Japanese subtítols

← 物を味わうと脳に何が起きるか

興味をそそられる研究内容と面白おかしい裏話を交えながら、神経科学者のカミラ・アルンダル・アンデルセンは、脳スキャンを駆使して人々の味覚の研究を行う研究所に私たちを誘ってくれます。アンデルセンは、私たちが食べた物をどのように潜在的に知覚するかについての驚くべき見識を示し、この研究データの活用が、味を犠牲にすることなく体に良い食生活を送ることをどう助けてくれるかについて語ってくれます。

Obtén el codi d'incrustació
30 llengües

Showing Revision 33 created 06/13/2020 by Masaki Yanagishita.

  1. とても面白い経験をしました
  2. 5年前の事です
  3. 夫と 2日に一度の
  4. 食料品の買い出しに行きました
  5. その日は 高級感がある
    つまり ―
  6. フェアトレードでオーガニックの
  7. ケニア産の
    シングルオリジンコーヒーを見つけ
  8. 奮発して買ってみました
  9. 問題は その時すでに始まっていたのです

  10. 夫は そのコーヒーが
    いつもの低価格品に比べ
  11. 格上であると感じたのです
  12. 私はというと
    高級なコーヒーを飲む生活のせいで
  13. 家計が破綻することを
    想像していました
  14. (笑)

  15. さらに悪いことに

  16. そんなものにお金をかけるのは
    ムダだと心配しました
  17. どのみち違いなど
    判るまいと思いました
  18. 残念なことに
    これは 特に夫に言える事ですが
  19. 彼は 妻が神経科学者で
    しかも 専門が食品科学である事を
  20. 一時的に 忘れていました
  21. (笑)

  22. おかしいですよね?

  23. 事をややこしくせずに
  24. 夫をテストしてみました
  25. とある実験を企て
  26. 夫に目隠しをつけて
  27. (笑)

  28. コーヒーを2種類淹れ

  29. 「1種類ずつ試してもらうわね」と
  30. 夫に言いました
  31. 夫は はっきり確信を持って
  32. 最初のコーヒーの方が
  33. より鋭い味で 苦いと言いました
  34. コクが強く
    体を揺さぶり起こす為にできたような
  35. 朝にもってこいのコーヒーです
  36. (笑)

  37. 反対に 次に出したコーヒーは

  38. フルーティで軽やかだと言いました
  39. 夕方に飲んで
    リラックスするためのコーヒーです
  40. 夫は知る由もなかったのですが
  41. 実はテストでは
    2種類のコーヒーではなく
  42. 全く同じコーヒーを
    2回出しただけだったのです
  43. (笑)

  44. もちろん 同じコーヒーが

  45. 突如 粗悪品から極上品に
    変わった訳ではありません
  46. 味の違いは
    夫の気持ちの産物に過ぎません
  47. 高級コーヒーをひいきする
    というバイアスが
  48. 実際には存在しない
    味の違いを感じさせたのです
  49. さて 家計を救うことができ
  50. 殊に 私にとっては
  51. 笑い話で終わりましたが
  52. (笑)

  53. 次第に疑問に思い始めたことは

  54. 何故 1杯のコーヒーに対し
    回答がそこまで二分したのかです
  55. 夫は 後々まで公に笑い者にされる
    リスクを負ってまで
  56. 何故あの様な 
    大胆な発言をしたのでしょうか
  57. (笑)

  58. 驚くような答えでしたが
    皆さんも同じように答えたと思うのです

  59. 私たちが受けとる回答の
    裏に潜む真実を査定する事 ―
  60. それは 私が関わる科学分野において
  61. 最も大きな課題なのです
  62. 人々が 美味しいと実際に言っている
    意見を頼れないのなら
  63. どうやって食品の味を
    改良すればいいのでしょう
  64. それを理解するべく まずは
    人が食物を感知する仕組みに注目しましょう

  65. 私がコーヒーを飲むと
  66. 体内の受容体がコーヒーを感知し
  67. その情報は
    脳内の活性細胞に変換されます
  68. 光の波長は
    色に変換されます
  69. 液体中の分子は
    口内の受容体により感知され
  70. 5つの基本味の1つに分類されます
  71. 塩味 酸味 苦味 甘味 旨味です
  72. 空気中の分子は
    鼻腔の受容体により感知され
  73. においに変換されます
  74. 軽く触れる刺激 温度 音などにも
    同じ事が言えます
  75. これらの情報は全て
    受容体により感知され
  76. 脳内の細胞間で
    信号に変換されるのです
  77. それらの情報が
    絡み合い 統合され
  78. 私の脳は
  79. 今コーヒーを飲んだな
    好きな味だな と認識します
  80. こうした 脳細胞の大奮闘を経て
  81. ようやく 私たちは
  82. コーヒーの味を
    意識して経験するのです
  83. これは 現在みんなが
    誤認している点です
  84. 意識として経験することは

  85. 現実の絶対的真実の反映に
    違いないと考えがちです
  86. ですが 今お話ししたように
  87. 物理的な事物と それに対する
    意識としての経験の間に関する
  88. 神経の解釈には
    いくつもの段階があります
  89. つまり 場合によっては
  90. この 意識としての経験は
    現実を全く反映しません
  91. 私の夫に起こったことがその例です
  92. それは 身体に対する刺激の中には
    弱過ぎる為に
  93. 障壁を破って
    意識に入り込めないものもあり
  94. 一方で 入り込めた情報は
  95. 到達前に 隠れたバイアスにより
    歪められてしまう恐れがあるからです
  96. そして 人々は
    沢山のバイアスを持っているのです
  97. 今ここに座っておられる皆さんは
    自分だったら恐らく

  98. 私の夫よりも 上手くやれただろうとか
  99. 2種類のコーヒーを正しく判別できただろう
    とか思っているでしょう
  100. だとすれば
    実は あるバイアスに囚われているのです
  101. これは 「バイアスの盲点」
    と言われるもので
  102. 自分は 他人ほどには
    バイアスを持っていないと思い込む傾向です
  103. (笑)

  104. バイアスの対象のバイアスにさえ

  105. バイアスを持つ事があります
  106. (笑)

  107. 厄介なことに こんなのもあります

  108. 食品業界で知られているのは
    「礼儀バイアス」です

  109. 社会的に受け入れられそうな意見を
    述べがちだという
  110. バイアスのことですが
  111. それは私たち自身の
    意見ではありませんよね
  112. この事は 食品研究者としての課題です
  113. 私が新しく作った低糖質ミルクシェイクを
    みんなが美味しいと言ったとしても
  114. 果して本当でしょうか
  115. (笑)

  116. ひょっとすると
    私が聞いているのを知っていて

  117. 喜ばせるために
    そう言っているのかも知れませんよね
  118. あるいは彼らはただ 健康志向だと
    私に思われたかったのかも知れません
  119. 私には知る由もありません
  120. でも もっとタチが悪いことに
    答えた人たちも 分かっていないのです
  121. 熟練した食品査定専門家は
  122. 嗅覚と味覚を分別して捉えることを
  123. 徹底的に学習した専門職ですが
    彼らでさえも
  124. バニラが含まれていると
    食品をより甘く感じてしまうという
  125. バイアスにかかることもあります
  126. 何故でしょう
  127. もちろん
    バニラが本当に甘いからではありません
  128. それは 専門家と言えども
    結局のところ人であり
  129. 私たち同様
    沢山のデザートを食べた事があり
  130. 甘味とバニラの香りを
    結びつけて覚えているからです
  131. ですから 味覚と嗅覚
    その他の知覚情報は

  132. 私たちの意識の中で
    密接に絡み合っているのです
  133. 考えようによっては
    この事を利用できます
  134. これらの意識経験を利用して
  135. データをうまく活用し
    砂糖の代わりに バニラを足して
  136. 甘さを増す事ができます
  137. しかしその一方で
  138. これらの意識上の評価では
  139. 人々が本当に
  140. 低糖質のミルクシェイクを好むかは
    私にはやはり分かりません
  141. では 如何に問題に対処しましょう

  142. 意識上の食品評価の裏に潜む真実を
  143. どのように査定すれば良いでしょうか
  144. その鍵は 意識の障壁を取り除き
  145. 代わりに脳内の情報に直接
    焦点を当てることにあります
  146. そうして判ったのは
  147. 私たちの脳には
    興味深い秘密が沢山あるということです
  148. 私たちの脳は 常時
    全身から感覚情報を受信しており
  149. その殆どを
    私たちは自覚さえしていません
  150. 例えば 消化管から常時受容する ―
  151. 味覚情報などがそれです
  152. 脳もまた
    全ての感覚情報に反応します
  153. 脳は 私が自覚しないところで
    私の行動を変え
  154. 好ましい事を経験すると
  155. 瞳孔を散大する事ができます
  156. また その感情が強い時には
  157. 発汗量をほんの少し増加させます
  158. また 脳スキャンにより
  159. 今では
    この脳内情報の評価が可能です
  160. 具体的には 私の活用してきた
    脳スキャン技術は

  161. 脳波計測と呼ばれるものです
  162. 略して「EEG」です
  163. 私の研究では 全部で128個の電極を
    キャップに付け
  164. これをかぶってもらいます
  165. それぞれの電極は
    脳内の電気的活動を
  166. ミリ秒まで正確に測定します
  167. しかしながら 問題があります
  168. それは 電気的活動は
    脳のみでなく
  169. 体内の他の部分でも行われており
  170. また 周囲の環境でも
    常に 電気的活動が起きています
  171. 私が実験を行うにあたり
  172. それらのノイズを
    最小限に抑える必要があります
  173. そのため 実験参加者には
    いくつかの事をお願いします
  174. まず
  175. 筋肉の動きを抑えるべく
  176. 頭を顎あてに載せてもらいます
  177. また 目の動きと瞬きを抑えるべく
  178. コンピューター画面の中央に
    視線を合わせてもらいます
  179. また 唾を飲み込む事も避けたいので
  180. ガラスのボウルを置き
  181. その上に 舌を突き出してもらいます
  182. 私が味覚刺激を
    ひっきりなしに 舌に乗せる為
  183. それがボウルに滴り落ちるのです
  184. (笑)

  185. この素敵な光景の仕上げに

  186. 参加者に よだれかけを支給します
  187. ピンクかブルーか
    好きな方を選んでもらいます
  188. (笑)

  189. 普通の食事風景みたいでしょう?

  190. (笑)

  191. そんなわけないですよね

  192. さらに悪いのは
  193. 私も 参加者の思考を
    コントロールできませんから
  194. この味覚実験を
  195. 複数回行う必要があります
  196. 参加者の皆さんは 最初は
    支給される無料ランチのことを
  197. 考えているのかもしれません
  198. あるいは2度目は
    もうすぐ来るクリスマスの事で
  199. 今年は お母さんに何を贈ろうかを
    考えているのかもしれません
  200. けれども それぞれの反応の
    共通事項は味なのです
  201. ですので この味覚実験を
    複数回繰り返すのです
  202. 60回です
  203. その後 反応の平均をとります
  204. これは 味覚と関係のない反応を
    平均化させる為です
  205. この方法を用い

  206. 私の また他の研究所で
  207. 「食べ物を舌に載せた」時点から
  208. 脳が その味を認識するまでの
    所要時間を調べたところ
  209. それは最初の100ミリ秒以内に
    起きているのが判りました
  210. これは 私たちの実際の知覚よりも
    0.5秒早いのです
  211. 次に
  212. 砂糖と 味の酷似した人工甘味料との
  213. 味の違いを調べました
  214. 実際 あまりに味が酷似している為
  215. 参加者の半数は
    ほとんど違いを識別できず
  216. 残りの半数に至っては
    全く識別できませんでした
  217. しかし驚くことに
  218. 参加者全員が共通して
  219. 脳内では明らかに
    味覚を識別できていました
  220. ですから EEGや
    その他の脳スキャン装置

  221. また その他の生理学的測定法である ―
  222. 発汗量や瞳孔サイズ測定で
  223. 新たな入り口から
    脳について理解できます
  224. 人々が持つバイアスにとらわれず
  225. 意識の障壁を取り除き
  226. 潜在意識下で味覚の差異を
    捉えるのに役立つ入り口です
  227. それは 人々が食べ物を口に入れた時の
    一番最初の反応を
  228. 実際に 人がそれを意識に上らせ
  229. その好き嫌いを合理的に説明できる前に
    測定できるからです
  230. 私たちは 人々の表情を測定できます
  231. また 視線や
  232. 発汗反応や
  233. 脳反応を測定できます
  234. これらの手法を使えば
  235. より味の優れた食べ物を
    作る事ができるでしょう
  236. それは 人々が本当に
    あの低糖質のミルクシェイクを
  237. 好きなのか測定可能だからです
  238. また 味の面で妥協することなく
    より体に良い食品を作ることができます
  239. 何故かと言うと
    異なる甘味料への反応を測定する事で
  240. 砂糖に対する反応に
    より近い反応が出る甘味料を
  241. 探せるからです
  242. さらに よりヘルシーな食品を作る
    助けにもなります

  243. 私たちが そもそも実際に
    食品をどう感知しているのかを
  244. 理解するのに役立つからです
  245. それは 驚くほどに
    ほとんど知られていない事です
  246. 例えば 5つの基本味のことは
    既に知っていますが
  247. 他の味も存在するのではと
    強く思っています
  248. 実際に EEG装置を使い
  249. 脂質は 食感とにおいに加え
    味覚としても感知できることを
  250. 裏付ける証拠を掴みました
  251. つまり 脂味は
    第六の基本味かもしれないのです
  252. そして 私たちの脳が
    脂質と糖分を認識する仕組みを解明したら
  253. 夢の様な話でしょうが
  254. 本当に実現したら いつかは
  255. ノンカロリーで 味は本物に劣らない
    ミルクシェイクも 夢ではないかも知れません
  256. あるいは
    私たちは 消化管の受容体を介して
  257. 潜在意識下で
    カロリーを検知できるので
  258. そんな事は
    不可能だと解るかもしれません
  259. 将来は まだ未知数です
  260. 私たちの意識に上る 食に関する経験は

  261. 食に対する 総合的知覚の中での
    氷山の一角に過ぎません
  262. 意識に上るものでも
    潜在意識下のものでも
  263. この総合的知覚を研究していく事で
  264. 人々にとり より味に優れ 体に良い食品を
    作れると強く確信しています
  265. ありがとうございました

  266. (拍手)