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修行と伝統を楽しむ | 引網 康博 | TEDxHimi

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    私は 富山県で
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    来年100周年を迎える和菓子屋の
    4代目をしています
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    業界で重鎮と言われるような師匠について
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    伝統的な和菓子について学ばせて頂きました
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    今でも尊敬している師匠です
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    早速なんですけれども
    スライドが出てますけれども
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    お菓子を1つ 作ってみたいと思います
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    その場で作るというのは
    ちょっとなんかハードルが高いですけれども
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    やらせて頂きます
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    非常に小さい 手の中で作る品を
    やっておりますので
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    なかなか難しい所も
    あるかと思うんですけれども
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    今はですね
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    自分の とても大事なデザインを作っています
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    見えますでしょうか?
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    これは 招き猫です
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    (拍手)
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    こういうデモンストレーションの
    仕事をさせて頂くと
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    よく「こういう和菓子職人になるには
    何年ぐらいかかるんですか」と尋ねられます
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    ものづくりをされたり
    表現をするようなお仕事をされている方は
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    よくされる質問ではないかと
    思うんですけれども
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    こういう形を綺麗に整えるだけであれば
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    器用な方でしたら 2〜3年もあれば
    ある程度のところまではいけると思います
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    ただ その質問に対して私は
    「10年かかります」という風にお答えします
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    その理由の大きなひとつは
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    和菓子を作る材料は
    豆であったり 米 芋
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    全て農作物が中心となっています
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    農作物はその年の作柄によって
    豊作もあれば不作もあります
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    非常に良い状態のものが入る場合と
    あまり良くない状態のものが入る年と
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    さらにその作物が採れてから
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    1ヶ月 3ヶ月 半年と経っていくと
    状態はどんどん変わっていきます
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    そういうものに対して
    毎年チャレンジをして
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    より良いものを作ろうとして 挑んでいく
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    1年で1回 10年やって
    やっと10回それをすることができます
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    ですので 形を整えるだけが
    こういう和菓子の技術ではなくて
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    その 農作物と向き合えるだけの
    技術を手に入れるためには10年
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    そんな風に考えています
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    近年はですね
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    結構こういうお菓子の実演を
    評価して頂いて
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    いろんなイベントの会場で
    実演させて頂くんですけれども
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    ある時 台湾に呼んで頂いて
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    皆さんの前で
    日本の伝統的な季節の桜ですとか
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    桔梗 菊 色々なお花を作ってみました
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    でも 気候風土も違いますし
    咲くお花も全然違うので
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    なにかこう「 日本の人が
    器用なことをしてるなあ」 ぐらいの
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    まあ 盛り上がってなかったんですね
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    それが非常に僕としては残念で
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    日本の和菓子の面白さを
    伝えようと思ってきたはずが
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    盛り上がっていない
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    通訳の方に
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    「台湾の方は 日本のもので
    何がお好きなんでしょう?」とお尋ねした時に
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    コレクターがいるぐらい
    招き猫が好きだという風に伺いました
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    それで 急遽 現場で考えて作ったのが
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    この招き猫であります
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    これを作り始めてからは
    もう本当に大げさじゃなく
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    私のブースの前が 黒山の人だかりに
    なるぐらい盛り上がりまして
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    すごく その時は良かったなあと
    思ってたんですけども
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    帰りの便の中で
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    僕は伝統を守れるような職人に
    なりたいと思っていたので
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    日本ではこういう変わったものは
    作るまいと心に決めて帰国しました
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    その後も 色々な会場で
    イベントをさせて頂いて
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    いろんなお客様の前で
    お菓子を作りました
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    ある時 めぐりが悪かったのか
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    親御さんの 若いお母さんとお子さん
    そういう組み合わせの方が何回か来られて
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    お子さんは 僕が作ってるお菓子を見て
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    「お花きれい 食べたい」って
    言ってくださるんですけれども
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    親御さんの方は「これはお茶のお菓子だから
    あなたの食べるものじゃないわ」 と言って
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    手を引いて帰って行ったんです
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    そういうことがその日は
    なぜか4回ぐらい重なって
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    また夕方に同じような場面になりまして
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    ちょっといたずら心でというか
    少し悔しさもあったんですけれども
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    この招き猫をはじめて作ってみたんです
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    そうするとお子さんは「あ 猫 猫!」と
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    すごい盛り上がって お母さんも
    和菓子屋の前で「猫 猫」と言ってるから
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    気になって見てくれて「ああ かわいい」と
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    で 2人で猫とお花のお菓子を
    買って帰っていきました
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    買って頂けたことが嬉しいというよりも
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    和菓子 —
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    和菓子の中でも
    比較的とっつきにくいタイプの
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    お茶席菓子として皆さん認知されている
    上生菓子の世界に
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    その親子の おふたりが入ってきてくれた
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    そのことがとても嬉しかったです
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    そういう経験をして思ったのは
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    なにかその 自分が伝統を守りたいと
    そんな風に思って
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    そういう新しいことに挑まないというのは
    何か違うんじゃないか
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    それって何か僕の勝手な
    独りよがりなんじゃないかなあ
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    という風に思い始めてからは
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    お客様のリクエストに即興でお答えして
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    猫だとか ハリネズミとか 犬とか
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    そういう変わったデザインを作れば
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    例えば 歌の歌詞とか 映画の場面とか
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    そういったオーダーを頂いて
    お作りするような
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    もちろん こういう形だけではなくて
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    味であったりとか
    例えばお酒と合わせる
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    そういうことにも
    挑戦させて頂くようになりました
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    皆さん ご存知だと思うんですけれども
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    桜餅 ありますよね
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    春の定番の伝統的な
    お菓子ですけれども
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    あれが 出た時というか
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    発売された当時
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    それは 言葉は悪いんですけれども
    「狂気のお菓子」というか
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    「クレイジーなお菓子」に
    見えたんじゃないかなあという
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    想像をしてしまうんですけれども
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    桜の葉を摘んで 塩漬けにして
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    翌年花の咲く前に 餅に巻いて
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    「桜餅です」
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    結構 相当な大きい
    チャレンジだと思うんです
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    多分 発売された当初
    初日はですね
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    評価してくれる人もいるのかも
    しれないですけれども
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    かなり 批判を浴びたんじゃないか
    という風な気がするんです
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    だけれども そういうチャレンジによって
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    桜餅というお菓子が生まれて
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    僕たちが春になると桜餅を作って
    商売をさせて頂く
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    そう考えた時に 自分は伝統を守りたい
    と言う風に思っていましたけれども
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    それはすごい おこがましいというか
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    なんかこう 伝統に僕らは守られていて
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    その中で 色々なチャレンジを
    しているんじゃないかという風に
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    イメージするようになりました
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    先人が すごいチャレンジをして
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    うまくいったもの いかなかったもの
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    それこそ 血と汗と涙を流して
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    そういったものが
    大きな川のように流れていく
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    そういう伝統というものが
    そういう風なイメージに見えてからは
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    それに守られながら 師匠から教わった
    伝統的な和菓子づくりっていうものを
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    自分のベースにして それに守られながら
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    その川に向かってどんどん挑んでいって
    遊んで 挑みかかっていくような
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    そういう風なことをしていかないと
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    自分の要素なんて 伝統の中に
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    一滴も残らないんじゃないかなって
    いう風に考えるようになりました
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    そう考えてからは
    本当に気持ちが楽になって
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    色々な挑戦に 躊躇せずに
    挑んでいけるように なりました
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    ぼくたちみたいな 伝統的な仕事と
    言われているタイプの仕事ですけれども
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    チャレンジすることに躊躇する必要は
    なかったんだと思います
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    自由に遊べるようになるための修行を
    していたんじゃないかなあ というくらい
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    自分の中で 考えが変わりまして
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    今でもいろいろなお菓子を作っています
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    自分の桜餅が生まれる瞬間を楽しみにして
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    これからも お菓子作りを
    挑んでやっていきたいと思います
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    ありがとうございます
  • 9:47 - 9:49
    (拍手)
Title:
修行と伝統を楽しむ | 引網 康博 | TEDxHimi
Description:

「引網香月堂」四代目店主であるスピーカーは、高校卒業後に東京の製菓学校で学び、卒業後は師匠佐々木勝氏のお店である千葉の「菓匠 京山」にて修業を始めました。四年間の研鑽の後、東京の名店「一炉庵」で修業を重ね、2000年に富山へ戻り、2012年には日本で唯一の和菓子職人認定制度「選•和菓子職」に北陸で初めて認定されました。近年では、首都圏での百貨店イベント、地元富山大学での和菓子講座の講師、台湾・マレーシア現地での和菓子文化のPR活動などで、和菓子の魅力を発信しています。このトークの中で引網氏は「伝統とは何か」また「伝統を守るとはどういう事なのか」について、彼の考えを大きく変化させた出来事を交え紹介しています。
このビデオは、TEDカンファレンスの形式で地元コミュニティが独自に運営するTEDxイベントにおいて収録されたものです。詳しくは http://ted.com/tedx をご覧ください。

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Video Language:
Japanese
Team:
closed TED
Project:
TEDxTalks
Duration:
10:02

Japanese subtitles

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