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経済的価値とは何か、そして誰がそれを生み出すのか?

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    価値の創造
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    富の創造
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    これらは非常に強力な言葉です
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    あなたが連想するのは
    金融、イノベーション
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    創造性などかもしれません
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    しかし 誰が価値を創造しているのでしょう
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    これは同時に 価値を創造しない人々がいると
    暗に言っていることになります
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    それは誰?
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    カウチポテトの人達?
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    価値を収奪する人達?
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    価値を破壊する人々
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    実はこの問いに答えるためのちゃんとした
    価値の理論が必要なんです
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    私は経済学者として皆さんに
    ここで暴露してしまうのですが
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    私達は現在この問いに関して
    道を迷ってしまっています
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    そんなに驚かないでください
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    私達はそれを議論するのを
    止めてしまったのです
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    価値の創造と
    価値の収奪の違いは何か
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    生産的な活動と非生産的な活動の
    違いは何かと
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    厳しく問うことが無くなりました
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    この問題をある文脈で考えてみましょう
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    2009年のこと
    1929年の大恐慌に次いで
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    現代における最も大きな
    金融危機が起こってから
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    およそ1年半後に
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    ゴールドマン・サックスの
    CEOはこう言いました
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    「ゴールドマン・サックスの社員達は
    世界で最も生産性が高い」
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    経済学者にとって
    生産性や生産的であることは
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    密接に価値と関わっています
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    品物を生産する時
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    必要な分だけ効率的に生産します
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    生産するものは世間が必要として
    欲しがり 購入するものです
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    さて この銀行が 他の多くの銀行と共に
    金融危機を引き起こした
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    わずか1年後に
    よくもこんなことが言えたものです
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    ここでゴールドマン・サックスを
    名指ししている理由は
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    同社が 住宅ローンを中心に
    それ以外の分野も含めた―
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    かなり問題のある金融商品を
    生み出したために危機が生じ
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    何千という人々が住む家を失ったからです
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    2010年9月の1カ月間だけで
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    12万人が金融危機の結果
    差し押さえにより 家を失いました
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    2007年から2010年の間に
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    880万人の人々が職を失いました
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    当時 銀行はアメリカ国民の税金で
    救済しなければならず
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    計100億ドルが投入されました
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    納税者が「自分は価値の創造者だ」と
    声高に主張することはなくても
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    「最も価値を創造して」いて
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    「生産的な会社」の投資銀行を
    救済したのだから
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    そう主張してみるべきでした
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    さてこれから
    過去を振り返って考えてみましょう
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    どうして道を誤ったのかと
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    全く一体どのようにして
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    あのような言説が発せられたのか
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    これはちょっとした軽口などではなく
    正式な場で真剣に言われたんですから
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    まず 皆さんと一緒に300年前の
    経済学の思考を見ていこうと思います
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    経済用語が実際に
    検証されていた頃です
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    それが正しかったか間違っていたかは別として
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    自分が「価値の創造者」「富を生み出す者」
    などと勝手に主張できなかったし
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    経済学者達の間で
    議論が多く交わされていました
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    私が言いたいのは 私達が道を誤り
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    「富の創造」や「価値」の意味が
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    非常に意味の薄い恣意的なものになり
  • 2:45 - 2:47
    簡単に使われ過ぎているということです
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    では始めます
    これを言うのは気が引けますが
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    300年前のこと
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    300年前 興味深いことに
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    社会はまだ農業に根差していました
  • 2:58 - 3:01
    そして「重農主義者」と言われた
    当時の経済学者達は
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    主に農業に着目していました
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    「価値はどこから生まれているんだろう?」
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    彼らは農業に目を向けました
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    そして彼らは世界で最初の
    スプレッドシートである
  • 3:13 - 3:15
    「経済表」を編み出しました
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    これはこの学派のリーダー
    フランソワ・ケネーによるもので
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    とても興味深いものでした
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    「農業生産は価値創造の源である」と
    主張しただけではないのです
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    生み出された価値がどうなるかに
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    着目したからです
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    「経済表」は
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    ここに単純化してみましたが
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    社会の階級を3つに分類しました
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    農民は価値を創造するので
    「生産的階級」と呼ばれました
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    その他の階級はこれらの価値を
    移動させているだけなのですが
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    それも有用で必要なことでした
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    それを行ったのが商人です
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    真ん中の階級は「所有階級」と呼ばれました
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    この人たちは既存の資産である
    土地について
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    農民から地代を徴収していました
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    また右の階級は「不生産階級」と呼ばれました
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    この言葉はその意味を考えてみると
    ショッキングなものです
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    地主たちへ流れる資金が多過ぎれば
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    経済システムの再生産性が
    危うくなるということです
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    図にある矢印は 当時のシミュレーションを
    表しています
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    スプレッドシートやシミュレーターを使って
    ビッグデータを用いていたんですね
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    彼らは様々なシナリオの下で
    どうなるかをシミュレーションしていました
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    土地の生産性を更に高めるような
    富の再投資を怠り
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    別の目的で吸い上げてしまうと
    どうなるか
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    それか「所有者」達に
    富が集まり過ぎたらどうなるか?
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    その後1800年代に起こったのは
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    農業革命ではなく
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    次の産業革命でした
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    古典派経済学者達
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    アダム・スミスやデヴィッド・リカード
    革命家のカール・マルクスは
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    「価値とは何ぞや?」と問いました
  • 4:42 - 4:45
    でもこれは自然なことで
    なぜなら彼らが生きたのは
  • 4:45 - 4:48
    機械や工場が興隆してきた
    産業革命の時代でしたから
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    彼らは「産業労働」が答えだと言い
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    そこで「労働価値説」が生まれました
  • 4:53 - 4:55
    ここでも主題は再生産に置かれました
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    生産された価値がどうなるか
    それが搾取されていないかを
  • 4:58 - 5:00
    大いに懸念したのです
  • 5:00 - 5:02
    『国富論』の中でアダム・スミスは
  • 5:02 - 5:05
    素晴らしく的を得た
    「ピン工場」の分業の例えを紹介しました
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    ピン作りの工程を
    すべて1人の工員が担っていたら
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    1日に1本のピンしか作れないだろう
  • 5:11 - 5:15
    でも工場生産と分業に投資すれば
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    ―これは当時は新しい考え方で
  • 5:16 - 5:19
    今ならこれを「組織革新」と言うでしょう―
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    そうすれば生産性と
  • 5:21 - 5:23
    国家の成長を高め
    富を増やせるだろうと
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    それでスミスは
    分業に特化した技能を身につけた
  • 5:25 - 5:28
    10人の労働者の人材育成に投資したら
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    一日4,800本のピンが生産できることを
    示しました
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    これに対して 一人が
    全行程を担うなら1日1本です
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    スミスとその仲間の古典派経済学者は
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    活動を生産的なものと非生産的なものに
    分けました
  • 5:40 - 5:41
    (笑)
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    非生産的な活動とは―
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    大半の皆さんはリストに入っているから
    笑ってしまいますね
  • 5:46 - 5:48
    (笑)
  • 5:48 - 5:50
    弁護士!スミスの弁護士についての判断は
    正しかったと思います
  • 5:50 - 5:54
    教授も色々な知識人達も
    生産的ではない
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    弁護士、教授、店主、音楽家が
    挙げられていますね
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    オペラ嫌いだったのは明らかね
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    本を書く前の晩にでも
    人生で最もひどいオペラを
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    観たのでしょう
  • 6:03 - 6:05
    リストの中には少なくとも3種類の
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    オペラに関係する仕事があります
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    でもこれは「この職業に就いてはいけない」
    ということではなく
  • 6:10 - 6:12
    もし 彼らが鍵と考えた
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    価値創造の源である産業労働の
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    生産性を上げようとせずに
  • 6:18 - 6:21
    経済の一部だけを肥大させ過ぎてしまったら
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    どうなるか という考えを表したものでした
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    これが正しいか間違っているかは問題ではなく
    ただまさに
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    議論されていたのです
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    こうしたリストを作ることで
  • 6:29 - 6:33
    彼らは熟考を余儀なくされました
  • 6:33 - 6:36
    議論のかなめは
    重農主義と同様に
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    生産の客観的条件でした
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    階級闘争も考慮しました
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    賃金についての理解は
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    資本と労働力間の交渉力―
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    客観的な 言うなれば力関係を
    考慮したものでした
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    そして繰り返しますが
    工場、機械、分業労働、農耕地
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    それに何が起きているかを考察しました
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    そして大革命が起きました
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    これは経済学の授業では
    あまり教えられていませんが
  • 7:02 - 7:05
    現在の「新古典派経済学」と呼ばれる
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    経済学を支える考え方に起こった
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    大きな革命は
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    ロジックが完全に入れ変わったことでした
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    2通りの意味で変わったのですが
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    焦点が客観的条件から
    主観的な条件に移ったこと
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    こういうことです
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    「客観的」とはこれまで話した通りです
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    「主観的」とは
    様々な個人がそれぞれ独自の選択をする
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    意味での「主観」が注目されたということです
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    労働者は労働よりも
    余暇を最大にできるように選択します
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    消費者達は幸福と同義の
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    「効用」を最大化し
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    企業は利益を最大化しようとします
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    この背後にある考え方はそれらを総合したら
    [農業、労働、選択]
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    それが価格すなわち
    [農業、労働、選択]
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    均衡価格をはじき出す
  • 7:47 - 7:50
    ステキな需要供給曲線を
  • 7:50 - 7:51
    描くというものです
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    均衡価格と呼ばれるのは
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    ニュートン力学において
    重心にはたらく力の
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    つりあいから得られる方程式の解と
    同じように導いたものだからです
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    でも2つめのポイントは
    均衡価格すなわち「価格」は
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    価値を表すということです
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    こうして 客観から主観へという
    革命のみならず
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    論理構成も変わりました
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    何が価値であるとか
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    価値がどう決まるかとか
    経済の再生産可能性を論じて
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    理論的な価格を導いていたのが
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    逆転しました
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    価格と交換の理論が価値を
    明らかにするというものに変わりました
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    これは大きな変化でした
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    学術的な思考実験として
    面白いばかりでなく
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    これは経済成長の計測のしかたにも影響し
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    いかに経済を刺激し
    経済活動の一部をその他のものより
  • 8:35 - 8:36
    活性化させるやり方や
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    いかにある経済活動に他よりも多くの
    報酬を与えるかに影響します
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    そして人々を考えさせることにもなります
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    自分が価値を創造する側だったら
    朝 幸せな気持ちで起きられるかどうか
  • 8:45 - 8:48
    自分が決定権を持たない
    価格決定のしくみをどう思うか
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    これが私達のアウトプット(産出)を
    どう考えるかに影響すると言いましたが
  • 8:53 - 8:55
    例えばGDPに
    価格がつけられた活動だけを
  • 8:55 - 8:57
    計上したら
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    おかしなことになってしまいます
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    フェミニスト経済学者達や
    環境経済学者達は
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    これについて多くの論文を発表しています
  • 9:04 - 9:05
    例を紹介しますね
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    あなたがベビーシッターと
    結婚するとGDPは低下します
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    やってみようと思わないでくださいね?
  • 9:13 - 9:16
    以前は対価が支払われていた
    シッターの仕事を同じように継続しても
  • 9:16 - 9:17
    対価がなくなりますから
  • 9:18 - 9:19
    (笑)
  • 9:19 - 9:21
    環境汚染で GDPは成長します
  • 9:21 - 9:23
    やめておいて下さい
    経済に貢献はしますが
  • 9:23 - 9:26
    汚染の後始末に対価が支払われるだけです
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    金融分野でも面白いことが
    起きました
  • 9:29 - 9:31
    金融についての GDP の問題です
  • 9:32 - 9:34
    このことを多くの経済学者が
    知らないということに
  • 9:34 - 9:36
    よく驚くのですが
  • 9:36 - 9:37
    1970年まで
  • 9:37 - 9:41
    金融分野のほとんどは
    GDPに含まれていませんでした
  • 9:41 - 9:44
    間接的に おそらく気づかないうちに
  • 9:44 - 9:46
    重農主義の視点に支配されたままだったのです
  • 9:46 - 9:50
    何かを移動させているだけで 実質
    何も生産していないという見方です
  • 9:50 - 9:54
    そして価格が明示的な
    活動だけが含まれていました
  • 9:54 - 9:58
    例えば 住宅ローンを借りれば
    手数料が課されますね
  • 9:58 - 10:01
    それはGDPと国民所得
    生産勘定に計上されます
  • 10:01 - 10:04
    しかし 例えば
    金融収支は計上されませんでした
  • 10:04 - 10:08
    銀行がローンを貸し出したときの金利と
  • 10:08 - 10:11
    預金に払う利息の差額として生じる
    銀行の所得のことです
  • 10:11 - 10:12
    これは含まれませんでした
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    それで会計に携わる人たちが
    データを見はじめると
  • 10:16 - 10:18
    融資の規模や
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    金融収支が
  • 10:20 - 10:22
    かなり増大しているとわかったので
  • 10:22 - 10:24
    これを「バンキング・プロブレム」と
    呼びました
  • 10:24 - 10:27
    国連の定める 国民経済計算体系 SNA を
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    議論するメンバーも
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    これを「バンキング・プロブレム」と
    呼びました
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    「まいったぞ これは巨額で
    計上もされてないぞ」といった感じです
  • 10:34 - 10:38
    しかし 一旦立ち止まって
    経済表を作ってみたり
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    根本的な問いを発して
  • 10:41 - 10:44
    古典派が行ったように
    経済の様々な活動における
  • 10:44 - 10:47
    分業の実態を考えてみようとする代わりに
  • 10:47 - 10:50
    単に 金融収支に名前を与えました
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    商業銀行の活動を「金融仲介」と呼び
    国民所得・生産勘定(NIPA)に
  • 10:53 - 10:55
    計上しました
  • 10:55 - 10:59
    投資銀行の活動は
    「リスクテイク活動」と呼ばれ
  • 10:59 - 11:00
    それもNIPAに計上されました
  • 11:00 - 11:02
    きちんと説明すると
  • 11:02 - 11:04
    赤い線は 金融仲介業全体であり
  • 11:04 - 11:07
    青い線の他の産業界よりも
    いかに速く
  • 11:07 - 11:10
    成長を遂げていたのかを示しています
  • 11:11 - 11:13
    これは非常に大変なことでした
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    こんにち私達が知るように
    実際に起ったことは
  • 11:15 - 11:18
    色々な人がこれについて書いていますが
  • 11:18 - 11:19
    このデータはイングランド銀行のもので
  • 11:19 - 11:21
    1970~80年代以降
  • 11:21 - 11:24
    金融業界が行ってきた
    経済活動の多くは
  • 11:24 - 11:27
    自己の資金調達だったと
    いうことを示しています
  • 11:27 - 11:29
    金融機関に対する資金提供です
  • 11:29 - 11:32
    ここで金融機関とは
    金融、保険、不動産です
  • 11:32 - 11:34
    英国の実情としては
  • 11:34 - 11:37
    10~20%の資金が
  • 11:37 - 11:39
    実体経済である産業界へ向けられ
  • 11:39 - 11:42
    エネルギー分野や医薬品や
  • 11:42 - 11:44
    IT分野へ投資されますが
  • 11:44 - 11:48
    残りのほとんどは「FIRE」と呼ばれる
  • 11:48 - 11:50
    金融、保険、不動産へ
    戻っていきました
  • 11:50 - 11:52
    「FIRE 」はぴったりな略称ですね
  • 11:52 - 11:56
    これは大変興味深いことです
  • 11:56 - 11:59
    金融が良いとか悪いとか言う話ではなく
  • 11:59 - 12:00
    金融仲介業は名前を
  • 12:00 - 12:03
    与えられなければならないほど
    利益をあげていたのですから
  • 12:03 - 12:05
    それが「どうなっているんだろう?」と
  • 12:05 - 12:08
    立ち止まって実態を
    考えようとしなかったのは
  • 12:08 - 12:10
    残念な機会の損失でした
  • 12:10 - 12:14
    同様に 実体経済、産業界では
    何が起こっていたのでしょうか
  • 12:15 - 12:21
    価格や株価の重視が
  • 12:21 - 12:24
    再投資の大きな問題を生み出しました
  • 12:24 - 12:28
    すなわち 重農主義と
    古典派が 気にしていたように
  • 12:28 - 12:31
    経済で創出された価値のどれほどが
    結局は再投資にまわされるのかという
  • 12:31 - 12:34
    問題です
  • 12:34 - 12:38
    そういう訳で こんにち
    金融化が進み過ぎた業界があり
  • 12:38 - 12:41
    そこではますます利益と金融収支が
  • 12:41 - 12:44
    生産や人材教育や研究開発へ
  • 12:44 - 12:48
    再投資されない傾向になり
  • 12:48 - 12:52
    単に株価の上昇をもくろむ
  • 12:52 - 12:55
    自社株買いなどに回されていき
  • 12:55 - 12:57
    それは結果として経営層の懐に入ります
  • 12:57 - 12:59
    自社株の買い戻し自体は
    悪いことではないのですが
  • 12:59 - 13:01
    その仕組みが破綻してしまっています
  • 13:01 - 13:03
    この数字は
    [4兆ドル 買い戻し 3.1兆ドル 配当]
  • 13:03 - 13:07
    過去10年間でS&P500社のうち466社が
    [4兆ドル 買い戻し 3.1兆ドル 配当]
  • 13:07 - 13:11
    4兆ドル以上を自社株買いに
    つぎ込んだことを表しています
  • 13:11 - 13:15
    こうした動きをマクロ経済レベルで
    合算してわかることは
  • 13:15 - 13:17
    事業投資を合算したときに
  • 13:17 - 13:19
    GDPの中で
  • 13:19 - 13:23
    事業投資額の占める割合が
    減ってきているのが分かります
  • 13:23 - 13:24
    これは問題です
  • 13:24 - 13:29
    さて スキル育成や雇用創出を考えると
    これは大問題です
  • 13:29 - 13:31
    最近こう言われているのを耳にしたでしょう
  • 13:31 - 13:33
    「ロボットが職を奪うのだろうか?」
  • 13:33 - 13:36
    機械化は何世紀も職を奪ってきました
  • 13:36 - 13:40
    でも利益が生産に再投資されている限り
    新たな雇用が創出されたので
  • 13:40 - 13:41
    それは問題ではありませんでした
  • 13:42 - 13:45
    ですが 再投資されないということは
    とても危険なことです
  • 13:45 - 13:50
    医薬品業界での
    薬の価格の決め方を例にとると
  • 13:50 - 13:53
    経済的価値が
    社会の共同活動の上に得られたという
  • 13:53 - 13:57
    客観的な条件を
    無視していることに気づきます
  • 13:57 - 14:00
    様々な主体が活動している領域で
  • 14:00 - 14:04
    公共部門も民間も そして非営利団体などの
    第三セクター組織も
  • 14:04 - 14:05
    価値を作っているときに
  • 14:05 - 14:07
    こうした領域で価値の計測は
  • 14:07 - 14:10
    価格の決定によって行われます
  • 14:10 - 14:11
    価格は価値を表します
  • 14:11 - 14:12
    ですから 最近
  • 14:12 - 14:17
    ある抗生物質の価格が
    一晩で400%も跳ね上がった時
  • 14:17 - 14:18
    その製薬会社のCEOは聞かれました
  • 14:18 - 14:21
    「どうしてこんなことを?
    その薬を必要な人もいるのに不公平だ」
  • 14:21 - 14:24
    彼はこう答えました
    「私たちは価格を
  • 14:24 - 14:27
    市場の動きに委ねるよう
    道義的に要請されています」
  • 14:27 - 14:30
    この発言は 例えばアメリカでは
  • 14:30 - 14:34
    米国国立衛生研究所(NIH)が
    毎年300億ドルの公費を
  • 14:34 - 14:37
    医薬品の研究開発に充てているのを
    全く考慮に入れていません
  • 14:37 - 14:40
    ですから こうした客観的条件に対する
    認識は不足したまま
  • 14:40 - 14:43
    価値の評価をシステムで決まる価格に
    委ねてしまっているのです
  • 14:43 - 14:46
    これはとても面白いうえに
  • 14:46 - 14:47
    単なる学術的な思考実験ではありません
  • 14:48 - 14:51
    これは私たちのアウトプットの
    測り方として とても重要です
  • 14:51 - 14:53
    経済をどうかじ取りするか
  • 14:53 - 14:55
    自分が生産的だと感じるかどうか
  • 14:55 - 14:58
    人々がどのセクターに入り、働き、貢献し
  • 14:58 - 15:01
    それを誇りに思うかということは
    とても重要です
  • 15:02 - 15:04
    ブランクファイン氏の発言に立ち戻ると
  • 15:04 - 15:06
    彼の発言は驚くものではありません
  • 15:06 - 15:07
    彼は正しかったんです
  • 15:07 - 15:10
    私達が生産や生産性や経済価値を
  • 15:10 - 15:11
    測っているやり方から見れば
  • 15:11 - 15:14
    ゴールドマン・サックス社員は
    最も生産性が高いのですから
  • 15:14 - 15:16
    実際に彼らの給与は最も高いのです
  • 15:16 - 15:18
    彼らの労働の価格は彼らの価値を
    表しているといえます
  • 15:18 - 15:21
    でもこれはもちろん同語反復ですね
  • 15:21 - 15:23
    ここで本当に考え直す必要があります
  • 15:24 - 15:26
    アウトプットを
    測る方法を見直すべきです
  • 15:26 - 15:28
    世界中にいくつか驚くべき実験があります
  • 15:28 - 15:33
    例えばニュージーランドでは国民総幸福指数を
  • 15:33 - 15:37
    ブータンでは国民総幸福量を測っています
  • 15:37 - 15:41
    ただ新しい指数を
    加えてすむ問題ではありません
  • 15:41 - 15:42
    立ち止まる必要があり
  • 15:42 - 15:44
    そして今がその時だと思います
  • 15:44 - 15:48
    金融危機から
    ほぼ何も変わっていないことを考慮すると
  • 15:48 - 15:51
    価値の収奪と価値の創造を
  • 15:51 - 15:53
    混同しないようにしなければいけません
  • 15:53 - 15:56
    計測項目を追加するだけではなく
    何が含まれているかを吟味して
  • 15:56 - 16:00
    例えば賃料・レントと利益とを
    混同しないように注意しなければなりません
  • 16:00 - 16:03
    古典派経済学では賃料を
    不労所得とみなしました
  • 16:03 - 16:06
    こんにち 経済学でいうレントは
  • 16:06 - 16:09
    競争価格に対する不完全性に由来する
    過剰利益であり
  • 16:09 - 16:13
    情報の非対称性を無くせば
    競争の中で消え去るべきものです
  • 16:13 - 16:16
    第2に 諸々の活動は
    古典派が「生産境界」と呼ぶ
  • 16:16 - 16:19
    アウトプットを計測する基準の内側に
    おさめてしまうことができます
  • 16:19 - 16:21
    これを巨悪 金融業界対
    善良な業界のような
  • 16:21 - 16:24
    「自分達 対 奴ら」という構図で
    考えてはいけません
  • 16:24 - 16:26
    私たちは金融を改革できるはずです
  • 16:26 - 16:29
    金融恐慌後 幾つかの機会を
    見逃しました
  • 16:29 - 16:31
    金融取引税を取り入れ
    短期的な投資よりも
  • 16:31 - 16:35
    長期的な投資を促すことも
    できたはずです
  • 16:35 - 16:37
    でもそれを世界的な合意にはしませんでした
  • 16:37 - 16:39
    これは今からでも変えられます
  • 16:39 - 16:41
    新しい公的な機関を作ることもできます
  • 16:41 - 16:45
    世界には様々な公的金融機関があります
  • 16:45 - 16:49
    忍耐強く 長期間にわたる融資を約束して
  • 16:49 - 16:53
    中小企業の成長を助けインフラ構築や
    イノベーションを後押しするものもあります
  • 16:53 - 16:55
    でもこれはアウトプットだけの
    問題ではありません
  • 16:55 - 16:57
    アウトプットのスピードだけの問題でも
    ありません
  • 16:58 - 16:59
    私達は社会全体で 一旦立ち止まり
  • 16:59 - 17:02
    一体どんな価値を創っているのかと
    問い直してみる必要があります
  • 17:02 - 17:09
    終わりに
    今週は月面着陸の50周年ですね
  • 17:09 - 17:11
    月面着陸には公的セクターも民間セクターも
  • 17:11 - 17:14
    投資とイノベーションに
    あらゆる手段を講じる必要がありました
  • 17:14 - 17:16
    航空技術に関する分野だけではなく
  • 17:16 - 17:20
    栄養学や材料科学などへの
    投資も行われました
  • 17:20 - 17:24
    その過程でたくさんの間違いもありました
  • 17:24 - 17:27
    例えば政府は
    ボトムアップの開発を進めるために
  • 17:27 - 17:30
    政府調達を全力で行い
  • 17:30 - 17:32
    失敗に終わったものもありました
  • 17:32 - 17:35
    それは価値創造の一部を担う
    失敗だったのか
  • 17:35 - 17:36
    それとも単なる失敗でしょうか
  • 17:36 - 17:40
    あるいは どうやって実験の機会を生み出し
  • 17:40 - 17:42
    試行と失敗と失敗と失敗を
    後押しできるでしょう?
  • 17:42 - 17:45
    AT&Tの研究開発部門であるベル研究所は
  • 17:45 - 17:49
    政府が勇敢だった時代に生まれました
  • 17:49 - 17:54
    ベル研は AT&T が独占的な地位を
    維持するために
  • 17:54 - 17:58
    利益を実体経済へと
    再投資し
  • 17:58 - 17:59
    通信分野に限ることなく
  • 17:59 - 18:01
    イノベーションを追求するよう
    促しました
  • 18:01 - 18:03
    これがベル研究所初期の歴史です
  • 18:03 - 18:07
    ではどうしたら
    再投資に関わる新たな条件を定め
  • 18:07 - 18:09
    気候変動のように
  • 18:09 - 18:13
    巨大な課題に向けた新しい種類の価値へ
  • 18:13 - 18:14
    投資していけるでしょう?
  • 18:14 - 18:16
    これは鍵となる問いです
  • 18:16 - 18:18
    いま一度考えてみてください
  • 18:18 - 18:22
    正味現在価値や
    コストベネフィットの分析をして
  • 18:22 - 18:24
    一世代のうちに
    月と往来するという挑戦に
  • 18:24 - 18:29
    着手すべきかどうかを決めようとしたら
  • 18:29 - 18:32
    こんな計画は開始しなかったでしょう
  • 18:32 - 18:34
    ありがたいことに
  • 18:34 - 18:36
    私は経済学者なので皆さんに
    こう言えます
  • 18:36 - 18:38
    価格だけが価値を表すのではありません
  • 18:38 - 18:39
    ありがとうございました
  • 18:39 - 18:41
    (拍手)
Title:
経済的価値とは何か、そして誰がそれを生み出すのか?
Speaker:
マリアナ・マッツカート
Description:

誰がどこから富を生み出し、何がそれを破壊するのでしょう?
世界経済を深く掘り下げるトークで、マリアナ・マッツカートは私達が「価値とは何か」を見失ったこと、そして資本主義が大胆で、イノベーティブで、持続可能な全員のための未来を築くものへと変化するために、現在の金融システムを見直すべき理由を説明します。

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Video Language:
English
Team:
closed TED
Project:
TEDTalks
Duration:
18:55
  • 間違ってCompleteを押してしまいましたが、まだレビューに出す段階ではないので差し戻しをお願いします。
    塚本

Japanese subtitles

Revisions