2012年
日本とデンマークの合同研究チームが
世界記録を打ち立てました
毎秒1ペタビットのデータ つまり
1万時間分の高精細度ビデオに
相当するデータを
1本のケーブルで
50キロメートルも伝送したのです
それも ただのケーブルではなく
地球を結びつけ
インターネットを可能にする
隠れたネットワーク
光ファイバーの改良版でした
何十年もの間
都市や国を結ぶ長距離通信は
銅線を通じた
電気信号によって行われていました
これは 遅く 非効率的であり
金属線がデータ伝送速度を制限し
廃熱によって伝送能力が一部失われていました
ところが 20世紀末には
より優れた伝送方法が開発されました
金属の代わりに
ガラスを注意深く溶かし
しなやかで 人間の髪より細い
数百キロメートルの長さの
ファイバーの束に加工します
そして このファイバーは
電気の代わりに データを表す
光のパルスを運びます
しかし 光はどのようにして
ガラスの「中」を進むのでしょうか
そのミソは 全内部反射という現象です
ニュートンの時代から
レンズ職人や科学者の間では
光が空気から
水やガラスなどの物質を通る際
進路が曲がることが知られていました
ガラスの中を通る光線が
ガラスの表面に急な角度で当たると
光線が空気へ抜けていく際
屈折 つまり曲がります
ところが 浅い角度だと
光線が曲がりすぎて
表面を通過できず
ガラスの中で
跳ね返っていくのです
条件さえ合えば
通常なら 光を通すガラスが
光を中にとどめることができるのです
電気や電波と比べ
光ファイバーによる信号は 長距離を
移動しても ほとんど劣化しません
とはいえ
光の一部は散乱しますし
ファイバーを曲げすぎてしまうと
光が漏れ出すという
欠点があります
今日 1本の光ファイバーは
波長の異なる光をいくつも運んでいて
それぞれ異なる
データのチャネルを伝送します
そして 光ファイバーケーブルの中には
このようなファイバーの束が沢山あるのです
海底には 100万キロメートル以上の
ケーブルが 縦横無尽に敷かれ
大陸を結んでいます ―
赤道を30周できる程の長さです
光ファイバーを使えば
距離は大した問題とはならず
これによって インターネットは
地球規模のコンピュータへと進化しました
次第に
モバイル環境は
世界中の巨大なデータセンターの中にある
働きづめのサーバーの軍団に
頼るようになってきています
これは
クラウドコンピューティングといい
2つの大問題の原因となっています
廃熱と帯域幅のひっ迫です
インターネットトラフィックの大部分は
昔ながらの電気ケーブルで繋がれた
何千というサーバーからなる
データセンターの中を往復しています
そこで使われる電力の半分は
廃熱となってしまっています
また 無線帯域幅の需要は
高まり続けていて
携帯機器に用いられる
ギガヘルツ波は
データの伝送量が
限界を迎えつつあります
どうやら 光ファイバーは
あまりにも優秀すぎて
クラウドやモバイルコンピューティングへの
期待が膨らみすぎているようです
しかし 関連技術の集積フォトニクスが
救いの手を差し伸べました
光は 光ファイバーだけではなく
ごく細いシリコンワイヤによっても
運ぶことができます
シリコンワイヤは ファイバーほど
光を運ぶことはできませんが
何百キロメートルにも及ぶ
光ファイバーのネットワークを
小さなフォトニックチップに
収められるようになり
サーバーに繋いで
電気信号と光信号の変換が
出来るようになるのです
この変換チップのおかげで
データセンターで用いられてきた
電気ケーブルを 電力効率の良い
ファイバーに置き換えられるのです
フォトニックチップによって
無線帯域幅の限界を超えることもできます
研究者は 携帯機器の
ギガヘルツ波を
テラヘルツの周波数帯に置き換えて
データを何千倍も速く
伝送できるよう 試みています
しかし いずれも
伝播距離が短いのです
テラヘルツ波は 空気中の水蒸気に吸収され
あるいは 高い建物に
遮られたりするためです
無線からファイバーに変換する
小さなトランスミッタチップが
街中に分散されていれば
テラヘルツ波を次々と伝え
長距離に渡り伝送できます
その中継には 安定した仲介人である
光ファイバーを用いれば
超高速無線コネクティビティを実現できます
歴史を通して 人類は
光のおかげで ものを見たり
熱を利用してきました
光は常に 人類が物理世界を探検し 安住する
過程のそばにあり続けてきました
そして今 私たちは
光に情報を載せて
光集積回路という出口を
たくさん組み込んだ
光ファイバーのスーパーハイウェイを
走らせることで
ますます拡張していく仮想世界を
築こうとしているのです