WEBVTT 00:00:06.755 --> 00:00:10.037 国のヒーローか それとも一番の敵か 00:00:10.037 --> 00:00:12.450 歴史上の人物は よく議論の的になりますが 00:00:12.450 --> 00:00:14.836 生前に神格化されたり 中傷されることは 00:00:14.836 --> 00:00:16.496 ほとんどありませんでした 00:00:16.496 --> 00:00:19.129 でも第7代アメリカ大統領は例外です 00:00:19.129 --> 00:00:23.198 今回は 歴史対アンドリュー・ジャクソンの 裁判です 00:00:23.198 --> 00:00:27.973 「静粛に静粛に この人物は誰だったか… ジャクソン大統領! 00:00:27.973 --> 00:00:31.225 あなたは大統領府の品位を下げ 00:00:31.225 --> 00:00:33.612 財政政策で失敗し 00:00:33.612 --> 00:00:36.644 アメリカ先住民に対する 残虐行為を働いた罪で告訴されておる 00:00:36.644 --> 00:00:39.147 どう弁明するかね?」 00:00:39.147 --> 00:00:41.558 「裁判長 私は大都市の弁護士ではありませんが 00:00:41.558 --> 00:00:43.865 いくらか 知っていることはあります 00:00:43.865 --> 00:00:45.532 ジャクソン大統領が 00:00:45.532 --> 00:00:47.035 腕一本で成功した開拓者であり 00:00:47.035 --> 00:00:48.157 偉大な将軍で 00:00:48.157 --> 00:00:50.788 国民の本当の味方だと 知っています」 00:00:50.788 --> 00:00:52.583 「裁判長 この『国民の味方』は ばくち打ちで 00:00:52.583 --> 00:00:54.480 酔っ払いで 喧嘩好きでした 00:00:54.480 --> 00:00:55.740 その上 彼は 00:00:55.740 --> 00:00:57.087 とてもケンカっ早く 00:00:57.087 --> 00:00:58.808 自分から手を出したと 言われています 00:00:58.808 --> 00:00:59.974 質問ですが 00:00:59.974 --> 00:01:02.875 そんな人間が国で最も威厳ある職務に ふさわしかったのでしょうか 00:01:02.875 --> 00:01:05.159 彼の大統領就任式での失敗を 忘れられますか 00:01:05.159 --> 00:01:07.557 ホワイトハウスに 酔っ払った暴徒を招き入れたなんて 00:01:07.557 --> 00:01:09.146 過去に聞いたことがあるでしょうか 00:01:09.146 --> 00:01:12.205 室内をきれいにするのに 長い時間がかかったのですよ」 00:01:12.205 --> 00:01:15.563 「その酔っ払った暴徒は アメリカ国民であり 00:01:15.563 --> 00:01:18.064 彼らは勝利を祝って 当然です」 00:01:18.064 --> 00:01:21.975 「静粛に静粛に! さて このお祝いに パイは供されたのだろうか」 00:01:21.975 --> 00:01:24.363 「結構なことですね さて ジャクソン大統領 00:01:24.363 --> 00:01:25.812 大統領就任後すぐに 00:01:25.812 --> 00:01:27.584 スポイルズ・システム(猟官制)を導入し 00:01:27.584 --> 00:01:30.481 何百人もの優秀な政府職員を 00:01:30.481 --> 00:01:33.497 無能な政党支持者に代えたのは 事実ですか」 00:01:33.497 --> 00:01:35.664 「裁判長 大統領はそんなことはしていません 00:01:35.664 --> 00:01:38.003 彼は職員が不当に利益を得たり おかしなことをしないよう 00:01:38.003 --> 00:01:41.098 公務員を入れ替えようとしたのです 00:01:41.098 --> 00:01:42.514 自分たちにへつらう者に 00:01:42.514 --> 00:01:45.726 地位を与えるよう主張したのは 政党の他の者たちでした 00:01:45.726 --> 00:01:48.228 「しかし大統領は それを認めたのでしょう?」 00:01:48.228 --> 00:01:50.251 「しかしですね」 00:01:50.251 --> 00:01:51.435 「では次に 00:01:51.435 --> 00:01:53.524 ジャクソン大統領 あなたは 00:01:53.524 --> 00:01:55.938 合衆国銀行と 執拗に争った結果 00:01:55.938 --> 00:01:58.063 1837年恐慌や 00:01:58.063 --> 00:01:59.808 それに続く経済不況を 00:01:59.808 --> 00:02:01.524 引き起こす原因を 作ったのではありませんか 00:02:01.524 --> 00:02:03.391 あなたが1832年に発動した 00:02:03.391 --> 00:02:05.391 拒否権の行使は 00:02:05.391 --> 00:02:08.282 大衆への無責任な迎合であり 00:02:08.282 --> 00:02:10.333 経済的に無意味な 行為ではありませんでしたか? 00:02:10.333 --> 00:02:12.480 「裁判長  この方の想像力はとても豊かですね 00:02:12.480 --> 00:02:14.497 その銀行は裕福なアメリカ人を 00:02:14.497 --> 00:02:15.742 さらに裕福にしただけです 00:02:15.742 --> 00:02:17.573 金融恐慌はすべて イギリスの銀行が金利を上げ 00:02:17.573 --> 00:02:19.458 貸付額を減らしたために 00:02:19.458 --> 00:02:20.835 起こったのです 00:02:20.835 --> 00:02:23.829 それで大統領を非難するなんて とんでもないですよ」 00:02:23.829 --> 00:02:26.307 「しかし大統領が国の銀行を 潰さなければ 00:02:26.307 --> 00:02:28.678 他の貸付金が枯渇したとき 00:02:28.678 --> 00:02:31.145 国の銀行が農家や事業者に 貸付できたでしょう 00:02:31.145 --> 00:02:32.569 そうではありませんか?」 00:02:32.569 --> 00:02:34.473 「これは推測の域を出ないな 00:02:34.473 --> 00:02:35.648 次に進もうか」 00:02:35.648 --> 00:02:36.791 「裁判長 承知しました 00:02:36.791 --> 00:02:38.159 これからジャクソン大統領の 00:02:38.159 --> 00:02:39.098 最悪の犯罪の話をします 00:02:39.098 --> 00:02:41.724 インディアン移住法により 00:02:41.724 --> 00:02:44.312 全部族を彼らの土地から 追い出した話です」 00:02:44.312 --> 00:02:46.064 「その非難には 憤りを感じます 00:02:46.064 --> 00:02:47.913 アメリカは先住民から 公明正大に 00:02:47.913 --> 00:02:49.592 土地を買ったのです」 00:02:49.592 --> 00:02:51.450 「はるかに強大な軍を持つ― 00:02:51.450 --> 00:02:53.898 国による弾圧や威嚇を 00:02:53.898 --> 00:02:55.505 公明正大というのですか 00:02:55.505 --> 00:02:58.144 あるいは チェロキー族を 実際の指導者がいない 00:02:58.144 --> 00:02:59.918 小さな集団に分けて 移住させる条約に 00:02:59.918 --> 00:03:01.294 サインしたことは どうですか? 00:03:01.294 --> 00:03:02.938 チェロキー族は国軍が来る前に 00:03:02.938 --> 00:03:05.422 十分準備する時間がなく 00:03:05.422 --> 00:03:07.759 『涙の道』を歩まざるを得なかったのです」 00:03:07.759 --> 00:03:08.802 「ちょっと待って下さい 00:03:08.802 --> 00:03:10.406 それは全て ジャクソン大統領の退任後に 00:03:10.406 --> 00:03:12.875 ヴァン・ビューレンが やったことです」 00:03:12.875 --> 00:03:14.859 「しかしジャクソン大統領が その土台を作り 00:03:14.859 --> 00:03:17.045 条約が批准されることを 確実にしたのです 00:03:17.045 --> 00:03:19.063 ヴァン・ビューレンが 後にやったのは 00:03:19.063 --> 00:03:20.720 その施行だけです」 00:03:20.720 --> 00:03:22.366 「裁判長 00:03:22.366 --> 00:03:24.061 政府は初めから 00:03:24.061 --> 00:03:25.644 インディアンの土地を 買っていますし 00:03:25.644 --> 00:03:27.444 私の依頼人は 大統領になる前も 00:03:27.444 --> 00:03:28.744 このような交渉を 行っていました 00:03:28.744 --> 00:03:30.640 ジャクソン大統領は 先住民が 00:03:30.640 --> 00:03:32.033 自分たちの土地の 補償金を得て 00:03:32.033 --> 00:03:33.796 西に移る方が 彼らにとって最善の策だと 00:03:33.796 --> 00:03:35.151 本当に信じていたのです 00:03:35.151 --> 00:03:36.373 西には 彼らが慣れたやり方で 00:03:36.373 --> 00:03:37.313 生活を続けられる土地が 十分にあり 00:03:37.313 --> 00:03:38.366 生活を続けられる土地が 十分にあり 00:03:38.366 --> 00:03:39.524 自分たちの土地に 固執して 00:03:39.524 --> 00:03:41.585 白人移住者と対峙し続けるより 良いと信じていました 00:03:41.585 --> 00:03:43.380 白人移住者の中には インディアンの撲滅を 00:03:43.380 --> 00:03:45.338 望む者もいたことを 忘れないでください 00:03:45.338 --> 00:03:46.975 今とは時代が違ったのです」 00:03:46.975 --> 00:03:48.926 「しかし そんな違う時代であっても 00:03:48.926 --> 00:03:50.557 議会にも 00:03:50.557 --> 00:03:51.482 最高裁にさえも 00:03:51.482 --> 00:03:53.035 移住法が どれほど悪いものかを理解し 00:03:53.035 --> 00:03:54.478 声高にそれに反対した人も 00:03:54.478 --> 00:03:56.140 大勢いましたよね?」 00:03:56.140 --> 00:03:58.474 「私の依頼人は 相当の圧力を受けていました 00:03:58.474 --> 00:04:00.558 これほどの大国を治め 00:04:00.558 --> 00:04:02.440 連邦としてまとめ続けるのは 00:04:02.440 --> 00:04:03.766 簡単だと思いますか? 00:04:03.766 --> 00:04:05.443 各州が連邦法を 無効にしようと 00:04:05.443 --> 00:04:06.902 していた時にですよ 00:04:06.902 --> 00:04:08.783 大統領はかろうじて サウスカロライナ州に 00:04:08.783 --> 00:04:10.724 輸入関税の導入を 撤回させました 00:04:10.724 --> 00:04:12.808 ジョージア州は 金の発見に出かけ 00:04:12.808 --> 00:04:14.701 チェロキー族の土地の 奪取を始めました 00:04:14.701 --> 00:04:16.703 先住民を移住させるか 00:04:16.703 --> 00:04:19.080 州政府ともう一度戦うかの どちらかだったのです」 00:04:19.080 --> 00:04:20.994 「ではあなたは ジャクソン大統領が 00:04:20.994 --> 00:04:22.626 政治目標の達成のため 道徳原理を 00:04:22.626 --> 00:04:24.141 犠牲にしたと 認めますね?」 00:04:24.141 --> 00:04:27.058 「その通りですが これまで そうでない指導者がいましたか?」 00:04:27.058 --> 00:04:29.308 社会が変化し 道徳が進化すると 00:04:29.308 --> 00:04:30.819 昨日のヒーローは 00:04:30.819 --> 00:04:33.470 明日の悪者かもしれないし その逆かもしれません 00:04:33.470 --> 00:04:35.397 歴史は過去のことかもしれませんが 00:04:35.397 --> 00:04:39.397 我々の歴史の理解は 常に審理にかけられているのです