1
00:00:06,826 --> 00:00:11,735
フアナ・ラミレス・デ・アスバヒは
名立たる神学者

2
00:00:11,744 --> 00:00:14,254
法学者 数学者といった
面々の前に座っていました

3
00:00:14,254 --> 00:00:18,288
ヌエバ・エスパーニャ副王領の総督は
若い女性の知識を試すために彼らを招き

4
00:00:18,288 --> 00:00:21,478
可能な限りで集めた
最難関レベルの質問をしました

5
00:00:21,478 --> 00:00:24,408
しかし フアナは複雑な方程式から
哲学的な質問まで

6
00:00:24,408 --> 00:00:28,118
あらゆる難題に正しく答えたのです

7
00:00:28,118 --> 00:00:30,308
試験官たちは 後にその場面を

8
00:00:30,308 --> 00:00:33,628
『王国のガレオン船が何艇ものカヌーを
受け流す』ようだったと例えています

9
00:00:33,628 --> 00:00:38,225
質問攻めに応じたこの女性は
17世紀半ばに生まれました

10
00:00:38,225 --> 00:00:42,708
当時は１世紀以上にわたり
メキシコはスペインの植民地であったため

11
00:00:42,708 --> 00:00:46,118
複雑で何層にもなった
階級社会が形成されていきました

12
00:00:46,118 --> 00:00:49,018
フアナの母方の祖父母は
スペイン出身だったこともあり

13
00:00:49,018 --> 00:00:52,448
メキシコで最も尊ばれる階級にいました

14
00:00:52,448 --> 00:00:57,317
しかしフアナは未婚の両親の間に生まれ
スペイン軍の大尉であった父親は

15
00:00:57,317 --> 00:01:01,855
母親のイザベル夫人のもとを去り 彼女は
女手一つでフアナとその姉妹を育てました

16
00:01:01,855 --> 00:01:04,905
幸い 祖父が中産階級だったので

17
00:01:04,905 --> 00:01:07,205
経済的に余裕のある生活が
保証されていました

18
00:01:07,205 --> 00:01:10,815
また イザベル夫人は 娘にとって
厳しさを示す模範となり

19
00:01:10,815 --> 00:01:13,905
教育を受けたことがなく
女性を蔑視する時代であったにもかかわらず

20
00:01:13,905 --> 00:01:17,605
２つある父の不動産の１つを
しっかり管理していました

21
00:01:17,605 --> 00:01:21,892
たぶん このことが先例となって
フアナは生涯にわたる自信つけたのでしょう

22
00:01:21,892 --> 00:01:25,986
３歳のとき 彼女は姉が通う学校に
コッソリとついていきました

23
00:01:25,986 --> 00:01:29,606
のちに高等教育は男性のみが
受けられることを知ったとき

24
00:01:29,606 --> 00:01:32,956
変装して出席させてほしいと
母親に頼み込みました

25
00:01:32,956 --> 00:01:37,747
彼女の願いは叶いませんでしたが
祖父の書庫がフアナの慰めになりました

26
00:01:37,747 --> 00:01:42,195
思春期前半までには
哲学的討論 ラテン語

27
00:01:42,195 --> 00:01:45,245
アステカ人のナワトル語を
習得していました

28
00:01:45,245 --> 00:01:47,625
フアナの早熟した知性は

29
00:01:47,625 --> 00:01:49,865
メキシコシティの宮廷から
注目されました

30
00:01:49,865 --> 00:01:51,565
そして16歳のときに

31
00:01:51,565 --> 00:01:55,788
副王とその夫人はフアナを
侍女として受け入れました

32
00:01:55,788 --> 00:02:00,818
ここで彼女の寸劇と詩は
宮廷を時に眩惑させ 時に憤慨させました

33
00:02:00,818 --> 00:02:03,278
彼女の挑発的な詩
『Foolish Men』では

34
00:02:03,278 --> 00:02:06,408
性差別主義者のご都合主義を
忌まわし気に批判しました

35
00:02:06,408 --> 00:02:10,928
男性が女性を堕落させていると非難し
男性の不道徳さを責め立てました

36
00:02:10,928 --> 00:02:14,808
論争があったものの
彼女の作品は人々に敬慕の念を抱かせ

37
00:02:14,808 --> 00:02:16,478
結婚の申し込みも数々ありました

38
00:02:16,478 --> 00:02:19,618
しかしフアナは結婚より
知識の方に興味がありました

39
00:02:19,618 --> 00:02:22,168
そして当時の父権社会のなかで

40
00:02:22,168 --> 00:02:25,048
彼女が「知識」を見つけた居場所は
１か所しかありませんでした

41
00:02:25,048 --> 00:02:29,039
メキシコのカトリック教会はスペインの
宗教裁判所の強い影響を受けていましたが

42
00:02:29,039 --> 00:02:32,849
フアナが独身のままでいる限り
独自の行動と

43
00:02:32,849 --> 00:02:34,659
社会的地位の維持を
許そうとしました

44
00:02:34,659 --> 00:02:39,079
20歳のとき彼女はサン・ヘロニモ修道会
サンタ・パウラ修道院に入ると

45
00:02:39,079 --> 00:02:43,409
ソル・フアナ＝イネス・デ・ラ・クルス
との洗礼名が付けられました

46
00:02:43,409 --> 00:02:47,651
何年もの間 教会はソル・フアナを
愛蔵すべき者として大切に扱いました

47
00:02:47,651 --> 00:02:52,184
宗教音楽や宗教詩に加え

48
00:02:52,184 --> 00:02:54,604
戯曲 喜劇 さらには
哲学や数学の論文も書きました

49
00:02:54,604 --> 00:02:56,654
創作物のコレクションの規模が
大きくなると

50
00:02:56,654 --> 00:02:59,244
多くの著名な学者たちが
彼女のもとを尋ねました

51
00:02:59,244 --> 00:03:02,094
修道院の会計係や
記録保管人としても仕えながらも

52
00:03:02,094 --> 00:03:05,684
姪と姉妹たちの生活の糧を搾取しようとした

53
00:03:05,684 --> 00:03:07,804
男たちから彼女たちを守りました

54
00:03:07,804 --> 00:03:12,435
遠慮なくものを言う性格がついに
後援者との対立を引き起こしました

55
00:03:12,435 --> 00:03:18,889
1690年 ある尊い説教に対するソル・フアナの
個人的な評論文を司教は出版しました

56
00:03:18,889 --> 00:03:20,199
出版にあたり

57
00:03:20,199 --> 00:03:25,122
司教は 議論ではなく 祈りに身を捧げるよう
ソル・フアナに忠告しました

58
00:03:25,122 --> 00:03:28,062
彼女は もし女性たちが知性を
生かすことを神が望まぬなら

59
00:03:28,062 --> 00:03:30,602
そもそも女性に知性を与えないだろうと
言い返しました

60
00:03:30,602 --> 00:03:34,507
このやりとりがメキシコの
保守的な大司教の目に留まると

61
00:03:34,507 --> 00:03:37,907
ソル・フアナの評判は
徐々に貶められていき

62
00:03:37,907 --> 00:03:40,827
彼女の本を売り払い
書くことをあきらめるよう強いられたのです

63
00:03:40,827 --> 00:03:44,827
この検閲に激怒したものの
教会を去ることは気が進まなかったので

64
00:03:44,827 --> 00:03:46,867
彼女は渋々新たな誓約を交わしました

65
00:03:46,867 --> 00:03:50,047
最後の反抗的な行動として

66
00:03:50,047 --> 00:03:53,487
「すべての者の中で最悪な私は―」
と血書しました

67
00:03:53,487 --> 00:03:57,661
学ぶことを奪われたソル・フアナは
懸命に慈善活動にとりかかりました

68
00:03:57,661 --> 00:04:03,198
そして1695年に妹たちの看病中に
感染した病気により亡くなりました

69
00:04:03,198 --> 00:04:08,535
今ではソル・フアナはアメリカ大陸で
最初のフェミニストとして認められています

70
00:04:08,535 --> 00:04:12,741
彼女は数えきれないほどの記録映画
小説 オペラの主人公になっており

71
00:04:12,741 --> 00:04:15,961
また メキシコの200ペソ紙幣に
肖像画が描かれています

72
00:04:15,961 --> 00:04:19,221
ノーベル賞受賞者であるオクタビオ・パスは
こう言っています

73
00:04:19,221 --> 00:04:23,329
「ソル・フアナの作品は
歴史の産物であると言っても過言ではなく

74
00:04:23,329 --> 00:04:27,849
歴史も彼女の作品の産物であると
言い足さなければならない」