0:00:00.000,0:00:02.000 さてこの話から始めましょう―2年前 0:00:02.000,0:00:04.000 ある企画の担当者が電話してきました 0:00:04.000,0:00:06.000 スピーチイベントに出ることになっていたのです 0:00:06.000,0:00:08.000 彼女は電話口で言いました 0:00:08.000,0:00:10.000 「今困っているのよ 0:00:10.000,0:00:12.000 案内にどうあなたの紹介文を書くかで」 0:00:12.000,0:00:14.000 「困るって何が?」 0:00:14.000,0:00:16.000 「あなたのスピーチから考えたら 0:00:16.000,0:00:19.000 研究者だけど―もし研究者なんて紹介してしまったら 0:00:19.000,0:00:21.000 誰も来ないんじゃないかと思って 0:00:21.000,0:00:23.000 退屈で縁のない話と思われたらね」 0:00:23.000,0:00:25.000 ―会場(笑) 0:00:25.000,0:00:27.000 「わかった それで?」 0:00:27.000,0:00:29.000 彼女はこう続けました「だけど― 0:00:29.000,0:00:31.000 あなたの魅力は話上手なところなの 0:00:31.000,0:00:34.000 だからストーリーテラーと呼ぼうと思うんだけど」 0:00:34.000,0:00:37.000 研究者としての私は不安に思い 0:00:37.000,0:00:39.000 「なんですって?」 0:00:39.000,0:00:42.000 「ストーリーテラーよ」 0:00:42.000,0:00:45.000 「なんで魔法使いの妖精じゃないのよ?」 0:00:45.000,0:00:48.000 ―会場(笑) 0:00:48.000,0:00:51.000 私は「ちょっと考えさせて」と言って 0:00:51.000,0:00:54.000 自分の勇気を呼び出そうとしました 0:00:54.000,0:00:57.000 そしてこう思ったのです 私がストーリーテラー? 0:00:57.000,0:00:59.000 でも私は定性調査をしていて 0:00:59.000,0:01:01.000 物語を収集するのが仕事だし 0:01:01.000,0:01:04.000 魂のこもったデータを物語と言うのだろうから 0:01:04.000,0:01:06.000 やっぱり私はストーリーテラーなんだと 0:01:06.000,0:01:08.000 「じゃあこういうのはどう? 0:01:08.000,0:01:11.000 研究者兼ストーリーテラー」 0:01:11.000,0:01:14.000 「そんなのありえないわ」と一笑に付されました 0:01:14.000,0:01:16.000 ―会場(笑) 0:01:16.000,0:01:18.000 ですから私は研究者兼ストーリーテラーです 0:01:18.000,0:01:20.000 今日は物の見方を 0:01:20.000,0:01:22.000 拡げることについてお話します 0:01:22.000,0:01:24.000 また研究にまつわる 0:01:24.000,0:01:27.000 いくつかの話をしたいと思います 0:01:27.000,0:01:30.000 研究を通して私の見方は根本から拡がり 0:01:30.000,0:01:33.000 生き方 愛し方 仕事 子育てのやり方を 0:01:33.000,0:01:35.000 変えました 0:01:35.000,0:01:37.000 そもそもの始まりがこれでした 0:01:37.000,0:01:40.000 私がまだ若き研究者―博士課程の1年生だったとき 0:01:40.000,0:01:42.000 指導教官の教授が 0:01:42.000,0:01:44.000 みんなにこう言いました 0:01:44.000,0:01:46.000 「つまりだね― 0:01:46.000,0:01:49.000 測定できないものは存在しないのだ」 0:01:49.000,0:01:52.000 うまいこと言ってるだけだと 0:01:52.000,0:01:55.000 疑いましたが彼は確信に満ちていました 0:01:55.000,0:01:57.000 ちなみに私はソーシャルワークで 0:01:57.000,0:01:59.000 学士号と修士号をとり そのときは 0:01:59.000,0:02:01.000 博士号を取得しようとしていました 0:02:01.000,0:02:03.000 ですから在学中はずっと 0:02:03.000,0:02:05.000 人生は煩雑なものだと信じ 0:02:05.000,0:02:07.000 だからこそ素晴らしいと思う人たちに 0:02:07.000,0:02:10.000 囲まれてきたのです 0:02:10.000,0:02:12.000 私はその人たち以上です 人生は煩雑で 0:02:12.000,0:02:15.000 それを片付け整理し 0:02:15.000,0:02:17.000 弁当箱に詰めてしまいます 0:02:17.000,0:02:19.000 ―会場(笑) 0:02:19.000,0:02:22.000 それが自分の生きる道ですし 0:02:22.000,0:02:25.000 天職だと思います 0:02:25.000,0:02:28.000 ソーシャルワークの分野でよく言われるのが 0:02:28.000,0:02:31.000 仕事の苦しみに身をあずけろというものですが 0:02:31.000,0:02:34.000 むしろ私は仕事の苦しみを振り払い 0:02:34.000,0:02:36.000 押しのけて全部片付けてきました 0:02:36.000,0:02:39.000 私はそういう主義でした 0:02:39.000,0:02:41.000 それで この言葉でわくわくしました 0:02:41.000,0:02:44.000 またこう思ってました―これが私の天職なんだ 0:02:44.000,0:02:47.000 どうしようもない話に興味があるし 0:02:47.000,0:02:49.000 それをどうにかしたいし 0:02:49.000,0:02:51.000 理解したいんだ と 0:02:51.000,0:02:53.000 こういった大事なことについて 0:02:53.000,0:02:55.000 どうにかして 誰もが― 0:02:55.000,0:02:57.000 わかるように整理したかったのです 0:02:57.000,0:03:00.000 それで“関係性”から研究を着手しました 0:03:00.000,0:03:03.000 10年間ソーシャルワーカーの仕事をしてみると 0:03:03.000,0:03:05.000 関係性が生きることの理由だと 0:03:05.000,0:03:08.000 気付くのです 0:03:08.000,0:03:11.000 関係性が生の目的や意味を与えてくれるのです 0:03:11.000,0:03:13.000 関係性とはそういうものです 0:03:13.000,0:03:15.000 社会正義 メンタルヘルス 0:03:15.000,0:03:18.000 虐待や育児怠慢に関わる人なら誰でも 0:03:18.000,0:03:20.000 知っていることなのですが 0:03:20.000,0:03:23.000 関係性 つまり繋がっていると感じる能力は 0:03:23.000,0:03:26.000 神経生理学的にも認められた能力で 0:03:26.000,0:03:28.000 生きる理由なのです 0:03:28.000,0:03:31.000 そこで関係性から研究を始めようと考えました 0:03:31.000,0:03:34.000 上司から評価を説明される状況を 0:03:34.000,0:03:36.000 想像できますね 上司はあなたの 0:03:36.000,0:03:39.000 37の功績について話したあとで 0:03:39.000,0:03:41.000 “成長の余地”について話します 0:03:41.000,0:03:43.000 ―会場(笑) 0:03:43.000,0:03:46.000 その“成長の余地”が頭からはなれません 0:03:47.000,0:03:50.000 私の研究の過程でも同じことが起こりました 0:03:50.000,0:03:53.000 というのも愛について尋ねると 0:03:53.000,0:03:55.000 相手は失恋について語ります 0:03:55.000,0:03:57.000 帰属意識について尋ねると 0:03:57.000,0:04:00.000 それではなくて 0:04:00.000,0:04:02.000 冷たくされたひどい経験について 0:04:02.000,0:04:04.000 関係性について尋ねると語られるのは― 0:04:04.000,0:04:07.000 関係性がうまくいかない場合の話なのです 0:04:07.000,0:04:10.000 開始して6週間たったところで 0:04:10.000,0:04:13.000 この何と呼んでよいかわからない状況に気付き 0:04:13.000,0:04:16.000 それまで理解も経験もしたことのない方法で 0:04:16.000,0:04:19.000 関係性が完全に解明できたのです 0:04:19.000,0:04:21.000 研究からいったん後退し 0:04:21.000,0:04:24.000 これが何かをはっきりさせる必要があると考えました 0:04:24.000,0:04:27.000 結局それは“恥”であるとわかりました 0:04:27.000,0:04:29.000 恥というのは関係性喪失への怯えとして 0:04:29.000,0:04:31.000 容易に理解することができます 0:04:31.000,0:04:33.000 私も自分が 0:04:33.000,0:04:36.000 関係を持つに値しないと思われることを想像すると 0:04:36.000,0:04:39.000 自分の中にも見いだせるものです 0:04:39.000,0:04:41.000 つまり 0:04:41.000,0:04:43.000 普遍的で誰もがもっているのです 0:04:43.000,0:04:45.000 逆に恥を経験しない人が 0:04:45.000,0:04:47.000 つながりや共感を持ちえるはずがありません 0:04:47.000,0:04:49.000 恥について語りたい人はいませんが 0:04:49.000,0:04:52.000 話さないと余計に大きいものとなります 0:04:54.000,0:04:56.000 この恥という感情 0:04:56.000,0:04:58.000 つまり 自分は十分じゃない と思う 0:04:58.000,0:05:00.000 誰もが知る感情のことですが 0:05:00.000,0:05:02.000 具体的には完璧じゃない スリムじゃない 0:05:02.000,0:05:04.000 金持ちじゃない 美しくない 0:05:04.000,0:05:06.000 偉くない とかそんなことです 0:05:06.000,0:05:08.000 こうした気持ちを芽生えさせるのは 0:05:08.000,0:05:11.000 耐えがたいような心のもろさです 0:05:11.000,0:05:13.000 なぜなら 0:05:13.000,0:05:15.000 関係性を持つには 0:05:15.000,0:05:18.000 私たちは自分自身を 0:05:18.000,0:05:20.000 さらけ出さなければなりません 0:05:20.000,0:05:23.000 心のもろさについて私の考え―私はそれが嫌でしたから 0:05:23.000,0:05:25.000 自分の心のもろさを物差しで叩きなおす 0:05:25.000,0:05:28.000 よいチャンスだと思いました 0:05:28.000,0:05:31.000 私はこれを理解してやる 0:05:31.000,0:05:34.000 1年をかけて徹底的に解体してやる 0:05:34.000,0:05:36.000 どう働くのかを理解してやる 0:05:36.000,0:05:39.000 そしていつかその裏をかいてやる 0:05:39.000,0:05:42.000 準備万端でしたし本当に夢中でした 0:05:44.000,0:05:46.000 でも察しのとおりうまくはいきませんでした 0:05:46.000,0:05:49.000 ―会場(笑) 0:05:49.000,0:05:51.000 わかりますね 0:05:51.000,0:05:53.000 恥についてはもっとお話ししたいのですが 0:05:53.000,0:05:55.000 時間が足りません 0:05:55.000,0:05:58.000 けれども結果的に この発見は 0:05:58.000,0:06:01.000 この10年ほどの研究のなかで 0:06:01.000,0:06:04.000 学んだ一番重要なことです 0:06:04.000,0:06:06.000 1年のはずが 0:06:06.000,0:06:08.000 6年となり 0:06:08.000,0:06:10.000 何千もの話があり 0:06:10.000,0:06:13.000 長いインタビューやフォーカスグループ研究をいくつも行い 0:06:13.000,0:06:15.000 ある時は誰かが雑誌の記事や 0:06:15.000,0:06:18.000 自身の体験談を送ってきて 0:06:18.000,0:06:21.000 それは6年の間に何千ものデータになったのです 0:06:21.000,0:06:23.000 それで理解の糸口を得ることになりました 0:06:23.000,0:06:25.000 また恥が一体何であるか 0:06:25.000,0:06:27.000 どう作用するのかも理解したと言えます 0:06:27.000,0:06:29.000 私は本を書きました 0:06:29.000,0:06:31.000 理論を公表しました 0:06:31.000,0:06:34.000 しかし何かが不十分だったのです 0:06:34.000,0:06:36.000 それが何かというと 0:06:36.000,0:06:38.000 適当に私がインタビューする人を選び 0:06:38.000,0:06:41.000 ある人たちを自己価値感を持っている人と 0:06:41.000,0:06:44.000 区別すると 0:06:44.000,0:06:46.000 前者に欠けていたものとは 0:06:46.000,0:06:48.000 自分に価値があるという感覚でした 0:06:48.000,0:06:51.000 愛情とか帰属の感覚を持つ人がいる一方で 0:06:51.000,0:06:53.000 それに苦しんだり 自分は― 0:06:53.000,0:06:55.000 これでいいんだろうか と悩んだりする人がいます 0:06:55.000,0:06:57.000 強く愛されているという感覚を持つ人と 0:06:57.000,0:06:59.000 愛や関係性に苦しむ人とは 0:06:59.000,0:07:01.000 あるひとつの点で 0:07:01.000,0:07:03.000 違っていました 0:07:03.000,0:07:05.000 それはこういうことです 0:07:05.000,0:07:07.000 深い愛情や関係性を感じている人は 0:07:07.000,0:07:10.000 自分が愛されるに値すると信じているのです 0:07:10.000,0:07:12.000 それが違いなのです 0:07:12.000,0:07:14.000 自分には価値があると信じているのです 0:07:15.000,0:07:18.000 人が関係性が断たれた状況にいることに 0:07:18.000,0:07:21.000 耐えられないのは 0:07:21.000,0:07:24.000 自分が関係性を持つのに値しないという恐れです 0:07:24.000,0:07:26.000 ですから個人的にも仕事上でも 0:07:26.000,0:07:29.000 このことを理解する必要があると思いました 0:07:29.000,0:07:32.000 それで自己価値感が見られる人や 0:07:32.000,0:07:34.000 それに従って生きている人への 0:07:34.000,0:07:37.000 インタビューを選び出し 0:07:37.000,0:07:40.000 これらをじっくりと眺めました 0:07:40.000,0:07:42.000 共通してみられることは何だろう? 0:07:42.000,0:07:44.000 私はちょっとした文房具中毒で― 0:07:44.000,0:07:47.000 でもそれはまた別の機会に話します 0:07:47.000,0:07:50.000 マニラフォルダーとサインペンを手に 0:07:50.000,0:07:52.000 この研究をなんと呼べばいいのか考えました 0:07:52.000,0:07:54.000 そしてある言葉がふと浮かんだのです 0:07:54.000,0:07:56.000 それは“あるがまま”です つまり― 0:07:56.000,0:07:59.000 自己価値感をもって生きている人たちなのです 0:07:59.000,0:08:02.000 それでマニラフォルダーのはじめにこう書き 0:08:02.000,0:08:04.000 データを見始めたのです 0:08:04.000,0:08:06.000 それが私が最初にしたことです 0:08:06.000,0:08:08.000 4日で集中的なデータ分析をし 0:08:08.000,0:08:11.000 過去のインタビューや体験談 0:08:11.000,0:08:14.000 出来事など振り返りました 0:08:14.000,0:08:17.000 何がテーマなんだろう?パターンは何だろう? 0:08:17.000,0:08:20.000 主人は子どもたちを連れて家出しました 0:08:20.000,0:08:23.000 というのも私は執筆中は 0:08:23.000,0:08:25.000 研究者モードで 0:08:25.000,0:08:28.000 ジャクソン・ポロックばりの仕事ぶりですから 0:08:28.000,0:08:30.000 そこで発見したことをお話すると 0:08:32.000,0:08:34.000 その人たちが共通して 0:08:34.000,0:08:36.000 持っていたのは勇気でした 0:08:36.000,0:08:39.000 ここでは勇気と勇敢は別なものとして考えます 0:08:39.000,0:08:41.000 勇気―そもそもはラテン語で 0:08:41.000,0:08:43.000 心を表わす“cor”という言葉が 0:08:43.000,0:08:46.000 英語に入ってきたものです 0:08:46.000,0:08:48.000 またもともとの定義は 0:08:48.000,0:08:51.000 自身のことをあるがままに話す ということです 0:08:51.000,0:08:53.000 こうした人々は 0:08:53.000,0:08:55.000 不完全であってもよいとする 0:08:55.000,0:08:57.000 勇気こそを持っていたのです 0:08:58.000,0:09:00.000 また自分に対して思いやりがあって 0:09:00.000,0:09:03.000 他者への思いやりを持っています 0:09:03.000,0:09:06.000 人は自分自身に優しくなれないなら 0:09:06.000,0:09:09.000 他者にも思いやりを持てませんから 0:09:09.000,0:09:11.000 またこの人たちは関係性を持っていました 0:09:11.000,0:09:13.000 ここからが難しいところなのですが 0:09:13.000,0:09:16.000 自分への忠実さの結果 0:09:16.000,0:09:19.000 自分のあるがままを受け入れるために 0:09:19.000,0:09:21.000 あるべき姿については 0:09:21.000,0:09:24.000 あきらめていました それは関係性を得るためには 0:09:24.000,0:09:26.000 絶対に必要なことなのです 0:09:28.000,0:09:30.000 その他の共通項は 0:09:30.000,0:09:32.000 こういうことでした 0:09:35.000,0:09:38.000 心のもろさを受け入れていたのです 0:09:40.000,0:09:43.000 その人たちはこう信じます 0:09:43.000,0:09:46.000 自分たちの心をもろくするものこそ 0:09:46.000,0:09:48.000 自分たちを美しくする と 0:09:50.000,0:09:52.000 心のもろさが快適であるとも 0:09:52.000,0:09:54.000 それが自分たちを苦しめているとも 0:09:54.000,0:09:57.000 言いません 恥のインタビューの時に― 0:09:57.000,0:09:59.000 聞いたような発言はありませんでした 0:09:59.000,0:10:02.000 必要なことなのだ語ります 0:10:03.000,0:10:05.000 愛していると 0:10:05.000,0:10:08.000 告白するための思い切りや 0:10:08.000,0:10:11.000 うまくいく保証がなくても 0:10:11.000,0:10:13.000 何かをするという熱意について 0:10:13.000,0:10:16.000 また 0:10:16.000,0:10:18.000 マンモグラフィーの検査の後 0:10:18.000,0:10:20.000 医師からの告知に備えながら 0:10:20.000,0:10:22.000 なんとか生きる意志について 語ります 0:10:23.000,0:10:26.000 それがうまく行こうと行くまいと 0:10:26.000,0:10:29.000 関係性に身を費やしたいのです 0:10:29.000,0:10:32.000 ただそれが不可欠なことだと考えているのです 0:10:32.000,0:10:35.000 私にとってこれは裏切られる結果でした 0:10:35.000,0:10:38.000 自分自身がかつて研究をすることに 0:10:38.000,0:10:40.000 忠誠を誓ったなんてもう信じられませんでした 0:10:40.000,0:10:42.000 研究とは 0:10:42.000,0:10:45.000 制御したり予測すること また現象について詳しく調べることです 0:10:45.000,0:10:47.000 制御や予測という― 0:10:47.000,0:10:49.000 明確な目的があってなされるものです 0:10:49.000,0:10:51.000 けれども制御や予測という使命に 0:10:51.000,0:10:53.000 従った結果表れた答えは 0:10:53.000,0:10:56.000 心のもろさを受け入れた生き方であり 0:10:56.000,0:10:59.000 制御と予測を放棄せよというのです 0:10:59.000,0:11:02.000 これはちょっとした挫折となりました 0:11:02.000,0:11:06.000 ―会場(笑) 0:11:06.000,0:11:09.000 こんな風に実際よりも大きい挫折に見えたのです 0:11:09.000,0:11:11.000 ―会場(笑) 0:11:11.000,0:11:13.000 私は挫折と捉えましたが 0:11:13.000,0:11:16.000 私のセラピストはそれは開眼だと捉えました 0:11:17.000,0:11:19.000 開眼は挫折より響きがよいものですが 0:11:19.000,0:11:21.000 やはりそれは私には挫折でした 0:11:21.000,0:11:23.000 研究を止め セラピストを探すことにしました 0:11:23.000,0:11:26.000 余談ですが こういう状況がわかりますよね 0:11:26.000,0:11:29.000 友達に電話して「相談相手が必要なんだけど 0:11:29.000,0:11:32.000 誰かいい相手はいないかしら?」と言う状況です 0:11:32.000,0:11:34.000 私の場合は5人の友達がこう言ったのです 0:11:34.000,0:11:36.000 「えー?私だったらあなたのセラピストにはちょっと…」と 0:11:36.000,0:11:39.000 ―会場(笑) 0:11:39.000,0:11:41.000 「それってどういうことよ?」 0:11:41.000,0:11:44.000 「今言った通りよ わかるでしょ? 0:11:44.000,0:11:46.000 ものさしを持って乗り込んでこないでね」 0:11:46.000,0:11:49.000 ―「はいはい」 0:11:51.000,0:11:53.000 それであるセラピストを見つけたのです 0:11:53.000,0:11:56.000 セラピストのダイアナと初対面のとき 0:11:56.000,0:11:58.000 あるがままの人たちの 0:11:58.000,0:12:01.000 リストを渡して座りました 0:12:01.000,0:12:03.000 彼女がまず「どうですか?」 0:12:03.000,0:12:06.000 「大丈夫です 元気です」 0:12:06.000,0:12:08.000 「どうかしたんですか?」― 0:12:08.000,0:12:11.000 彼女はセラピスト専門のセラピストなのです 0:12:11.000,0:12:13.000 私たちにもセラピストが必要なのです 0:12:13.000,0:12:16.000 彼らの嘘発見器は高性能ですから 0:12:16.000,0:12:18.000 ―会場(笑) 0:12:18.000,0:12:20.000 それで言いました 0:12:20.000,0:12:22.000 「手短に言うと私は苦しんでいます」 0:12:22.000,0:12:24.000 「その苦しみは何ですか?」 0:12:24.000,0:12:27.000 「心のもろさについての課題を抱えていて 0:12:27.000,0:12:30.000 心のもろさが恥や恐れ 0:12:30.000,0:12:32.000 自己価値感についての苦しみの― 0:12:32.000,0:12:34.000 中核だということはわかっているんですが 0:12:34.000,0:12:37.000 それはどうも 0:12:37.000,0:12:40.000 喜びや創造 帰属や愛情とか 0:12:40.000,0:12:42.000 そういったものの根源でもあるようなのです 0:12:42.000,0:12:44.000 それが私の問題で 0:12:44.000,0:12:47.000 援助が必要なんです」と答えました 0:12:47.000,0:12:49.000 そしてこう続けました 0:12:49.000,0:12:51.000 「でも―家庭の問題や 0:12:51.000,0:12:53.000 幼少時代のことは関係ありませんから」 0:12:53.000,0:12:55.000 ―会場(笑) 0:12:55.000,0:12:58.000 「ただ攻略法が必要なだけなんです」 0:12:58.000,0:13:02.000 ―会場(笑) 0:13:02.000,0:13:05.000 ―会場(拍手) 0:13:05.000,0:13:07.000 ありがとうございます 0:13:09.000,0:13:12.000 彼女の反応はこうでした 0:13:12.000,0:13:14.000 ―会場(笑) 0:13:14.000,0:13:17.000 それで―「これって大変ですよね?」 0:13:17.000,0:13:20.000 「大変とか大変じゃないという問題じゃありません」 0:13:20.000,0:13:22.000 ―会場(笑) 0:13:22.000,0:13:24.000 「ただそういうものなのです」 0:13:24.000,0:13:27.000 「これはきっと重症だわ」 0:13:27.000,0:13:30.000 ―会場(笑) 0:13:30.000,0:13:32.000 そうでもあり そうでない面もありました 0:13:32.000,0:13:35.000 約1年かかりました 0:13:35.000,0:13:37.000 心のもろさや優しさが重要なことに 0:13:37.000,0:13:40.000 気付いた時に 人はどのように受け入れ 0:13:40.000,0:13:43.000 そこに踏み込むか わかりますか? 0:13:43.000,0:13:45.000 Aさん 「私は違う」 0:13:45.000,0:13:48.000 Bさん 「こんな人とは出かけたくない」 0:13:48.000,0:13:51.000 ―会場(笑) 0:13:51.000,0:13:54.000 私にとっては1年に渡る戦いでした 0:13:54.000,0:13:56.000 激しい戦いでした 0:13:56.000,0:13:58.000 心のもろさが私を押し私はそれを押し返しました 0:13:58.000,0:14:01.000 戦いには負けました 0:14:01.000,0:14:03.000 それでも人生は取り返しました 0:14:03.000,0:14:05.000 それで研究を再開しました 0:14:05.000,0:14:07.000 次の2年を費やし 0:14:07.000,0:14:10.000 改めて理解しようと試みたのです 0:14:10.000,0:14:12.000 あるがままの人たちの選択や 0:14:12.000,0:14:14.000 私たちがどうやって心のもろさとつきあっているか 0:14:14.000,0:14:16.000 といったことを 0:14:16.000,0:14:18.000 なぜ私たちはこんなに苦しむのだろう? 0:14:18.000,0:14:21.000 心のもろさに苦しんでいるのは私だけだろうか? 0:14:21.000,0:14:23.000 ―違います 0:14:23.000,0:14:25.000 そう―それが私が学んだことです 0:14:26.000,0:14:29.000 例えば告知を待っているとき 0:14:29.000,0:14:31.000 私たちは心のもろさを麻痺させています 0:14:31.000,0:14:33.000 面白いことにツイッターとフェイスブック上で 0:14:33.000,0:14:35.000 どのように心のもろさを定義しますか? 0:14:35.000,0:14:37.000 何が心のもろさを感じさせるのでしょう? と 0:14:37.000,0:14:40.000 疑問をなげかけると 1時間半で150の返信を得ました 0:14:40.000,0:14:42.000 どういう返信があるか 0:14:42.000,0:14:44.000 知りたかったのです 0:14:45.000,0:14:47.000 不調で夫に助けを求めなければならず 0:14:47.000,0:14:50.000 しかも新婚だったとき 0:14:50.000,0:14:53.000 夫をセックスに誘うとき 0:14:53.000,0:14:55.000 妻をセックスに誘うとき 0:14:55.000,0:14:58.000 落ち込んでいるとき デートに誘うとき 0:14:58.000,0:15:00.000 医者からの連絡をまっているとき 0:15:00.000,0:15:03.000 解雇されたとき 解雇を命じるとき 0:15:03.000,0:15:05.000 これが私たちの生きる世界なのです 0:15:05.000,0:15:08.000 私たちは心のもろさに溢れる世界に生きているのです 0:15:08.000,0:15:10.000 また心のもろさを扱う一つの方法は 0:15:10.000,0:15:12.000 その感覚を麻痺させることです 0:15:12.000,0:15:14.000 その証拠に― 0:15:14.000,0:15:16.000 このことだけが原因ではありませんが 0:15:16.000,0:15:18.000 これが大きな原因である事象が― 0:15:18.000,0:15:22.000 存在します 私たちはアメリカ史上もっとも 0:15:22.000,0:15:25.000 借金漬けで 太っていて 0:15:25.000,0:15:28.000 依存症が多く 0:15:28.000,0:15:30.000 薬物治療に頼る集団です 0:15:33.000,0:15:36.000 実は研究から知ったのですが 0:15:36.000,0:15:39.000 人間は選択的に感情を麻痺させることができません 0:15:40.000,0:15:43.000 というのも「これが悪の元凶」― 0:15:43.000,0:15:45.000 これが心のもろさ 悲しみ 恥 恐れ 失望 0:15:45.000,0:15:47.000 などと特定できないからです 0:15:47.000,0:15:49.000 こういう感情を避けたいので 0:15:49.000,0:15:52.000 ビール何杯かとバナナナッツマフィンを食べることにします 0:15:52.000,0:15:54.000 ―会場(笑) 0:15:54.000,0:15:56.000 とにかくそういう感情を避けたいのです 0:15:56.000,0:15:58.000 自分にも覚えがあるから笑ってるんでしょう 0:15:58.000,0:16:01.000 皆さんの生活をハックするのが私の仕事ですからね 0:16:01.000,0:16:03.000 でしょ? 0:16:03.000,0:16:05.000 ―会場(笑) 0:16:05.000,0:16:08.000 感情を麻痺させることなしに 0:16:08.000,0:16:10.000 こうしたつらい気持ちを麻痺させられません 0:16:10.000,0:16:12.000 選択的には麻痺させられないのです 0:16:12.000,0:16:15.000 だからそうした気持ちを麻痺させるとき 0:16:15.000,0:16:17.000 同時に喜びや 0:16:17.000,0:16:19.000 感謝の意や 0:16:19.000,0:16:21.000 幸福も同時に麻痺させてしまうのです 0:16:21.000,0:16:24.000 それでは惨めです 0:16:24.000,0:16:26.000 生の目的や意味を探しているのに 0:16:26.000,0:16:28.000 結局は心のもろさを感じてしまう 0:16:28.000,0:16:31.000 それでビールをかっくらってバナナナッツマフィンを頬ばる 0:16:31.000,0:16:34.000 それは危険なサイクルになります 0:16:36.000,0:16:39.000 こういうことも考えなければなりません 0:16:39.000,0:16:41.000 なぜ どうやって麻痺させるかということです 0:16:41.000,0:16:44.000 何かの中毒にならなくても麻痺します 0:16:44.000,0:16:46.000 他にもまた 本来は不確かなものを 0:16:46.000,0:16:49.000 全て確かなものにしようとします 0:16:50.000,0:16:53.000 宗教はもはや信仰や神秘への信奉から 0:16:53.000,0:16:55.000 確実性ということへ移行してしまいました 0:16:55.000,0:16:58.000 私が正しくてあんたが間違っている だまれ 0:16:58.000,0:17:00.000 以上 0:17:00.000,0:17:02.000 確かなものがすべて 0:17:02.000,0:17:04.000 恐れれば恐れるほど心はもろくなります 0:17:04.000,0:17:06.000 それがまた恐れをよぶのです 0:17:06.000,0:17:08.000 これは今日の政治のようです 0:17:08.000,0:17:10.000 論議なんてもはや存在しません 0:17:10.000,0:17:12.000 対話も存在しません 0:17:12.000,0:17:14.000 あるのはただの非難です 0:17:14.000,0:17:17.000 研究の中で非難の捉え方は 0:17:17.000,0:17:20.000 痛みや不快の解放をする手段です 0:17:21.000,0:17:23.000 私たちは完璧を志向します 0:17:23.000,0:17:26.000 それを目指すと私みたいになって 0:17:26.000,0:17:28.000 うまくはいきません 0:17:28.000,0:17:30.000 完璧を目指すためにお尻から脂肪をとって 0:17:30.000,0:17:32.000 それを頬に移植しているのです 0:17:32.000,0:17:35.000 ―会場(笑) 0:17:35.000,0:17:37.000 百年後の人たちが振り返ったときには 0:17:37.000,0:17:39.000 あきれてしまうことを願います 0:17:39.000,0:17:41.000 ―会場(笑) 0:17:41.000,0:17:43.000 そして私たちは危険なほど 0:17:43.000,0:17:45.000 子どもたちに完璧を求めています 0:17:45.000,0:17:47.000 子どもたちについてお話をします 0:17:47.000,0:17:50.000 子どもは生まれたときから苦しみを背負っています 0:17:50.000,0:17:53.000 赤ちゃんを抱いたときにこんなことを言うのは間違いです 0:17:53.000,0:17:55.000 見て この子は完璧よ 0:17:55.000,0:17:57.000 私はこの子を完璧に5年生までに 0:17:57.000,0:18:00.000 テニスチームに入れて7年生までにエール大学へいれるの 0:18:00.000,0:18:02.000 そんなこと言う必要ないんです 0:18:02.000,0:18:04.000 ただこう言えばいいのです 0:18:04.000,0:18:07.000 「あなたは完璧じゃないのよ 苦しみを背負っているの 0:18:07.000,0:18:09.000 でもあなたは愛情や帰属に値する存在なのよ」 0:18:09.000,0:18:11.000 それが私たちがするべきことです 0:18:11.000,0:18:13.000 子どもたちがそのようにして育てられるならば 0:18:13.000,0:18:16.000 今日の問題を解決できるはずです 0:18:16.000,0:18:20.000 私たちは自分たちのなすことが 0:18:20.000,0:18:23.000 人に影響を与えないふりをしています 0:18:23.000,0:18:25.000 個々の生活でもそうしています 0:18:25.000,0:18:27.000 組織としても行っています 0:18:27.000,0:18:29.000 救済であろうと石油流出であろうと 0:18:29.000,0:18:31.000 リコールであろうと 0:18:31.000,0:18:33.000 私たちは自分たちの行いが他者に 0:18:33.000,0:18:36.000 大きな影響を与えていないふりをしているのです 0:18:36.000,0:18:39.000 企業に言ったっていいでしょう 完璧でないのは― 0:18:40.000,0:18:42.000 承知ですから本当のことを語って 0:18:42.000,0:18:44.000 謝罪します もう繰り返しませんと— 0:18:44.000,0:18:47.000 言ってください 0:18:50.000,0:18:52.000 あるいは別の方法もあります 0:18:52.000,0:18:54.000 それで締めくくります―それは 0:18:54.000,0:18:56.000 自分自身を心の底から 0:18:56.000,0:18:58.000 さらけ出すこと 0:18:58.000,0:19:01.000 心のもろさもさらけだすのです 0:19:01.000,0:19:03.000 そしてあるがままで愛すことです 0:19:03.000,0:19:05.000 たとえ成功への保証がないとしても 0:19:05.000,0:19:07.000 それがとても辛いものだとしても 0:19:07.000,0:19:10.000 特に親としては耐えがたいほどに困難なことですが 0:19:12.000,0:19:15.000 そして感謝とよろこびを実践すること 0:19:15.000,0:19:17.000 恐怖の瞬間にも迷いのときにも― 0:19:17.000,0:19:19.000 それほどまで相手を愛せるだろうか 0:19:19.000,0:19:21.000 そんなに熱烈に信じることができるか 0:19:21.000,0:19:24.000 このことにそれほどまでに激しくなれるか―と自問するときにでさえ 0:19:24.000,0:19:26.000 一大事と騒ぎ立てたりせず 0:19:26.000,0:19:29.000 ただ立ち止まってこう言うのです なんて素晴らしいんだろう 0:19:29.000,0:19:32.000 この心のもろさを感じることが生きていることだから と 0:19:33.000,0:19:36.000 そして最後に もっとも重要だと考えるのは 0:19:36.000,0:19:39.000 自分はよくやってる と信じることです 0:19:39.000,0:19:41.000 なぜなら 自分はよくやっていると言える 0:19:41.000,0:19:44.000 立場を信じて そこから働きかけるときには 0:19:45.000,0:19:48.000 叫ぶのをやめて傾聴し 0:19:49.000,0:19:51.000 もっと優しく穏やかに周りに接し 0:19:51.000,0:19:54.000 自分自身にも優しく穏やかになれるのです 0:19:54.000,0:19:56.000 以上です ありがとうございました 0:19:56.000,0:19:59.000 (拍手)