体何であるか 0:06:25.412,0:06:27.737 どう作用するのかも[br]理解したと言えます 0:06:27.737,0:06:29.275 私は本を書きました 0:06:29.275,0:06:31.247 理論を公表しました 0:06:31.247,0:06:33.885 しかし何かが[br]不十分だったのです 0:06:33.885,0:06:35.808 それが何かというと 0:06:35.808,0:06:38.119 適当に私がインタビューする人を選び 0:06:38.119,0:06:41.896 ある人たちを自己価値感を持っている人と 0:06:41.896,0:06:44.000 区別すると 0:06:44.000,0:06:46.000 前者に欠けていたものとは 0:06:46.000,0:06:48.097 自分に価値があるという感覚でした 0:06:48.097,0:06:51.000 愛情とか帰属の感覚を[br]持つ人がいる一方で 0:06:51.000,0:06:52.811 それに苦しんだり 0:06:52.811,0:06:55.483 自分はこれでいいんだろうか と[br]悩んだりする人がいます 0:06:55.483,0:06:57.979 強く愛されているという感覚を持つ人と 0:06:57.979,0:07:00.565 愛や関係性に苦しむ人とは 0:07:00.565,0:07:02.105 あるひとつの点で 0:07:02.105,0:07:03.404 違っていました 0:07:03.404,0:07:04.653 それはこういうことです 0:07:04.653,0:07:07.097 深い愛情や関係性を感じている人は 0:07:07.097,0:07:10.134 自分が愛されるに値すると[br]信じているのです 0:07:10.134,0:07:12.000 それが違いなのです 0:07:12.000,0:07:14.430 自分には価値があると[br]信じているのです 0:07:15.512,0:07:18.437 人が関係性が断たれた状況にいることに 0:07:18.437,0:07:21.198 耐えられないのは 0:07:21.198,0:07:24.227 自分が関係性を持つのに[br]値しないという恐れです 0:07:24.227,0:07:26.468 ですから個人的にも仕事上でも 0:07:26.468,0:07:29.139 このことを理解する必要があると思いました 0:07:29.139,0:07:32.000 それで自己価値感が見られる人や 0:07:32.000,0:07:34.679 それに従って生きている人への 0:07:34.679,0:07:37.283 インタビューを選び出し 0:07:37.283,0:07:40.104 これらをじっくりと眺めました 0:07:40.104,0:07:42.453 共通してみられることは何だろう? 0:07:42.453,0:07:44.780 私はちょっとした文房具中毒で― 0:07:44.780,0:07:47.190 でもそれはまた別の機会に話します 0:07:47.190,0:07:50.156 マニラフォルダーと[br]サインペンを手に 0:07:50.156,0:07:52.593 この研究をなんと呼べばいいのか考えました 0:07:52.593,0:07:54.608 そしてある言葉が[br]ふと浮かんだのです 0:07:54.608,0:07:56.570 それは“あるがまま”です 0:07:56.570,0:07:59.658 つまり自己価値感をもって[br]生きている人たちなのです 0:07:59.658,0:08:02.228 それでマニラフォルダーの[br]はじめにこう書き 0:08:02.228,0:08:04.439 データを見始めたのです 0:08:04.439,0:08:06.395 それが私が最初にしたことです 0:08:06.395,0:08:08.704 4日で集中的なデータ分析をし 0:08:08.704,0:08:11.394 過去のインタビューや体験談 0:08:11.394,0:08:14.099 出来事など振り返りました 0:08:14.099,0:08:17.000 何がテーマなんだろう?[br]パターンは何だろう? 0:08:17.000,0:08:19.706 主人は子どもたちを連れて[br]家出しました 0:08:19.706,0:08:21.725 というのも私は執筆中は 0:08:21.725,0:08:23.650 研究者モードで 0:08:23.650,0:08:27.742 ジャクソン・ポロックばりの[br]仕事ぶりですから 0:08:27.742,0:08:30.336 そこで発見したことをお話すると 0:08:32.431,0:08:34.310 その人たちが共通して 0:08:34.310,0:08:36.274 持っていたのは勇気でした 0:08:36.274,0:08:39.278 ここでは勇気と勇敢は[br]別なものとして考えます 0:08:39.278,0:08:41.287 勇気―そもそもはラテン語で 0:08:41.287,0:08:43.738 心を表わす“cor”という言葉が 0:08:43.738,0:08:46.129 英語に入ってきたものです 0:08:46.129,0:08:48.000 またもともとの定義は 0:08:48.000,0:08:51.000 自身のことをあるがままに話す [br]ということです 0:08:51.680,0:08:53.289 こうした人々は 0:08:53.289,0:08:55.158 不完全であってもよいとする 0:08:55.158,0:08:57.412 勇気こそを持っていたのです 0:08:58.342,0:09:00.565 また自分に対して思いやりがあって 0:09:00.565,0:09:03.254 他者への思いやりを持っています 0:09:03.254,0:09:06.295 人は自分自身に優しくなれないなら 0:09:06.295,0:09:09.184 他者にも思いやりを持てませんから 0:09:09.184,0:09:11.369 またこの人たちは[br]関係性を持っていました 0:09:11.369,0:09:13.404 ここからが難しいところなのですが 0:09:13.404,0:09:15.837 自分への忠実さの結果 0:09:15.837,0:09:19.228 自分のあるがままを[br]受け入れるために 0:09:19.228,0:09:21.259 あるべき姿については 0:09:21.259,0:09:24.512 あきらめていました [br]それは関係性を得るためには 0:09:24.512,0:09:26.313 絶対に必要なことなのです 0:09:28.206,0:09:30.197 その他の共通項は 0:09:30.197,0:09:32.230 こういうことでした 0:09:35.261,0:09:38.259 心のもろさを受け入れていたのです 0:09:40.242,0:09:43.250 その人たちはこう信じます 0:09:43.250,0:09:46.167 自分たちの心をもろくするものこそ 0:09:46.167,0:09:48.343 自分たちを美しくする と 0:09:50.746,0:09:52.878 心のもろさが快適であるとも 0:09:52.878,0:09:56.191 それが自分たちを[br]苦しめているとも言いません 0:09:56.191,0:09:58.290 恥のインタビューの時に[br]聞いたような発言は 0:09:58.290,0:09:59.704 ありませんでした 0:09:59.704,0:10:02.270 必要なことなのだ語ります 0:10:03.361,0:10:05.000 愛していると 0:10:05.000,0:10:07.967 告白するための思い切りや 0:10:09.210,0:10:11.000 うまくいく保証がなくても 0:10:11.000,0:10:14.502 何かをするという熱意について 0:10:15.942,0:10:16.896 また 0:10:16.896,0:10:18.720 マンモグラフィーの検査の後 0:10:18.720,0:10:20.461 医師からの告知に備えながら 0:10:20.461,0:10:22.686 なんとか生きる意志について [br]語ります 0:10:23.570,0:10:26.315 それがうまく行こうと行くまいと 0:10:26.315,0:10:29.166 関係性に身を費やしたいのです 0:10:29.166,0:10:32.114 ただそれが不可欠なことだと[br]考えているのです 0:10:32.114,0:10:35.225 私にとってこれは[br]裏切られる結果でした 0:10:35.225,0:10:38.000 自分自身がかつて[br]研究をすることに 0:10:38.000,0:10:40.484 忠誠を誓ったなんて[br]もう信じられませんでした 0:10:40.484,0:10:41.729 研究とは 0:10:41.729,0:10:45.318 制御したり予測すること [br]また現象について詳しく調べることです 0:10:45.318,0:10:47.000 制御や予測という― 0:10:47.000,0:10:49.145 明確な目的があって[br]なされるものです 0:10:49.145,0:10:51.635 けれども制御や予測という使命に 0:10:51.635,0:10:53.515 従った結果 現れた答えは 0:10:53.515,0:10:56.962 心のもろさを受け入れた[br]生き方であり 0:10:56.962,0:10:59.287 制御と予測を放棄せよというのです 0:10:59.287,0:11:02.783 これはちょっとした挫折となりました 0:11:02.783,0:11:06.702 (笑) 0:11:06.702,0:11:09.695 こんな風に実際よりも[br]大きい挫折に見えたのです 0:11:09.695,0:11:11.181 (笑) 0:11:11.181,0:11:13.353 私は挫折と捉えましたが 0:11:13.353,0:11:16.322 私のセラピストは[br]それは開眼だと捉えました 0:11:17.325,0:11:19.356 開眼は挫折より[br]響きがよいものですが 0:11:19.356,0:11:21.245 やはりそれは私には挫折でした 0:11:21.245,0:11:24.045 研究を止め セラピストを[br]探すことにしました 0:11:24.045,0:11:26.655 余談ですが [br]こういう状況がわかりますよね 0:11:26.655,0:11:29.246 友達に電話して[br]「相談相手が必要なんだけど 0:11:29.246,0:11:32.000 誰かいい相手はいないかしら?」[br]と言う状況です 0:11:32.000,0:11:34.000 私の場合は5人の友達が[br]こう言ったのです 0:11:34.000,0:11:36.688 「えー?私だったらあなたの[br]セラピストにはちょっと…」と 0:11:36.688,0:11:39.176 (笑) 0:11:39.176,0:11:41.267 「それってどういうことよ?」 0:11:41.267,0:11:43.889 「今言った通りよ [br]わかるでしょ? 0:11:43.889,0:11:46.843 ものさしを持って[br]乗り込んでこないでね」 0:11:49.039,0:11:50.249 ―「はいはい」 0:11:51.302,0:11:53.337 それであるセラピストを[br]見つけたのです 0:11:53.337,0:11:56.244 セラピストのダイアナと初対面のとき 0:11:56.244,0:11:58.944 あるがままの人たちの 0:11:58.944,0:12:01.385 リストを渡して座りました 0:12:01.385,0:12:03.374 彼女がまず「どうですか?」 0:12:03.374,0:12:06.402 「大丈夫です 元気です」 0:12:06.402,0:12:08.181 「どうかしたんですか?」― 0:12:08.181,0:12:11.072 彼女はセラピスト専門の[br]セラピストなのです 0:12:11.072,0:12:13.266 私たちにもセラピストが[br]必要なのです 0:12:13.266,0:12:16.316 彼らの嘘発見器は高性能ですから 0:12:16.316,0:12:18.284 (笑) 0:12:18.284,0:12:20.137 それで言いました 0:12:20.137,0:12:22.444 「手短に言うと私は苦しんでいます」 0:12:22.444,0:12:24.120 「その苦しみは何ですか?」 0:12:24.120,0:12:27.198 「心のもろさについての[br]課題を抱えていて 0:12:27.198,0:12:30.000 心のもろさが恥や恐れ 0:12:30.000,0:12:32.516 自己価値感についての苦しみの― 0:12:32.516,0:12:34.771 中核だということは[br]わかっているんですが 0:12:34.771,0:12:35.918 それはどうも 0:12:35.918,0:12:38.971 喜びや創造 [br]帰属や愛情とか 0:12:38.971,0:12:42.443 そういったものの[br]根源でもあるようなのです 0:12:42.443,0:12:44.447 それが私の問題で 0:12:44.447,0:12:47.819 援助が必要なんです」[br]と答えました 0:12:47.819,0:12:49.400 そしてこう続けました 0:12:49.400,0:12:51.130 「でも―家庭の問題や 0:12:51.130,0:12:53.302 幼少時代のことは[br]関係ありませんから」 0:12:53.302,0:12:55.000 (笑) 0:12:55.000,0:12:58.520 「ただ攻略法が必要なだけなんです」 0:12:58.520,0:13:02.000 (笑) 0:13:02.000,0:13:05.594 (拍手) 0:13:05.594,0:13:07.069 ありがとうございます 0:13:09.235,0:13:11.541 彼女の反応はこうでした 0:13:11.541,0:13:14.353 (笑) 0:13:14.353,0:13:17.247 それで―「これって大変ですよね?」 0:13:17.247,0:13:20.645 「大変とか大変じゃないという[br]問題じゃありません」 0:13:20.645,0:13:22.276 (笑) 0:13:22.276,0:13:24.626 「ただそういうものなのです」 0:13:24.626,0:13:27.524 「これはきっと重症だわ」 0:13:27.524,0:13:30.167 (笑) 0:13:30.167,0:13:32.345 そうでもあり [br]そうでない面もありました 0:13:32.345,0:13:34.739 約1年かかりました 0:13:34.739,0:13:37.189 心のもろさや優しさが[br]重要なことに 0:13:37.189,0:13:40.418 気付いた時に [br]人はどのように受け入れ 0:13:40.418,0:13:43.255 そこに踏み込むか [br]わかりますか? 0:13:43.255,0:13:45.747 A:「私は違う」それとも 0:13:45.747,0:13:48.568 B:「そんな人とは遊びたくもない」 0:13:48.568,0:13:51.171 (笑) 0:13:51.171,0:13:54.207 私にとっては[br]1年にわたる戦いでした 0:13:54.207,0:13:56.115 激しい戦いでした 0:13:56.115,0:13:58.578 心のもろさが私を押し[br]私はそれを押し返しました 0:13:58.578,0:14:00.408 戦いには負けました 0:14:00.408,0:14:03.234 それでも人生は取り返しました 0:14:03.234,0:14:05.413 それで研究を再開しました 0:14:05.413,0:14:07.116 次の2年を費やし 0:14:07.116,0:14:10.141 改めて理解しようと試みたのです 0:14:10.141,0:14:12.372 あるがままの人たちの選択や 0:14:12.372,0:14:15.070 私たちがどうやって[br]心のもろさとつきあっているか 0:14:15.070,0:14:16.253 といったことを 0:14:16.253,0:14:18.455 なぜ私たちは[br]こんなに苦しむのだろう? 0:14:18.455,0:14:21.035 心のもろさに苦しんでいるのは[br]私だけだろうか? 0:14:21.745,0:14:23.163 ―違います 0:14:23.163,0:14:25.532 そう―それが私が学んだことです 0:14:26.329,0:14:28.746 例えば告知を待っているとき 0:14:28.746,0:14:31.237 私たちは心のもろさを[br]麻痺させています 0:14:31.237,0:14:33.696 面白いことに[br]ツイッターとフェイスブック上で 0:14:33.696,0:14:35.656 どのように心のもろさを[br]定義しますか? 0:14:35.656,0:14:37.657 何が心のもろさを[br]感じさせるのでしょう? と 0:14:37.657,0:14:40.605 疑問を投げかけると [br]1時間半で150の返信を得ました 0:14:40.605,0:14:42.279 どういう返信があるか 0:14:42.279,0:14:44.077 知りたかったのです 0:14:45.302,0:14:48.152 不調で夫に助けを[br]求めなければならず 0:14:48.152,0:14:50.000 しかも新婚だったとき 0:14:50.000,0:14:53.168 夫をセックスに誘うとき 0:14:53.168,0:14:55.345 妻をセックスに誘うとき 0:14:55.345,0:14:58.400 落ち込んでいるとき [br]デートに誘うとき 0:14:58.400,0:15:00.536 医者からの連絡を待っているとき 0:15:00.536,0:15:03.219 解雇されたとき [br]解雇を命じるとき 0:15:03.219,0:15:05.471 これが私たちの生きる世界なのです 0:15:05.471,0:15:08.152 私たちは心のもろさに[br]溢れる世界に生きているのです 0:15:08.152,0:15:10.472 また心のもろさを扱う一つの方法は 0:15:10.472,0:15:12.321 その感覚を麻痺させることです 0:15:12.321,0:15:14.167 その証拠に― 0:15:14.167,0:15:16.348 このことだけが[br]原因ではありませんが 0:15:16.348,0:15:18.613 これが大きな原因である[br]事象が存在します 0:15:18.613,0:15:22.000 私たちはアメリカ史上もっとも 0:15:22.000,0:15:25.495 借金漬けで 太っていて 0:15:25.495,0:15:27.644 依存症が多く 0:15:27.644,0:15:30.407 薬物治療に頼る集団です 0:15:33.148,0:15:36.083 実は研究から知ったのですが 0:15:36.083,0:15:39.628 人間は選択的に感情を[br]麻痺させることができません 0:15:39.628,0:15:43.000 というのも「これが悪の元凶」― 0:15:43.000,0:15:45.462 これが心のもろさ 悲しみ 恥 恐れ 失望 0:15:45.462,0:15:47.530 などと特定できないからです 0:15:47.530,0:15:49.384 こういう感情を避けたいので 0:15:49.384,0:15:52.254 ビール何杯かとバナナナッツマフィンを[br]食べることにします 0:15:52.254,0:15:54.460 (笑) 0:15:54.460,0:15:56.698 とにかくそういう感情を[br]避けたいのです 0:15:56.698,0:15:58.917 自分にも覚えがあるから[br]笑ってるんでしょう 0:15:58.917,0:16:01.575 皆さんの生活をハックするのが[br]私の仕事ですからね 0:16:01.575,0:16:03.139 でしょ? 0:16:03.139,0:16:05.234 (笑) 0:16:05.234,0:16:08.068 感情を麻痺させることなしに 0:16:08.068,0:16:10.643 こうしたつらい気持ちを[br]麻痺させられません 0:16:10.643,0:16:12.777 選択的には麻痺させられないのです 0:16:12.777,0:16:15.206 だからそうした気持ちを[br]麻痺させるとき 0:16:15.206,0:16:17.000 同時に喜びや 0:16:17.000,0:16:19.164 感謝の意や 0:16:19.164,0:16:21.774 幸福も同時に麻痺させてしまうのです 0:16:21.774,0:16:24.099 そうすると 惨めな気持ちになり 0:16:24.099,0:16:26.536 生の目的や意味を探すうちに 0:16:26.536,0:16:28.587 やがて心のもろさを感じてしまう 0:16:28.587,0:16:31.307 それでビールをかっくらって[br]バナナナッツマフィンを頬ばる 0:16:31.307,0:16:33.991 それは危険なサイクルになります 0:16:36.000,0:16:39.202 こういうことも[br]考えなければなりません 0:16:39.202,0:16:41.792 なぜ どうやって[br]麻痺させるかということです 0:16:41.792,0:16:44.229 何かの中毒にならなくても[br]麻痺します 0:16:45.169,0:16:47.332 他にもまた 本来は不確かなものを 0:16:47.332,0:16:49.414 全て確かなものにしようとします 0:16:50.157,0:16:53.083 宗教はもはや信仰や神秘への信奉から 0:16:53.083,0:16:55.488 確実性ということへ[br]移行してしまいました 0:16:55.488,0:16:58.088 私が正しくてあんたが間違っている [br]黙れ 0:16:58.808,0:17:00.164 以上 0:17:01.084,0:17:02.329 確かなものがすべて 0:17:02.329,0:17:04.883 恐れれば恐れるほど[br]心はもろくなります 0:17:04.883,0:17:06.808 それがまた恐れをよぶのです 0:17:06.808,0:17:08.666 これは今日の政治のようです 0:17:08.666,0:17:10.528 論議なんてもはや存在しません 0:17:10.528,0:17:12.280 対話も存在しません 0:17:12.280,0:17:14.000 あるのはただの非難です 0:17:14.000,0:17:16.841 研究の中で非難の捉え方は 0:17:16.841,0:17:20.381 痛みや不快の解放をする手段です 0:17:22.222,0:17:24.505 私たちは完璧を志向します 0:17:24.505,0:17:27.149 それを目指すと私みたいになって 0:17:27.149,0:17:28.580 うまくはいきません 0:17:28.580,0:17:30.564 完璧を目指すために[br]お尻から脂肪をとって 0:17:30.564,0:17:32.721 それを頬に移植しているのです 0:17:32.721,0:17:35.265 (笑) 0:17:35.265,0:17:37.250 百年後の人たちが[br]振り返ったときには 0:17:37.250,0:17:39.306 あきれてしまうことを願います 0:17:39.306,0:17:41.280 (笑) 0:17:41.280,0:17:43.315 そして私たちは危険なほど 0:17:43.315,0:17:45.354 子どもたちに完璧を求めています 0:17:45.354,0:17:47.314 子どもたちについてお話をします 0:17:47.314,0:17:50.184 子どもは生まれたときから[br]苦しみを背負っています 0:17:50.184,0:17:53.098 赤ちゃんを抱いたときに[br]こんなことを言うのは間違いです 0:17:53.098,0:17:55.000 見て この子は完璧よ 0:17:55.000,0:17:58.820 私はこの子を完璧に[br]5年生までにテニスチームに入れて 0:17:58.820,0:18:00.850 7年生までにエール大学へいれるの 0:18:00.850,0:18:02.620 そんなこと言う必要ないんです 0:18:02.620,0:18:04.320 ただこう言えばいいのです 0:18:04.320,0:18:07.235 「あなたは完璧じゃないのよ [br]苦しみを背負っているの 0:18:07.235,0:18:09.688 でもあなたは愛情や帰属に[br]値する存在なのよ」 0:18:09.688,0:18:11.616 それが私たちがするべきことです 0:18:11.616,0:18:13.671 子どもたちがそのようにして[br]育てられるならば 0:18:13.671,0:18:16.457 今日の問題を解決できるはずです 0:18:16.457,0:18:20.000 私たちは自分たちのなすことが 0:18:20.000,0:18:23.000 人に影響を与えないふりをしています 0:18:23.000,0:18:25.245 個々の生活でもそうしています 0:18:25.245,0:18:27.000 組織としても行っています 0:18:27.000,0:18:29.283 救済であろうと石油流出であろうと 0:18:29.283,0:18:31.243 リコールであろうと 0:18:31.243,0:18:33.273 私たちは自分たちの行いが他者に 0:18:33.273,0:18:36.103 大きな影響を与えていない[br]ふりをしているのです 0:18:36.103,0:18:39.453 企業に言ったっていいでしょう 0:18:40.000,0:18:42.782 完璧でないのは承知ですから[br]本当のことを語って 0:18:42.782,0:18:45.456 謝罪します [br]もう繰り返しませんと— 0:18:45.456,0:18:47.268 言ってください 0:18:50.126,0:18:51.853 あるいは別の方法もあります 0:18:51.853,0:18:54.144 それで締めくくります―それは 0:18:54.144,0:18:56.000 自分自身を心の底から 0:18:56.000,0:18:58.116 さらけ出すこと 0:18:58.116,0:19:01.000 心のもろさも [br]さらけ出すのです 0:19:01.000,0:19:03.371 そしてあるがままで[br]愛すことです 0:19:03.371,0:19:05.423 たとえ成功への保証がないとしても 0:19:05.423,0:19:07.426 それがとても辛いものだとしても 0:19:07.426,0:19:10.575 特に親としては耐えがたいほどに[br]困難なことですが 0:19:12.336,0:19:15.265 そして感謝とよろこびを実践すること 0:19:15.265,0:19:17.398 恐怖の瞬間にも迷いのときにも― 0:19:17.398,0:19:19.529 それほどまで相手を愛せるだろうか 0:19:19.529,0:19:21.616 そんなに熱烈に信じることができるか 0:19:21.616,0:19:24.355 このことにそれほどまでに激しくなれるか―[br]と自問するときにでさえ 0:19:24.355,0:19:26.402 一大事と騒ぎ立てたりせず 0:19:26.402,0:19:29.266 ただ立ち止まってこう言うのです [br]なんて素晴らしいんだろう 0:19:29.266,0:19:32.657 この心のもろさを感じることが[br]生きていることだから と 0:19:33.000,0:19:36.117 そして最後に もっとも重要だと考えるのは 0:19:36.117,0:19:39.229 この自分で良いんだ と信じることです 0:19:39.229,0:19:41.957 なぜなら この自分で良いんだと[br]言える場所から 0:19:41.957,0:19:44.138 働きかけることで 0:19:45.240,0:19:48.427 叫ぶのをやめて傾聴し 0:19:49.221,0:19:51.416 もっと優しく穏やかに周りに接し 0:19:51.416,0:19:54.149 自分自身にも優しく穏やかになれると[br]私は信じているからです 0:19:54.149,0:19:56.810 以上です ありがとうございました 0:19:56.810,0:19:59.264 (拍手)