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HIVとインフルエンザ ー ワクチンの戦略

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    自分が何で死ぬか 心配ですか?
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    心臓病やガン
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    交通事故でしょうか?
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    多くの人はコントロールできないことを
    心配します
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    戦争やテロや
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    ハイチの悲惨な地震なども心配です
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    では人類にとって真の脅威は何でしょうか
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    数年前 バクラフ・スミル教授は
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    歴史を変えるほどの
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    大きな災害が突然起こる
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    確率の計算を試みました
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    彼が名付けた
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    大規模な致命的断絶とは
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    今後50年に起こり得る
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    最高1億人の命を奪う
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    災害のことです
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    世界大戦が発生する確率や
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    大規模な火山の噴火や
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    小惑星が地球に衝突する確率を求めました
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    しかしその他の何よりも発生の確率が高く
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    ほぼ100%の確率で
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    起こり得るとされたのが
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    重症インフルエンザの大流行です
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    インフルエンザは
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    カゼがひどくなったものと思われがちですが
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    致命的になることもあります
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    アメリカでは毎年
    季節性インフルエンザで
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    3万6千人が命を落とします
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    発展途上国のデータは不完全ですが
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    死者の人数は
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    もっと多いことでしょう
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    さらに 厄介なことに
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    ウイルスは時に
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    著しい変異を遂げると
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    実質的に新種ウイルスのようになり
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    こうして大流行が生じるのです
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    1918年には新種のウイルスが出現して
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    5000万人から1億人が亡くなりました
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    燎原の火の如し です
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    発症してから数時間で
    亡くなった患者もいました
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    今日 我々は以前より安全なのでしょうか?
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    誰もが心配していた
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    今年のひどい流行は
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    なんとか回避できたようです
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    しかしこの脅威は
    いつ再現してもおかしくありません
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    幸いなことに
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    今の時代は
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    科学と技術と国際化が結びついて
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    かつてない可能性を拓きつつあります
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    いまだに地球上の全死者の
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    5分の1と多くの苦しみの
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    原因である感染症を撲滅して
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    歴史を刻む可能性です
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    それは 実行可能なのです
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    すでに現在のワクチンによって
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    何百万人もの命を救っています
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    ワクチンをより広く行き渡らせれば
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    より多くの命を救えます
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    さらに新種や改良型のワクチンであれば
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    マラリアや結核やHIV
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    肺炎や下痢やインフルエンザなどの
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    これまでずっと続いてきた苦しみに
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    終わりを告げることができるはずです
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    今日はワクチンの成果についてお話します
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    最初に なぜワクチンが重要か
    説明しましょう
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    ワクチンの力は たとえるなら
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    ささやき声のようです
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    ワクチンの成果があると歴史に残りますが
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    その後しばらくすると
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    ほとんど耳にすることもなくなります
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    ある年齢以上の人なら
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    腕に小さな丸い痕が付いているでしょう
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    子どものときの予防接種の痕です
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    でも最近は天然痘の心配はしなくなりました
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    20世紀に5億人の命を奪った病気が
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    撲滅されたのです
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    ポリオもです
    鉄の肺を覚えている方などいますか?
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    こういう物を目にすることは
    無くなりました
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    ワクチンのおかげです
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    さて興味深いのは
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    今日では 30種余りの病気に
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    ワクチンで対処できるのに
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    HIVやインフルエンザは
    未だに脅威だということです
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    それはなぜでしょうか?
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    こんな事情があるのです
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    ごく最近になるまで
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    ワクチンの仕組みの詳細は
    明らかではありませんでした
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    試行錯誤によって効果は確認されていました
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    病原体を確保し それを改変して
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    人や動物に投与したら
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    どうなるか観察するのです
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    この方法は多くの病原体に対して有効で
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    やっかいなインフルエンザにも
    なんとか使えますが
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    人間が自然免疫を持たない
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    HIVにはまったく効果がありません
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    ではワクチンの作用を見てみましょう
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    簡単に言えば 必要に応じて
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    免疫系が使うための
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    秘密兵器を作っておくのです
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    普通は ウイルス感染してから
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    体が完全な反撃体制を整えるまで
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    数日から
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    数週間かかるのです
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    それでは手遅れになることもあります
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    あらかじめ免疫をつけていれば
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    特定の敵を認識して
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    打倒できる戦力が
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    体内に配備されるわけです
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    ワクチンはそういう働きをします
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    ではビデオをお見せします
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    TED で初めて公開するこのビデオは
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    効果的なHIVワクチンの作用を
    説明するものです
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    (音楽)
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    ワクチンは 特定の侵入者を
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    認識し中和するように
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    人体を訓練しておくものです
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    HIVは人体の粘膜関門を
    突破して侵入すると
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    免疫細胞に感染して増殖します
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    免疫系の最前線部隊は
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    侵入者を発見します
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    樹状細胞やマクロファージが
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    ウィルスを捕らえて
    その断片を「提示」します
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    前線からHIVの侵入を知らされると
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    HIVワクチンで作られた
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    記憶細胞が活性化します
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    この記憶細胞は直ちに
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    必要とされる兵器を配備します
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    メモリB細胞はプラズマ細胞となって
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    次から次へと
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    HIVにピタリと適合した
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    特定の抗体を産生することで
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    HIVが細胞に染するのを防ぎます
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    同時にキラーT細胞大隊が
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    HIVに感染してしまった細胞を
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    探して破壊します
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    ウイルスは打ち負かされます
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    ワクチンが無かったら
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    これらの兵器を準備するまでに
    1週間以上もかかり
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    その間にHIVとの戦いには
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    敗北してしまっているでしょう
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    よくできたビデオでしょう?
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    ビデオに出てきた抗体の作用は
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    ほとんどのワクチンで同様に働きます
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    つまり肝心なのは
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    どうすれば インフルエンザや
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    HIVに対して必要な抗体を
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    人体が作るようにできるのか です
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    これらのウイルスの厄介なところは
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    常に変化しているということです
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    インフルエンザのウイルスを見てみましょう
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    この図にあるいろいろな色の
    突起を用いて
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    インフルエンザのウイルスは感染します
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    また抗体がウイルスを捕まえて
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    中和するのに用いるのもこの突起です
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    変異によって突起の形が変化すると
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    抗体はウィルスを
    認識できなくなってしまいます
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    だから毎年
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    違った株のインフルエンザにかかるのです
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    だから 春には
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    次のシーズンに最も流行しそうな
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    3株のインフルエンザを推定し
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    1つのワクチンに仕立てて
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    秋には生産できるように急ぐのです
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    さらに困ったことに
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    最も多いA型インフルエンザは
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    人の周辺で生息する
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    動物にも感染します
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    A型はそれらの動物の中で
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    遺伝子組み換えを起こします
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    さらに 野生の水鳥は
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    全ての株のインフルエンザの
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    キャリアです
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    それでこんな状況が生じました
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    2003年には
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    H5N1 ウイルスが発生しました
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    これは鳥から人への伝染が何件か
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    別々に起こったものです
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    致死率は70%と推定されました
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    当時は大変恐れられましたが
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    幸運にも このウイルスは
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    人から人へは
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    伝染しにくいものでした
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    今年メキシコで発生した
    H1N1 ウイルスは
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    人と鳥とブタの
    いずれにも感染するという
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    危険なものでした
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    簡単に伝染するものでしたが
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    幸運にも 軽症のものでした
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    ある意味で
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    これまでは 運がよかったのです
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    しかし いつ別の野鳥が
    飛び込んでくるかもしれません
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    こんどはHIVを見てみましょう
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    インフルエンザは変化が多いのですが
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    HIVと比べてしまうと
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    ジブラルタルの岩のように見えます
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    エイズの原因となるウイルスは
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    これまで科学者が目にした
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    最も手こずる病原体で
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    猛烈に変異します
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    免疫系を回避するオトリの機能を持ち
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    攻撃してきた細胞を逆に攻撃して
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    そのゲノムの中に
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    身を潜めます
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    このスライドは
    インフルエンザの遺伝子が
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    どう変化し得るか示しています
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    これに比べるとHIVは
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    遥かにやっかいなターゲットですね
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    先ほどのビデオでは 感染した細胞から
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    ウイルス艦隊が送り出されていました
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    感染したばかりの人の中には
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    こんな軍艦が100万もあって
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    それぞれが少しずつ異なっているのです
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    全てを識別して仕留めることのできる
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    兵器を用意することは
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    実に困難な課題となります
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    HIVウイルスがエイズの原因であると
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    確認されて以来の27年間で
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    他のあらゆるウイルス感染症の治療薬より
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    多くの種類のHIV薬が開発されてきました
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    これらの薬では治癒できませんが
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    それでも HIVと診断されることが
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    すなわち 死の告知ではなくなったのは
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    科学の大きな成果です
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    薬を入手できる者にとっては成果です
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    しかしワクチンへの取り組みは
    全く違っていて
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    大企業はそこから撤退しました
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    科学として実に難しく
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    ビジネスとしても成り立たないと
    見なされたからです
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    エイズのワクチンを作ることは
    不可能と考えられていましたが
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    そうではないという証拠が集まっています
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    この9月には
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    タイで行われた臨床試験から
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    予想もしないエキサイティングな
    結果が得られました
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    エイズのワクチンが
    初めて人体で効果を示したのです
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    残念ながら 効き目は弱いのですが
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    このワクチンが作られたのは
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    10年も前のことです
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    新しい考え方や初期の実験結果から
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    適切な動物モデルを使えば
    さらに有望な結果が期待できそうです
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    その上 ここ数ヶ月の間に
    HIV患者の血液から
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    広い範囲にわたって効力を持つ
  • 10:00 - 10:03
    新しい中和抗体も特定されました
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    これは何を意味するのでしょうか
  • 10:05 - 10:07
    先ほど述べたように
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    HIVは変化しやすいのですが
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    効力の広範な中和抗体は
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    いくつかのウイルス変種に結合して
  • 10:14 - 10:16
    不活化できるのです
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    こんな抗体を手に入れて
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    サルに投与すると
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    完全に感染を防ぎます
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    さらに この研究者たちは
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    抗体がHIVを捕捉する場所として
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    新しい部位を発見しました
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    この場所の何が特別なのかと言うと
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    ウイルスが変異を起こしても
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    ほとんど変化しない場所であることです
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    例えて言うなら ウイルスが
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    何度着替えても履いている靴下は
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    同じなわけです
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    すると次にするべきことは
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    体がきちんと この靴下に
    反応するようにすることです
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    こうして次のような状況に至りました
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    タイの臨床結果から
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    エイズにもワクチンを
    作れることが確かめられ
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    抗体の持つ特徴が
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    その方法を示唆しているのです
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    この戦略では抗体をもとにして
    ワクチン候補を作ります
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    ワクチン研究において初めての
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    逆からの戦略です
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    「レトロ=ワクチン学」と呼ばれる
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    ここでの可能性は
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    HIVワクチンでの可能性を
    はるかに超えています
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    こういうふうに考えてみてください
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    新しい抗体が特定できました
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    この抗体はウイルスの
    多様な変種にも結合します
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    この抗体が結合する
    特定の部位がわかっています
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    その部分の構造を
    正確に理解することができれば
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    それをワクチンの抗原として使い
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    ヒトの免疫系に働きかけて
    それに結合する抗体を
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    作らせることができると考えられます
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    うまくいけば
  • 11:35 - 11:37
    HIVの万能ワクチンが作れるでしょう
  • 11:37 - 11:39
    まあ 「言うはやすし」ですね
  • 11:39 - 11:41
    実際の構造は
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    この青色の抗体が黄色の部位に
  • 11:43 - 11:45
    結合する といったものだからです
  • 11:45 - 11:47
    ご想像のとおり この3次元構造は
  • 11:47 - 11:49
    取り組んでみると厄介です
  • 11:49 - 11:51
    何か役立つアイデアのある方は
  • 11:51 - 11:53
    ぜひお聞かせ下さい
  • 11:53 - 11:56
    このように HIVから始まった研究は
  • 11:56 - 11:59
    他の病気に対するイノベーションを促します
  • 11:59 - 12:01
    例えばバイオ技術の会社は
  • 12:01 - 12:03
    インフルエンザに対する
  • 12:03 - 12:05
    新しい抗体のターゲットと共に
  • 12:05 - 12:08
    広範な中和抗体を見つけています
  • 12:08 - 12:11
    現在彼らは 極めて重症なインフルエンザに
  • 12:11 - 12:14
    対応できる抗体の組み合わせを検討し
  • 12:14 - 12:17
    調合しようとしています
  • 12:17 - 12:19
    長期的には
  • 12:19 - 12:21
    これらの「レトロ=ワクチン学」の
    ツールを用いて
  • 12:21 - 12:24
    予防的なインフルエンザワクチンを
    作れるでしょう
  • 12:24 - 12:27
    また 合理的ワクチンデザインの観点からは
  • 12:27 - 12:30
    「レトロ=ワクチン法」は
    一つの手法にすぎません
  • 12:30 - 12:33
    別の例を挙げましょう
  • 12:33 - 12:35
    インフルエンザウイルスの表面にある
  • 12:35 - 12:37
    H型とM型の突起の話をしましたが
  • 12:37 - 12:40
    別の小さな突起に注目してください
  • 12:40 - 12:43
    免疫系からはほとんど隠れているのです
  • 12:43 - 12:45
    これらの部位も ウイルスの変異の際に
  • 12:45 - 12:48
    あまり変化しないことがわかってきました
  • 12:48 - 12:50
    そこで特定の抗体でこの部位を攻撃すれば
  • 12:50 - 12:53
    どの種類のインフルエンザも
    機能を失います
  • 12:53 - 12:55
    これまでの動物実験によると
  • 12:55 - 12:58
    軽い症状は出るかもしれませんが
  • 12:58 - 13:00
    重症になることは防げます
  • 13:00 - 13:02
    人にも効果があるなら
  • 13:02 - 13:05
    これは万能インフルエンザワクチンになります
  • 13:05 - 13:07
    毎年変更しなくても良く
  • 13:07 - 13:10
    死の危険から守ってくれるのです
  • 13:10 - 13:12
    そうなればインフルエンザは
  • 13:12 - 13:15
    ただの「たちの悪いかぜ」になります
  • 13:15 - 13:17
    もちろんどんなに素晴らしいワクチンでも
  • 13:17 - 13:19
    必要な人全員に行き渡らなくては
  • 13:19 - 13:21
    意味がありません
  • 13:21 - 13:22
    そうするためには
  • 13:22 - 13:26
    優れたワクチンの設計と
    優れた生産手段 そして
  • 13:26 - 13:29
    優れた流通手段を
    組み合わせなくてはなりません
  • 13:29 - 13:32
    数ヶ月前のことを思い出してください
  • 13:32 - 13:34
    この6月に WHO (世界保健機関) は
  • 13:34 - 13:36
    41年ぶりにインフルエンザの
  • 13:36 - 13:38
    世界的大流行を宣言しました
  • 13:38 - 13:40
    インフルエンザのピークに備え
    10月15日までに
  • 13:40 - 13:43
    1億5千万本のワクチンを用意すると
  • 13:43 - 13:44
    アメリカ政府は約束しました
  • 13:44 - 13:47
    発展途上国向けのワクチンも約束しました
  • 13:47 - 13:48
    数億ドルを費やして
  • 13:48 - 13:51
    ワクチンの製造を急いだのです
  • 13:51 - 13:53
    どういう結果になったでしょう?
  • 13:53 - 13:56
    インフルエンザワクチンの作り方
  • 13:56 - 13:58
    つまり製造技術は
  • 13:58 - 14:01
    1940年代初期に開発されました
  • 14:01 - 14:03
    時間のかかる面倒な工程です
  • 14:03 - 14:06
    鶏卵を用いる方法で
  • 14:06 - 14:09
    生きた鶏卵を何百万個も使います
  • 14:09 - 14:11
    ウイルスは生き物の中でしか増殖せず
  • 14:11 - 14:13
    インフルエンザに対しては
  • 14:13 - 14:15
    鶏卵が大変適していたのでした
  • 14:15 - 14:18
    ほとんどのインフルエンザ株では
  • 14:18 - 14:20
    一つの卵からワクチンが1-2本できます
  • 14:20 - 14:22
    幸運にも
  • 14:22 - 14:24
    現代の生物医学は
  • 14:24 - 14:26
    著しい進展を遂げています
  • 14:26 - 14:29
    そんな時代ですから
    インフルエンザワクチンは―
  • 14:29 - 14:32
    ―鶏卵から作ります
  • 14:32 - 14:33
    (笑)
  • 14:33 - 14:36
    数百万個の卵からです
  • 14:36 - 14:38
    ほとんど何も変わっていません
  • 14:38 - 14:39
    まぁ 信頼できるシステムです
  • 14:39 - 14:41
    問題は あるウイルスの株が
  • 14:41 - 14:44
    育つかどうか分からないことです
  • 14:44 - 14:46
    今年のブタ系のインフルエンザは
  • 14:46 - 14:49
    生産の初期にはあまり増殖せず
  • 14:49 - 14:52
    卵1個につきワクチン0.6本分でした
  • 14:53 - 14:55
    こんなことが心配になります
  • 14:55 - 14:57
    あの野鳥がまた飛んできたらどうするのか
  • 14:57 - 14:59
    家禽の群れに感染するタイプの
  • 14:59 - 15:01
    鳥インフルエンザが流行したら
  • 15:01 - 15:03
    ワクチンを作る卵がなくなるわけです
  • 15:03 - 15:06
    ダン 魚を育てるのに
  • 15:06 - 15:08
    チキンペレットを
  • 15:08 - 15:09
    何億個も使うなら
  • 15:09 - 15:11
    ここで手に入るみたいですよ
  • 15:11 - 15:13
    現在 世界中合わせて
  • 15:13 - 15:15
    3つの型のインフルエンザワクチンを
  • 15:15 - 15:18
    3億5千万本ずつ製造できます
  • 15:18 - 15:20
    豚インフルエンザのように
  • 15:20 - 15:23
    1種類だけをターゲットにすれば
  • 15:23 - 15:25
    合計12億本まで増やせます
  • 15:25 - 15:28
    工場がきちんと稼働しているとしてです
  • 15:28 - 15:30
    2004年には
  • 15:30 - 15:32
    1つの工場で雑菌が混入しただけで
  • 15:32 - 15:35
    アメリカでの供給は半減したのです
  • 15:35 - 15:37
    それに 製造プロセスには
  • 15:37 - 15:39
    今でも半年以上かかります
  • 15:39 - 15:41
    いったい我々の備えは1918年より
  • 15:41 - 15:43
    改善していると言えるのでしょうか
  • 15:43 - 15:45
    新しい技術も開発されているので
  • 15:45 - 15:48
    「もちろん」と言えるように
    なればと思います
  • 15:48 - 15:50
    世界中の誰もに行き渡るだけの
  • 15:50 - 15:53
    インフルエンザワクチンを
  • 15:53 - 15:55
    アメリカが今 投じている費用の半分で
  • 15:55 - 15:57
    製造できたらどうでしょう
  • 15:57 - 16:00
    最新の技術によって それは可能です
  • 16:00 - 16:02
    例を示します
  • 16:02 - 16:04
    私も関係している会社ですが
  • 16:04 - 16:06
    免疫系を活性化するウイルスのH型突起の
  • 16:06 - 16:08
    ある特別な部分を発見しました
  • 16:08 - 16:10
    この部分を切り取って
  • 16:10 - 16:13
    別のバクテリアの先端に付ければ
  • 16:13 - 16:15
    すさまじい免疫反応を起こすので
  • 16:15 - 16:17
    非常に強力な抗インフルエンザ剤ができます
  • 16:17 - 16:19
    このワクチンは非常に小さく
  • 16:19 - 16:22
    ありふれた大腸菌の中で増殖できます
  • 16:22 - 16:25
    ご存知のようにバクテリアの繁殖は早く
  • 16:25 - 16:27
    ヨーグルトを作るようなものです
  • 16:27 - 16:30
    そこで 数箇所の工場で数週間もあれば
  • 16:30 - 16:32
    豚由来インフルエンザ用のワクチンを
  • 16:32 - 16:34
    全世界で必要な分 製造できます
  • 16:34 - 16:37
    卵を使わないので
    今の何分の一かのコストです
  • 16:37 - 16:42
    (拍手)
  • 16:42 - 16:45
    そんな新しいワクチン技術の比較表です
  • 16:45 - 16:48
    劇的に改善した製造技術と
  • 16:48 - 16:50
    大幅なコスト低減に加えて
  • 16:50 - 16:53
    今 説明した大腸菌の手法では
  • 16:53 - 16:56
    期間も短縮出来ます―
    命が救えるということです
  • 16:56 - 16:58
    発展途上国は
  • 16:58 - 17:01
    現在のインフルエンザ対応から
    取り残されがちなため
  • 17:01 - 17:04
    これらの新技術には期待しており
  • 17:04 - 17:06
    西側諸国より進んでいます
  • 17:06 - 17:08
    インドやメキシコその他の国ですでに
  • 17:08 - 17:10
    インフルエンザワクチンの試作が始まり
  • 17:10 - 17:12
    これらのワクチンが初めて実用されるのも
  • 17:12 - 17:14
    これらの国かもしれません
  • 17:14 - 17:17
    この新しい技術は大変効率的で
  • 17:17 - 17:19
    比較的費用もかからないので
  • 17:19 - 17:21
    流通手段を開発できれば
  • 17:21 - 17:24
    何十億もの人に
    命を救うワクチンを届けられます
  • 17:24 - 17:27
    この次はどうなるか考えてみて下さい
  • 17:27 - 17:28
    新しい伝染病は
  • 17:28 - 17:30
    数年ごとに
  • 17:30 - 17:32
    出現したり再出現したりしています
  • 17:32 - 17:34
    いつか もしかしたら近いうちに
  • 17:34 - 17:37
    我々皆を脅かすウイルスが現れるでしょう
  • 17:37 - 17:39
    そのとき何百万人も亡くなる前に
  • 17:39 - 17:41
    素早く対応できるでしょうか?
  • 17:41 - 17:44
    幸いにも 今年のインフルエンザは
    比較的軽症でした
  • 17:44 - 17:46
    「幸いにも」と言った理由のひとつは
  • 17:46 - 17:49
    発展途上国では予防接種を受けた人は
  • 17:49 - 17:51
    ほとんどいなかったからです
  • 17:51 - 17:54
    これまでの研究努力を継続するという
  • 17:54 - 17:56
    政治的 財政的先見があるなら
  • 17:56 - 17:59
    これらをワクチン学の
    新しいツールと共に使いこなし
  • 17:59 - 18:01
    世界の皆に十分なワクチンを
  • 18:01 - 18:03
    安価に製造できるようにして
  • 18:03 - 18:06
    健康で生産的な生活を
    保証することができます
  • 18:06 - 18:10
    インフルエンザで
    年に50万人も亡くすことはないのです
  • 18:10 - 18:11
    エイズで年に200万人も
  • 18:11 - 18:13
    亡くすことはないのです
  • 18:13 - 18:15
    貧しい弱者が
  • 18:15 - 18:18
    伝染病に脅かされる必要はないのです
  • 18:18 - 18:20
    ―もちろん他の人たちもです
  • 18:20 - 18:23
    バクラフ・スミルが言っている
  • 18:23 - 18:26
    生命の大断絶の代わりに
  • 18:26 - 18:28
    生命が継続して行くことを
  • 18:28 - 18:30
    保証することができるのです
  • 18:30 - 18:32
    今 世界に必要なのは新しいワクチンです
  • 18:32 - 18:34
    これは実現できることなのです
  • 18:34 - 18:36
    ありがとうございました
  • 18:36 - 18:40
    (拍手)
  • 18:45 - 18:46
    ありがとう
  • 18:46 - 18:49
    (拍手)
  • 18:53 - 18:54
    ありがとう
  • 18:54 - 18:57
    科学は進んでいますね
  • 18:57 - 19:00
    セス 聞かせてほしいのですが―
    これが実現するのは
  • 19:00 - 19:03
    どれぐらいの時間スケールで考えていますか
  • 19:03 - 19:06
    HIVの方から伺いましょう
  • 19:06 - 19:09
    この革命的ワクチンは
    現在存在して 使えるのですか
  • 19:09 - 19:11
    ワクチンは今すぐにでも実用化します
  • 19:11 - 19:14
    ワクチンが人体で働くことは示されましたので
  • 19:14 - 19:15
    今や問題は
  • 19:15 - 19:17
    その改良だけです
  • 19:17 - 19:19
    人がこの種の抗体を作れることは
    わかっています
  • 19:19 - 19:21
    どうすればよいか 方法が分かれば
  • 19:21 - 19:23
    ワクチンができるのです
  • 19:23 - 19:25
    そしてその問題についての手がかりも
  • 19:25 - 19:27
    得られつつあるという証拠があがっています
  • 19:27 - 19:29
    ゴールに向かって全速で進んでいます
  • 19:29 - 19:32
    少なくとも5年はかかるという感じですか?
  • 19:32 - 19:33
    だいたい皆さん10年と言います
  • 19:33 - 19:35
    ずっと あと10年したらと
    言われ続けています
  • 19:35 - 19:37
    科学的なイノベーションに
  • 19:37 - 19:39
    時間の線引きは難しいですね
  • 19:39 - 19:42
    ただ 払われた労力に
    結果は現れてきています
  • 19:42 - 19:45
    では万能のインフルエンザワクチンは
    どうですか?同じような状況ですか?
  • 19:45 - 19:47
    インフルエンザはまた違います こちらは
  • 19:47 - 19:50
    今すぐ投入できる 優れた実用的な技術が
  • 19:50 - 19:52
    いくつも見いだされていると思います
  • 19:52 - 19:54
    見通しも良さそうです
  • 19:54 - 19:57
    問題は 従来の技術に
    開発の主眼を置いてきたことです
  • 19:57 - 19:59
    そちらのほうが理解されていたからです
  • 19:59 - 20:02
    アジュバントを使うこともできます
  • 20:02 - 20:04
    これはヨーロッパ方式で
    ワクチンを薄められれば
  • 20:04 - 20:06
    より多くの人に行き渡ります
  • 20:06 - 20:09
    ただ マイケル・スペクターが述べたように
  • 20:09 - 20:12
    ワクチン反対派は
    アジュバント使用に抵抗しています
  • 20:12 - 20:14
    マラリアはもっと遅れていますか?
  • 20:14 - 20:16
    いいえ マラリアにも
  • 20:16 - 20:19
    初期試験で効果の見られたワクチン候補があり
  • 20:19 - 20:21
    今では第III相の治験に進んでいます
  • 20:21 - 20:24
    たぶん 完全に有効なワクチンでは
    ありませんが 進展しています
  • 20:24 - 20:26
    セス 多くの人の仕事は
  • 20:26 - 20:28
    毎月何か成果が出て
  • 20:28 - 20:31
    手応えを感じられるものが多いのですが
  • 20:31 - 20:33
    研究チームの皆さんと 十年以上もこの研究を
  • 20:33 - 20:36
    続けられていることに
    敬意を表したいと思います
  • 20:36 - 20:39
    あなた方のような人が必要なんです
    ありがとう
  • 20:39 - 20:40
    ありがとう
  • 20:40 - 20:44
    (拍手)
Title:
HIVとインフルエンザ ー ワクチンの戦略
Speaker:
セス・バークレー
Description:

ワクチンの設計や製造、流通についての知見が進歩して、世界の脅威である AIDSやマラリアやインフルエンザの根絶に近づいていることをセス・バークレーが語ります。

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Video Language:
English
Team:
closed TED
Project:
TEDTalks
Duration:
20:45
Yasushi Aoki edited Japanese subtitles for HIV and flu -- the vaccine strategy
Yasushi Aoki edited Japanese subtitles for HIV and flu -- the vaccine strategy
Natsuhiko Mizutani added a translation

Japanese subtitles

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