1 00:00:07,016 --> 00:00:08,476 2012年 2 00:00:08,476 --> 00:00:13,136 日本とデンマークの合同研究チームが 世界記録を打ち立てました 3 00:00:13,136 --> 00:00:15,716 毎秒1ペタビットのデータ つまり 4 00:00:15,716 --> 00:00:19,006 1万時間分の高精細度ビデオに 相当するデータを 5 00:00:19,006 --> 00:00:22,526 1本のケーブルで 50キロメートルも伝送したのです 6 00:00:22,526 --> 00:00:24,426 それも ただのケーブルではなく 7 00:00:24,426 --> 00:00:27,466 地球を結びつけ インターネットを可能にする 8 00:00:27,466 --> 00:00:29,766 隠れたネットワーク 9 00:00:29,766 --> 00:00:32,236 光ファイバーの改良版でした 10 00:00:32,236 --> 00:00:33,116 何十年もの間 11 00:00:33,116 --> 00:00:36,496 都市や国を結ぶ長距離通信は 12 00:00:36,496 --> 00:00:38,546 銅線を通じた 13 00:00:38,546 --> 00:00:40,266 電気信号によって行われていました 14 00:00:40,266 --> 00:00:42,236 これは 遅く 非効率的であり 15 00:00:42,236 --> 00:00:47,656 金属線がデータ伝送速度を制限し 廃熱によって伝送能力が一部失われていました 16 00:00:47,656 --> 00:00:49,596 ところが 20世紀末には 17 00:00:49,596 --> 00:00:53,596 より優れた伝送方法が開発されました 18 00:00:53,596 --> 00:00:55,056 金属の代わりに 19 00:00:55,056 --> 00:01:00,146 ガラスを注意深く溶かし しなやかで 人間の髪より細い 20 00:01:00,146 --> 00:01:04,535 数百キロメートルの長さの ファイバーの束に加工します 21 00:01:04,535 --> 00:01:06,237 そして このファイバーは 22 00:01:06,237 --> 00:01:11,487 電気の代わりに データを表す 光のパルスを運びます 23 00:01:11,487 --> 00:01:16,227 しかし 光はどのようにして ガラスの「中」を進むのでしょうか 24 00:01:16,227 --> 00:01:21,511 そのミソは 全内部反射という現象です 25 00:01:21,511 --> 00:01:23,168 ニュートンの時代から 26 00:01:23,168 --> 00:01:26,798 レンズ職人や科学者の間では 光が空気から 27 00:01:26,798 --> 00:01:31,588 水やガラスなどの物質を通る際 進路が曲がることが知られていました 28 00:01:31,588 --> 00:01:36,239 ガラスの中を通る光線が ガラスの表面に急な角度で当たると 29 00:01:36,239 --> 00:01:39,969 光線が空気へ抜けていく際 屈折 つまり曲がります 30 00:01:39,969 --> 00:01:42,959 ところが 浅い角度だと 31 00:01:42,959 --> 00:01:46,029 光線が曲がりすぎて 表面を通過できず 32 00:01:46,029 --> 00:01:48,949 ガラスの中で 跳ね返っていくのです 33 00:01:48,949 --> 00:01:50,319 条件さえ合えば 34 00:01:50,319 --> 00:01:55,549 通常なら 光を通すガラスが 光を中にとどめることができるのです 35 00:01:55,549 --> 00:01:57,991 電気や電波と比べ 36 00:01:57,991 --> 00:02:01,781 光ファイバーによる信号は 長距離を 移動しても ほとんど劣化しません 37 00:02:01,781 --> 00:02:04,051 とはいえ 光の一部は散乱しますし 38 00:02:04,051 --> 00:02:06,581 ファイバーを曲げすぎてしまうと 39 00:02:06,581 --> 00:02:08,491 光が漏れ出すという 欠点があります 40 00:02:08,491 --> 00:02:12,791 今日 1本の光ファイバーは 波長の異なる光をいくつも運んでいて 41 00:02:12,791 --> 00:02:15,256 それぞれ異なる データのチャネルを伝送します 42 00:02:15,256 --> 00:02:19,466 そして 光ファイバーケーブルの中には このようなファイバーの束が沢山あるのです 43 00:02:19,466 --> 00:02:23,445 海底には 100万キロメートル以上の ケーブルが 縦横無尽に敷かれ 44 00:02:23,445 --> 00:02:25,045 大陸を結んでいます ― 45 00:02:25,045 --> 00:02:29,435 赤道を30周できる程の長さです 46 00:02:29,435 --> 00:02:30,631 光ファイバーを使えば 47 00:02:30,631 --> 00:02:32,851 距離は大した問題とはならず 48 00:02:32,851 --> 00:02:36,851 これによって インターネットは 地球規模のコンピュータへと進化しました 49 00:02:36,851 --> 00:02:37,651 次第に 50 00:02:37,651 --> 00:02:43,221 モバイル環境は 世界中の巨大なデータセンターの中にある 51 00:02:43,221 --> 00:02:47,161 働きづめのサーバーの軍団に 頼るようになってきています 52 00:02:47,161 --> 00:02:49,081 これは クラウドコンピューティングといい 53 00:02:49,081 --> 00:02:51,361 2つの大問題の原因となっています 54 00:02:51,361 --> 00:02:54,144 廃熱と帯域幅のひっ迫です 55 00:02:54,144 --> 00:02:58,844 インターネットトラフィックの大部分は 昔ながらの電気ケーブルで繋がれた 56 00:02:58,844 --> 00:03:03,544 何千というサーバーからなる データセンターの中を往復しています 57 00:03:03,544 --> 00:03:06,286 そこで使われる電力の半分は 廃熱となってしまっています 58 00:03:06,286 --> 00:03:10,446 また 無線帯域幅の需要は 高まり続けていて 59 00:03:10,446 --> 00:03:13,536 携帯機器に用いられる ギガヘルツ波は 60 00:03:13,536 --> 00:03:16,336 データの伝送量が 限界を迎えつつあります 61 00:03:16,336 --> 00:03:19,866 どうやら 光ファイバーは あまりにも優秀すぎて 62 00:03:19,866 --> 00:03:24,576 クラウドやモバイルコンピューティングへの 期待が膨らみすぎているようです 63 00:03:24,576 --> 00:03:29,826 しかし 関連技術の集積フォトニクスが 救いの手を差し伸べました 64 00:03:29,827 --> 00:03:32,857 光は 光ファイバーだけではなく 65 00:03:32,857 --> 00:03:36,217 ごく細いシリコンワイヤによっても 運ぶことができます 66 00:03:36,217 --> 00:03:39,547 シリコンワイヤは ファイバーほど 光を運ぶことはできませんが 67 00:03:39,547 --> 00:03:42,117 何百キロメートルにも及ぶ 68 00:03:42,117 --> 00:03:45,597 光ファイバーのネットワークを 小さなフォトニックチップに 69 00:03:45,597 --> 00:03:49,237 収められるようになり サーバーに繋いで 70 00:03:49,237 --> 00:03:53,327 電気信号と光信号の変換が 出来るようになるのです 71 00:03:53,327 --> 00:03:59,429 この変換チップのおかげで データセンターで用いられてきた 72 00:03:59,429 --> 00:04:02,809 電気ケーブルを 電力効率の良い ファイバーに置き換えられるのです 73 00:04:02,809 --> 00:04:07,379 フォトニックチップによって 無線帯域幅の限界を超えることもできます 74 00:04:07,379 --> 00:04:10,861 研究者は 携帯機器の ギガヘルツ波を 75 00:04:10,861 --> 00:04:12,651 テラヘルツの周波数帯に置き換えて 76 00:04:12,651 --> 00:04:15,581 データを何千倍も速く 伝送できるよう 試みています 77 00:04:15,581 --> 00:04:17,621 しかし いずれも 伝播距離が短いのです 78 00:04:17,621 --> 00:04:19,721 テラヘルツ波は 空気中の水蒸気に吸収され 79 00:04:19,721 --> 00:04:21,961 あるいは 高い建物に 遮られたりするためです 80 00:04:21,961 --> 00:04:25,331 無線からファイバーに変換する 小さなトランスミッタチップが 81 00:04:25,331 --> 00:04:27,001 街中に分散されていれば 82 00:04:27,001 --> 00:04:31,431 テラヘルツ波を次々と伝え 長距離に渡り伝送できます 83 00:04:31,431 --> 00:04:34,069 その中継には 安定した仲介人である 84 00:04:34,069 --> 00:04:39,429 光ファイバーを用いれば 超高速無線コネクティビティを実現できます 85 00:04:39,429 --> 00:04:41,303 歴史を通して 人類は 86 00:04:41,303 --> 00:04:43,893 光のおかげで ものを見たり 熱を利用してきました 87 00:04:43,893 --> 00:04:49,183 光は常に 人類が物理世界を探検し 安住する 過程のそばにあり続けてきました 88 00:04:49,183 --> 00:04:52,812 そして今 私たちは 光に情報を載せて 89 00:04:52,812 --> 00:04:55,762 光集積回路という出口を たくさん組み込んだ 90 00:04:55,762 --> 00:04:59,102 光ファイバーのスーパーハイウェイを 走らせることで 91 00:04:59,102 --> 00:05:02,882 ますます拡張していく仮想世界を 築こうとしているのです