WEBVTT 00:00:06.841 --> 00:00:11.955 「抗生物質」は 縁の下の力持ちとして 現代医学の多くを可能にしています 00:00:11.955 --> 00:00:15.255 抗生物質は 感染症を完治させるためだけでなく 00:00:15.255 --> 00:00:19.636 手術、化学療法、臓器移植など あらゆることを安全に行うために 00:00:19.636 --> 00:00:21.607 使用されています 00:00:21.607 --> 00:00:23.170 抗生物質がなければ 00:00:23.170 --> 00:00:27.858 日常的な医療処置さえもが 生命を脅かす感染症を引き起こし得ます 00:00:27.858 --> 00:00:30.788 そして私たちは 今 抗生物質の 有効性を失う危機に瀕しています NOTE Paragraph 00:00:30.788 --> 00:00:34.950 抗生物質は 細菌の増殖を防ぐ化学物質です 00:00:34.950 --> 00:00:40.501 残念ながら いくつかの細菌は 現在利用可能なすべての抗生物質への耐性を 00:00:40.501 --> 00:00:42.270 獲得し始めています 00:00:42.270 --> 00:00:46.280 にもかかわらず 私たちは 新しい抗生物質を発見することをやめています 00:00:46.280 --> 00:00:49.673 それでもなお この問題を解決する望みはあります NOTE Paragraph 00:00:49.673 --> 00:00:53.160 しかし まずどうして このような状況になったのでしょうか? 00:00:53.160 --> 00:00:56.534 一般に使用されるようになった 最初の抗生物質は「ペニシリン」で 00:00:56.534 --> 00:01:00.210 1928年に アレクサンダー・フレミングが 発見しました 00:01:00.210 --> 00:01:03.994 1945年 フレミングは ノーベル賞の受賞スピーチの中で 00:01:03.994 --> 00:01:08.707 細菌の抗生物質耐性が奇跡を 台無しにする可能性があると 00:01:08.707 --> 00:01:10.987 警告しました 00:01:10.987 --> 00:01:13.994 彼の予言は当たりました 1940年代 50年代には 00:01:13.994 --> 00:01:17.904 耐性菌がすでに現れ始めたのです NOTE Paragraph 00:01:17.904 --> 00:01:20.234 それ以降 1980年代になるまで 00:01:20.234 --> 00:01:23.746 製薬会社は 多くの新しい抗生物質を発見することで 00:01:23.746 --> 00:01:26.744 耐性の問題に対抗しました 00:01:26.744 --> 00:01:32.232 初め これは大成功し 企業も高い収益を上げました NOTE Paragraph 00:01:32.232 --> 00:01:35.092 そのうちに いくつか変化が起きました 00:01:35.092 --> 00:01:37.532 新しく発見された抗生物質は 00:01:37.532 --> 00:01:41.492 狭域スペクトラムの感染に対してのみ 効果的であることが多いのに対し 00:01:41.492 --> 00:01:44.838 最初の抗生物質は 幅広く適用されてきました 00:01:44.838 --> 00:01:46.812 これ自体は問題ではありませんが 00:01:46.812 --> 00:01:51.072 少量の抗生物質が販売される 可能性を意味し 00:01:51.072 --> 00:01:53.486 収益の低下につながります 00:01:53.486 --> 00:01:57.452 当初 抗生物質は 多量に過剰処方され 00:01:57.452 --> 00:02:01.262 効果のないウイルス感染症に対しても 処方されていました 00:02:01.262 --> 00:02:06.751 過剰処方に対する精査が増え これは良かったのですが売上は減りました 00:02:06.751 --> 00:02:10.381 同時に 製薬会社は 患者が生涯にわたって摂取するような薬の 00:02:10.381 --> 00:02:12.966 開発を始めました 00:02:12.966 --> 00:02:15.626 血圧やコレステロールの治療薬 00:02:15.626 --> 00:02:20.146 後には 抗うつ剤や抗不安剤といった 薬の開発です 00:02:20.146 --> 00:02:24.942 それらは無期限に服薬されるため より大きな収益となるからです NOTE Paragraph 00:02:24.942 --> 00:02:30.789 1980年代半ばまで 新しいクラスの 抗生物質は 発見されませんでした 00:02:30.789 --> 00:02:36.419 しかし 細菌は耐性を獲得し続け 同一種内や 種を超えて他菌種にまで 00:02:36.419 --> 00:02:39.310 遺伝情報を共有することで 00:02:39.310 --> 00:02:41.730 耐性が受け渡されました 00:02:41.730 --> 00:02:46.216 今や 多くの抗生物質への 耐性を持つ細菌が一般的となり 00:02:46.216 --> 00:02:51.946 既存の薬剤すべてに耐性を持つ 菌種が増えてきています 00:02:51.946 --> 00:02:54.334 では これに対して何ができるでしょうか? NOTE Paragraph 00:02:54.334 --> 00:02:58.794 私たちは 既存の抗生物質の使用を管理し 新しい抗生物質を作り 00:02:58.794 --> 00:03:02.141 新旧の薬剤への耐性に立ち向かい 00:03:02.141 --> 00:03:06.083 細菌感染と戦う 新たな方法を探る必要があります 00:03:06.083 --> 00:03:10.021 抗生物質の最大の消費者は 農業で 00:03:10.021 --> 00:03:13.401 食用動物の感染症を 治療するだけでなく 00:03:13.401 --> 00:03:16.411 成長を促進するためにも 抗生物質が使われます 00:03:16.411 --> 00:03:18.981 抗生物質を大量に使用すると 00:03:18.981 --> 00:03:22.481 細菌の抗生物質への曝露が増え 00:03:22.481 --> 00:03:26.851 したがって 耐性を獲得する機会が増えます 00:03:26.851 --> 00:03:32.341 サルモネラ菌のような 動物によく見られる 多くの細菌は 人に感染する可能性もあります 00:03:32.341 --> 00:03:36.906 薬剤耐性を獲得したサルモネラ菌が 食物連鎖を介して人に持ち込まれ 00:03:36.906 --> 00:03:41.463 国際貿易や旅行によって 広まります 00:03:41.463 --> 00:03:43.986 新しい抗生物質の開発に関しては NOTE Paragraph 00:03:43.986 --> 00:03:47.456 最も有望な新しい化合物が 自然界に存在しています 00:03:47.456 --> 00:03:52.001 他の微生物や真菌のような生物は 競争環境で生きるために 00:03:52.001 --> 00:03:54.661 何百万年にもわたって 進化してきました 00:03:54.661 --> 00:03:58.071 つまり 特定の細菌よりも 生存上 有利になるために 00:03:58.071 --> 00:04:02.285 しばしば抗生物質を 持っているというわけです 00:04:02.285 --> 00:04:07.375 抗生物質と耐性を抑制する分子を ひとまとめにすることも可能です NOTE Paragraph 00:04:07.375 --> 00:04:10.528 細菌が耐性を獲得する 方法のひとつは 00:04:10.528 --> 00:04:13.745 薬剤を分解する タンパク質を自身で作ることです 00:04:13.745 --> 00:04:18.275 抗生物質と分解タンパク質の阻害剤を ひとまとめにすることで 00:04:18.275 --> 00:04:21.185 抗生物質はその機能を発揮できます 00:04:21.185 --> 00:04:25.615 「バクテリオファージ」は 人に影響を与えずに細菌を攻撃するウイルスで NOTE Paragraph 00:04:25.615 --> 00:04:29.965 細菌感染と戦うための 有望な新しい手段のひとつです 00:04:29.965 --> 00:04:33.155 一方 一般的な感染症に対する ワクチンの開発は 00:04:33.155 --> 00:04:36.598 基本的に 病気の予防に役立ちます 00:04:36.598 --> 00:04:40.255 これらすべての手法においては 開発のための資金調達が最大の課題で NOTE Paragraph 00:04:40.255 --> 00:04:43.625 世界中で 資金がひどく不足しています 00:04:43.625 --> 00:04:48.485 抗生物質はあまりに採算が取れないため 大きな製薬会社の多くは 00:04:48.485 --> 00:04:50.870 抗生物質の開発を止めています 00:04:50.870 --> 00:04:54.650 一方で 新しい抗生物質を 市場に出すことに成功した中小企業は 00:04:54.650 --> 00:05:00.345 アメリカのアカオジェンのように 依然として破綻することが多いです 00:05:00.345 --> 00:05:04.077 バクテリオファージやワクチンのような 新しい治療法は 00:05:04.077 --> 00:05:08.137 従来の抗生物質と同じ 基本的な問題に直面しています 00:05:08.137 --> 00:05:11.451 効果が高ければ 一度しか使われず 00:05:11.451 --> 00:05:13.675 利益を生み出しにくいのです 00:05:13.675 --> 00:05:17.075 そして長期的に うまく耐性を阻止するには 00:05:17.075 --> 00:05:20.595 私たちは 新しい抗生物質を 控えめに使用しなければなりません 00:05:20.595 --> 00:05:24.495 これは 開発者の利益を さらに下げることになります 00:05:24.495 --> 00:05:30.705 可能な解決策のひとつは 抗生物質の販売量と利益を切り離すことです NOTE Paragraph 00:05:30.705 --> 00:05:32.676 例えば イギリスでは 00:05:32.676 --> 00:05:38.016 医療供給者が抗生物質を会費で購入する モデルを試しています 00:05:38.016 --> 00:05:42.164 政府は 抗生物質の開発を奨励する方法を 模索していますが 00:05:42.164 --> 00:05:45.104 これらの取り組みは まだ初期段階です 00:05:45.104 --> 00:05:48.414 世界の国々は もっと様々な対策を 講じる必要があるでしょう 00:05:48.414 --> 00:05:51.964 しかし 抗生物質開発への 十分な投資と 00:05:51.964 --> 00:05:54.604 既存薬剤の適正使用で 00:05:54.604 --> 00:05:57.284 私たちが耐性を乗り切ることは まだ可能です