1 00:00:00,830 --> 00:00:04,721 私たちはみんな動きというのは 見えるものだと思っています 2 00:00:05,889 --> 00:00:10,977 私がステージの上を歩き 話しながら身振り手振りをする 3 00:00:10,977 --> 00:00:13,238 そのような動きは 目に見えるものです 4 00:00:14,255 --> 00:00:19,737 しかしあまりに小さくて人の目には留まらない 重要な動きの世界があります 5 00:00:19,737 --> 00:00:21,778 この何年か私たちは 6 00:00:21,778 --> 00:00:24,395 そういった動きが 人の目には見えなくとも 7 00:00:24,395 --> 00:00:27,325 カメラなら捉えられることに 注意を払うようになりました 8 00:00:28,305 --> 00:00:29,856 どういうことか 説明しましょう 9 00:00:30,717 --> 00:00:34,339 左側は人の手の映像で 10 00:00:34,339 --> 00:00:37,486 右側は眠っている 赤ちゃんの映像です 11 00:00:37,486 --> 00:00:40,412 しかし もし私が ビデオだと言わなければ 12 00:00:40,412 --> 00:00:44,183 皆さん写真を見ているのだと 思ったことでしょう 13 00:00:44,183 --> 00:00:45,945 どちらの映像にも 14 00:00:45,945 --> 00:00:49,112 ほとんど動きがないからです 15 00:00:50,175 --> 00:00:53,920 それでもここには 沢山の微細な動きがあります 16 00:00:53,920 --> 00:00:56,452 左側の人の 手首に触れてみたなら 17 00:00:56,452 --> 00:00:58,448 脈を感じるだろうし 18 00:00:58,448 --> 00:01:00,933 右側の赤ちゃんを 抱きかかえたなら 19 00:01:00,933 --> 00:01:03,324 呼吸に応じて赤ちゃんの胸が 上下するのを 20 00:01:03,324 --> 00:01:04,714 感じられることでしょう 21 00:01:05,762 --> 00:01:09,338 これらの動きは 大切なものですが 22 00:01:09,338 --> 00:01:12,681 あまりに小さくて 見ただけでは分からないため 23 00:01:12,681 --> 00:01:14,957 手で直に触って 24 00:01:14,957 --> 00:01:17,857 感じ取る必要があるのです 25 00:01:18,997 --> 00:01:20,262 しかし数年前に 26 00:01:20,262 --> 00:01:24,667 MITの同僚が「モーション・マイクロスコープ」 というのを作りました 27 00:01:24,667 --> 00:01:29,951 映像の中の このような小さな動きを 検出して拡大し 28 00:01:29,951 --> 00:01:33,023 目で見て分かるようにする ソフトウェアです 29 00:01:33,416 --> 00:01:36,899 そのソフトウェアを 左の映像に使うと 30 00:01:36,899 --> 00:01:40,149 手首の脈動が 目に見えるようになり 31 00:01:40,149 --> 00:01:41,664 脈を数えて 32 00:01:41,664 --> 00:01:44,199 心拍数を測定する ことだってできます 33 00:01:45,095 --> 00:01:48,160 そのソフトウェアを 右の映像に使ったなら 34 00:01:48,160 --> 00:01:51,387 赤ちゃんのする呼吸が 目に見えるようになり 35 00:01:51,387 --> 00:01:55,934 触れることなく赤ちゃんの呼吸の状況を モニタできるようになります 36 00:01:56,884 --> 00:01:59,962 これはとても 強力な技術です 37 00:01:59,962 --> 00:02:04,239 通常は触れなければ 分からない現象を 38 00:02:04,239 --> 00:02:07,876 接触せずに視覚だけで 捉えられるからです 39 00:02:09,104 --> 00:02:13,515 2年ほど前から私は このソフトウェアを 考案した人たちと共同で研究するようになり 40 00:02:13,515 --> 00:02:16,882 奇想天外なアイデアに 挑戦することにしました 41 00:02:16,882 --> 00:02:19,575 このソフトウェアで 42 00:02:19,575 --> 00:02:22,710 小さな動きを可視化して 43 00:02:22,710 --> 00:02:27,168 あたかも触覚が拡張されたかのように できるのはすごいけど 44 00:02:27,168 --> 00:02:31,227 これを聴覚にも適用できないだろうか と思ったのです 45 00:02:32,508 --> 00:02:36,523 音による振動というのもまた 46 00:02:36,523 --> 00:02:39,710 一種の動きなのだから 47 00:02:39,710 --> 00:02:44,266 それを捉えて目に付くものすべてを マイクに変えてしまうことはできないか? 48 00:02:44,266 --> 00:02:46,207 これはちょっと奇妙な アイデアなので 49 00:02:46,207 --> 00:02:48,793 分かるように 説明しましょう 50 00:02:49,523 --> 00:02:53,011 普通のマイクというのは 中にある振動板の動きを 51 00:02:53,011 --> 00:02:56,610 電気信号に変換する 仕組みになっています 52 00:02:56,610 --> 00:03:00,928 振動板は音に敏感に反応して 動くようにデザインされていて 53 00:03:00,928 --> 00:03:05,255 その動きを音として解釈し 記録できるようになっています 54 00:03:05,255 --> 00:03:09,403 しかし音はどんな物でも 振動させます 55 00:03:09,403 --> 00:03:14,883 ただそういった振動はあまりに小さく速いため 目に見えないだけです 56 00:03:14,883 --> 00:03:18,621 この振動を 高速度カメラで撮影して 57 00:03:18,621 --> 00:03:22,197 ソフトウェアで その小さな動きを取り出し 58 00:03:22,197 --> 00:03:24,287 分析することで 59 00:03:24,287 --> 00:03:28,561 その振動を作り出したのがどんな音か 知ることはできないだろうか? 60 00:03:29,859 --> 00:03:35,798 それができれば 離れたところにあるものを 視覚的なマイクへと変えることができます 61 00:03:37,080 --> 00:03:39,023 それで試してみました 62 00:03:39,023 --> 00:03:41,190 ご覧頂くのは 行った実験の1つで 63 00:03:41,190 --> 00:03:44,139 右の鉢植えの植物を 64 00:03:44,139 --> 00:03:46,577 高速度カメラで 撮影しながら 65 00:03:46,577 --> 00:03:50,106 近くに置いたスピーカーで こんな音を流しました 66 00:03:50,275 --> 00:03:58,465 (曲 『メリーさんのひつじ』) 67 00:03:59,820 --> 00:04:02,644 これが撮影したビデオで 68 00:04:02,644 --> 00:04:06,568 毎秒数千フレームで 撮っていますが 69 00:04:06,568 --> 00:04:08,890 目をこらしてみても 70 00:04:08,890 --> 00:04:11,891 ただ葉っぱが じっとしているようにしか 71 00:04:11,891 --> 00:04:13,906 見えないでしょう 72 00:04:13,906 --> 00:04:18,712 音による葉っぱの動きは 1ミクロン程度だからです 73 00:04:19,103 --> 00:04:23,379 1センチの1万分の1です 74 00:04:23,379 --> 00:04:27,675 この映像で1ピクセルの 百分の1から千分の1の間 75 00:04:27,675 --> 00:04:29,834 というところです 76 00:04:29,881 --> 00:04:32,768 だからいくら 目をこらしたところで 77 00:04:32,768 --> 00:04:36,453 そのような小さな動きは 目では捉えられないのです 78 00:04:37,667 --> 00:04:41,824 しかし知覚的には 感知できなくとも 79 00:04:41,824 --> 00:04:44,633 数値的には 有意な変化があり 80 00:04:44,633 --> 00:04:46,635 適切なアルゴリズムを使えば 81 00:04:46,635 --> 00:04:50,112 この静止しているようにしか 見えない映像から 82 00:04:50,112 --> 00:04:52,449 このような音を 取り出すことができます 83 00:04:52,690 --> 00:05:00,074 (曲 『メリーさんのひつじ』) 84 00:05:00,074 --> 00:05:05,902 (拍手) 85 00:05:10,058 --> 00:05:11,997 どうしてそんなことが 可能なのか? 86 00:05:11,997 --> 00:05:16,341 そんな小さな動きからどうやって これほど多くの情報を取り出せるのか? 87 00:05:16,341 --> 00:05:21,702 葉っぱの動きが ちょうど1ミクロンで 88 00:05:21,702 --> 00:05:26,010 映像の中の動きは 千分の1ピクセルだったとしましょう 89 00:05:27,269 --> 00:05:29,841 これは わずかなものに 見えますが 90 00:05:29,841 --> 00:05:31,837 ビデオの1フレームの中には 91 00:05:31,837 --> 00:05:35,094 何十万というピクセルがあり 92 00:05:35,094 --> 00:05:38,548 そういった小さな動きを 93 00:05:38,548 --> 00:05:40,846 映像全体から集めれば 94 00:05:40,846 --> 00:05:43,469 千分の1ピクセルが 積み重なって 95 00:05:43,469 --> 00:05:46,244 十分大きなものになるのです 96 00:05:46,870 --> 00:05:50,505 個人的なことですが このことを発見した時には すごく興奮しましたね 97 00:05:50,505 --> 00:05:52,825 (笑) 98 00:05:52,825 --> 00:05:56,078 優れたアルゴリズムはありましたが 99 00:05:56,078 --> 00:05:59,695 パズルの重要なピースが まだ欠けていました 100 00:05:59,695 --> 00:06:03,299 この手法がうまくいくかに 影響する要因は 101 00:06:03,299 --> 00:06:05,296 たくさんあります 102 00:06:05,296 --> 00:06:08,500 対象がどんな物で どれくらい離れているか 103 00:06:08,500 --> 00:06:10,894 どんなカメラや レンズを使うか 104 00:06:10,894 --> 00:06:14,985 物に当てる光の強さや 音の大きさはどれくらいか 105 00:06:15,945 --> 00:06:19,320 そしてアルゴリズムは 優れているにしても 106 00:06:19,320 --> 00:06:22,710 初期の実験はすごく 慎重にやる必要がありました 107 00:06:22,710 --> 00:06:25,102 そういった要因の 何か1つでもまずいと 108 00:06:25,102 --> 00:06:27,470 何が悪かったのかも分からず 109 00:06:27,470 --> 00:06:30,117 ただノイズが 出てくるだけだからです 110 00:06:30,117 --> 00:06:33,437 ですから初期の実験は このような設定で行ったのです 111 00:06:33,437 --> 00:06:35,643 私が写っています 112 00:06:35,643 --> 00:06:39,683 左下に高速度カメラが 設置されていて 113 00:06:39,683 --> 00:06:41,866 ポテトチップの袋に 向けられています 114 00:06:41,866 --> 00:06:44,815 そして全体が明るい照明で 照らされています 115 00:06:44,815 --> 00:06:49,180 申し上げたように初期の実験は 非常に慎重を期して進めました 116 00:06:49,180 --> 00:06:51,688 これがその様子です 117 00:06:51,688 --> 00:06:55,229 (男性の声) 3 2 1 ハイ 118 00:06:55,229 --> 00:07:00,836 (デイヴィスが大声で) メリーさんの ヒツジ ヒツジ ヒツジ 119 00:07:00,836 --> 00:07:05,336 (笑) 120 00:07:05,336 --> 00:07:08,150 ご覧のように 馬鹿みたいに見える実験でした 121 00:07:08,150 --> 00:07:09,938 (笑) 122 00:07:09,938 --> 00:07:12,283 私がポテトチップの袋に向かって 大声を張り上げています 123 00:07:12,283 --> 00:07:13,834 (笑) 124 00:07:13,834 --> 00:07:16,321 おまけにすごく強い照明を 当てていたので 125 00:07:16,321 --> 00:07:20,415 最初のポテトチップの袋は 熱で文字通り溶けてしまいました (笑) 126 00:07:20,415 --> 00:07:23,659 しかし いかに馬鹿みたいに 見えようとも 127 00:07:23,659 --> 00:07:25,587 この実験はとても 重要なものでした 128 00:07:25,587 --> 00:07:28,513 このような音を取り出すことに 成功したからです 129 00:07:28,513 --> 00:07:33,225 Mary had a little lamb! Little lamb! Little lamb! 130 00:07:33,225 --> 00:07:37,313 (拍手) 131 00:07:37,313 --> 00:07:39,194 とても重要な瞬間でした 132 00:07:39,194 --> 00:07:43,343 物を撮した 音声のない映像から 133 00:07:43,343 --> 00:07:45,765 聞き取れる人の声を 初めて復元できたからです 134 00:07:45,765 --> 00:07:48,156 この実験を基準点として 135 00:07:48,156 --> 00:07:52,016 私たちはいろいろ変化をつけた 実験を始めました 136 00:07:52,016 --> 00:07:55,911 異なる物を使う 物をもっと離れたところに置く 137 00:07:55,911 --> 00:07:58,681 光を弱くする 音を小さくする 138 00:07:59,887 --> 00:08:02,761 そういった実験の結果を 分析して 139 00:08:02,761 --> 00:08:06,383 この手法の限界を 見極めました 140 00:08:06,383 --> 00:08:08,333 ひとたび限界が分かれば 141 00:08:08,333 --> 00:08:10,679 どう押し広げられるかも 分かるからです 142 00:08:10,679 --> 00:08:13,860 そうやってこんな実験に たどり着きました 143 00:08:13,860 --> 00:08:16,599 ここでもポテトチップの袋に向けて 音を流しますが 144 00:08:16,599 --> 00:08:21,429 今回はカメラが 5メートル離れていて 145 00:08:21,429 --> 00:08:24,262 防音ガラスの 背後にあります 146 00:08:24,262 --> 00:08:27,065 照らしている光も 自然の太陽光です 147 00:08:28,529 --> 00:08:32,443 ご覧いただいているのが 撮影した映像です 148 00:08:32,450 --> 00:08:37,009 そしてこれが部屋の中で ポテトチップの袋の横で流していた音です 149 00:08:37,009 --> 00:08:42,047 Mary had a little lamb whose fleece was white as snow, (メリーさんは小さな羊を飼っていた 雪のように白い毛をして) 150 00:08:42,047 --> 00:08:47,666 and everywhere that Mary went, that lamb was sure to go. (メリーさんの行くところは どこにでも付いてきた) 151 00:08:47,666 --> 00:08:50,103 そしてこれが 窓の背後から撮した 152 00:08:50,103 --> 00:08:53,698 無音の映像から 取り出した音声です 153 00:08:53,698 --> 00:08:58,463 Mary had a little lamb whose fleece was white as snow, 154 00:08:58,463 --> 00:09:03,920 and everywhere that Mary went, that lamb was sure to go. 155 00:09:03,920 --> 00:09:10,421 (拍手) 156 00:09:10,421 --> 00:09:13,963 限界を押し広げる方法は 他にもあります 157 00:09:13,963 --> 00:09:15,761 こちらはもっと静かな実験で 158 00:09:15,761 --> 00:09:19,871 ノートPCに繋いだ イヤホンを撮しています 159 00:09:19,871 --> 00:09:21,401 この時の目標は 160 00:09:21,401 --> 00:09:25,430 2つの小さなプラスチック製イヤホンを撮した 無音の映像から 161 00:09:25,430 --> 00:09:28,787 かけている曲を復元する ということでした 162 00:09:28,787 --> 00:09:30,860 これはすごく うまくいって 163 00:09:30,860 --> 00:09:33,761 結果から曲名を Shazamで当てることさえできました 164 00:09:33,761 --> 00:09:35,842 (笑) 165 00:09:37,191 --> 00:09:49,565 (曲 クイーン 『アンダー・プレッシャー』) 166 00:09:49,565 --> 00:09:54,584 (拍手) 167 00:09:54,584 --> 00:09:59,135 使用するハードウェアという点でも 限界を押し広げることができます 168 00:09:59,135 --> 00:10:01,596 ここまで ご覧頂いた実験は 169 00:10:01,596 --> 00:10:03,918 どれも高速度カメラを使っていて 170 00:10:03,918 --> 00:10:06,797 これは通常携帯についている カメラよりも 171 00:10:06,797 --> 00:10:09,014 100倍高速に 撮影することができます 172 00:10:09,014 --> 00:10:11,533 しかし私たちは 普通のカメラで 173 00:10:11,533 --> 00:10:13,763 この手法を使う方法も 見つけました 174 00:10:13,763 --> 00:10:17,832 ローリングシャッターと呼ばれる技術を 利用しています 175 00:10:17,832 --> 00:10:22,630 多くのカメラは 画像を1行ずつ記録しています 176 00:10:22,630 --> 00:10:28,332 1枚の画像の記録中に 撮影対象が動くと 177 00:10:28,344 --> 00:10:31,061 各行に時間的な ズレがあるため 178 00:10:31,061 --> 00:10:33,668 ビデオの各フレームに 179 00:10:33,668 --> 00:10:37,701 小さなゆがみが 記録されることになります 180 00:10:37,701 --> 00:10:41,507 このゆがみを分析したところ 181 00:10:41,507 --> 00:10:46,122 アルゴリズムを改良すれば そこから音を復元できることが分かりました 182 00:10:46,122 --> 00:10:48,034 これが行った実験で 183 00:10:48,034 --> 00:10:49,729 キャンディの袋を撮し 184 00:10:49,729 --> 00:10:52,690 横では同じ『メリーさんのひつじ』を 185 00:10:52,690 --> 00:10:54,442 スピーカーで流していますが 186 00:10:54,442 --> 00:10:58,645 今回は お店で買える 普通のカメラを使っています 187 00:10:58,645 --> 00:11:01,819 これから取り出した音を お聞かせします 188 00:11:01,819 --> 00:11:03,869 音にひずみがありますが 189 00:11:03,869 --> 00:11:07,085 それでも何の曲か おわかりになると思います 190 00:11:07,723 --> 00:11:13,946 (曲 『メリーさんのひつじ』) 191 00:11:25,527 --> 00:11:28,992 音にひずみがあるにしても 192 00:11:28,992 --> 00:11:31,288 これが意味深いのは 193 00:11:31,288 --> 00:11:34,254 家電量販店で買える 普通のカメラで 194 00:11:34,254 --> 00:11:37,688 このようなことが できたということです 195 00:11:39,122 --> 00:11:41,105 ここまで ご覧頂いたことから 196 00:11:41,105 --> 00:11:43,599 多くの人が思い浮かべるのは 197 00:11:43,599 --> 00:11:45,872 スパイ活動でしょう 198 00:11:45,872 --> 00:11:49,787 確かに誰かをスパイするために この技術を使うというのは 199 00:11:49,787 --> 00:11:52,420 容易に想像できることですが 200 00:11:52,420 --> 00:11:56,107 考えてほしいのは スパイ活動に関しては多くの成熟した技術が 201 00:11:56,107 --> 00:11:57,946 すでに存在する ということです 202 00:11:57,946 --> 00:12:00,886 実際 盗聴のために 遠くから物に レーザーを照射するというのは 203 00:12:00,886 --> 00:12:02,835 何十年も前から 行われています 204 00:12:03,978 --> 00:12:06,003 私たちの技術が 本当に新しく 205 00:12:06,003 --> 00:12:07,443 違っている点は 206 00:12:07,443 --> 00:12:11,738 物の振動を見る方法を 手に入れたということで 207 00:12:11,738 --> 00:12:15,151 これは世界を見る 新しいレンズになります 208 00:12:15,151 --> 00:12:16,661 このレンズを使うと 209 00:12:16,661 --> 00:12:21,560 物を振動させる音のような力について 学べるだけでなく 210 00:12:21,560 --> 00:12:24,018 物自体についても 学ぶことができます 211 00:12:24,975 --> 00:12:26,668 ここで視野を広げて 212 00:12:26,668 --> 00:12:30,917 これが私たちのビデオの使い方を いかに変えうるかを考えてみましょう 213 00:12:30,917 --> 00:12:34,470 通常私たちは物を見るために ビデオを使います 214 00:12:34,470 --> 00:12:37,392 それから音を聞くためにも 使えることを 215 00:12:37,392 --> 00:12:38,649 お見せしました 216 00:12:38,649 --> 00:12:42,620 しかし私たちが世界について学ぶ重要な方法が もう1つあります 217 00:12:42,620 --> 00:12:44,895 働きかけることによってです 218 00:12:44,895 --> 00:12:48,856 押したり 引いたり つついたり 揺すったりして 219 00:12:48,856 --> 00:12:51,187 何が起きるか見るのです 220 00:12:51,187 --> 00:12:55,460 これはビデオでは できないことです 221 00:12:55,460 --> 00:12:57,596 少なくとも 普通のビデオでは 222 00:12:57,596 --> 00:12:59,546 これからお見せするのは 最新の研究で 223 00:12:59,546 --> 00:13:02,213 ほんの2、3ヶ月前に思いついた アイデアを元にしています 224 00:13:02,213 --> 00:13:05,514 公の場で見せるのは これが初めてです 225 00:13:05,514 --> 00:13:10,877 基本的なアイデアは 映像の中の振動をヒントに 226 00:13:10,877 --> 00:13:12,748 物の性質を取り出して 227 00:13:12,748 --> 00:13:17,702 働きかけて反応を見られるような 形にするということです 228 00:13:19,120 --> 00:13:20,884 これが対象とする物で 229 00:13:20,884 --> 00:13:24,716 人の形をした 針金人形です 230 00:13:24,716 --> 00:13:27,804 これを普通のカメラで ビデオ撮影します 231 00:13:27,804 --> 00:13:29,928 カメラに特別なものは 使いません 232 00:13:29,928 --> 00:13:32,889 実際 以前は私の携帯電話を 使っていました 233 00:13:32,889 --> 00:13:35,141 振動する様子を 見たいので 234 00:13:35,141 --> 00:13:36,274 撮影中に 235 00:13:36,274 --> 00:13:39,620 人形が置かれている 台の上を 236 00:13:39,620 --> 00:13:41,758 ちょっと叩いてやります 237 00:13:47,038 --> 00:13:51,069 これだけです 5秒間の普通のビデオで 238 00:13:51,069 --> 00:13:53,205 台を叩いています 239 00:13:53,205 --> 00:13:56,718 この映像の中の 振動を使って 240 00:13:56,718 --> 00:14:01,262 物の構造的・物質的な性質について 学ぼうというのです 241 00:14:01,262 --> 00:14:06,096 そしてその情報を使って 新たなインタラクティブな物を作ります 242 00:14:12,866 --> 00:14:15,519 そうしてできたものが これです 243 00:14:15,519 --> 00:14:17,748 何の変哲もない 画像に見えますが 244 00:14:17,748 --> 00:14:20,859 これは画像ではなく ビデオでもありません 245 00:14:20,859 --> 00:14:23,227 この人形はマウスを使って 246 00:14:23,227 --> 00:14:26,086 いじってやることが できるんです 247 00:14:32,936 --> 00:14:35,289 ご覧頂いているのは 248 00:14:35,289 --> 00:14:37,615 目にしたことのない 新しい働きかけに対して 249 00:14:37,615 --> 00:14:42,073 物がどう反応するかいう シミュレーションです 250 00:14:42,073 --> 00:14:45,706 これをたった5秒間の 普通のビデオから作ったんです 251 00:14:47,249 --> 00:14:51,964 (拍手) 252 00:14:57,421 --> 00:15:00,648 これは世界を見る 新しい強力な方法です 253 00:15:00,648 --> 00:15:03,620 新たな状況に対して 物がどう反応するかを 254 00:15:03,620 --> 00:15:05,443 予測することが できるからです 255 00:15:05,443 --> 00:15:08,916 たとえば古い橋を前にして 256 00:15:08,916 --> 00:15:12,443 車で渡っても大丈夫か 分かりかねているという状況を 257 00:15:12,443 --> 00:15:15,276 想像できるでしょう 258 00:15:15,276 --> 00:15:18,050 この質問の答えは 259 00:15:18,050 --> 00:15:20,610 橋を渡り始める前に 知りたいはずです 260 00:15:21,988 --> 00:15:24,880 もちろんこの手法にも 限界はあり 261 00:15:24,880 --> 00:15:27,722 その点は視覚的マイクロフォンと 同じです 262 00:15:27,722 --> 00:15:29,483 しかしこの方法は 263 00:15:29,483 --> 00:15:32,778 予想以上に 多くの状況で使え 264 00:15:32,778 --> 00:15:35,546 長いビデオがある場合には 特にそうです 265 00:15:35,546 --> 00:15:36,964 たとえばこれは 266 00:15:36,964 --> 00:15:40,353 私のアパートの前の 藪を撮したビデオで 267 00:15:40,353 --> 00:15:43,441 私は藪に対して 何もしていません 268 00:15:43,441 --> 00:15:46,146 しかし1分間 撮している間に 269 00:15:46,146 --> 00:15:50,014 やさしいそよ風が この藪について学ぶのに 十分な振動を生み出してくれ 270 00:15:50,014 --> 00:15:53,111 このようなシミュレーションを 作れました 271 00:15:55,270 --> 00:16:01,412 (拍手) 272 00:16:01,412 --> 00:16:04,384 この技術を手にした 映画監督は 273 00:16:04,384 --> 00:16:06,103 映像が撮影された後に 274 00:16:06,103 --> 00:16:11,025 風の強さや向きを変えるのに 使うかもしれません 275 00:16:12,810 --> 00:16:17,345 こちらでは吊された カーテンを撮していて 276 00:16:17,345 --> 00:16:21,294 動きは見られませんが 277 00:16:21,294 --> 00:16:24,399 2分のビデオがあれば 278 00:16:24,399 --> 00:16:27,267 室内の自然な空気の 対流で生じた 279 00:16:27,267 --> 00:16:31,249 気付かないような 微かな動きや振動から 280 00:16:31,249 --> 00:16:34,064 シミュレーションを作るのに 十分な情報が得られます 281 00:16:36,243 --> 00:16:38,609 このようなインタラクティブなものは 282 00:16:38,609 --> 00:16:41,697 ビデオゲームや3Dモデルの中の 283 00:16:41,697 --> 00:16:44,344 架空の物として 284 00:16:44,344 --> 00:16:47,641 見慣れていると思いますが 285 00:16:47,641 --> 00:16:52,045 現実の世界の実際の物から 普通のビデオ映像を使って 286 00:16:52,045 --> 00:16:54,862 このような情報を 引き出すというのは 287 00:16:54,862 --> 00:16:57,155 新しいことであり 大きな可能性があります 288 00:16:58,410 --> 00:17:03,314 このプロジェクトに一緒に取り組んでいる 素晴らしい仲間たちです 289 00:17:04,057 --> 00:17:09,653 (拍手) 290 00:17:12,819 --> 00:17:15,876 今日お見せしたものは 始まりにすぎません 291 00:17:15,876 --> 00:17:18,789 私たちはこのような映像技術で 可能になることの 292 00:17:18,789 --> 00:17:20,961 ほんの表面に 触れたに過ぎません 293 00:17:20,961 --> 00:17:23,367 この技術は 誰でも 手に入れられる道具だけで 294 00:17:23,367 --> 00:17:28,066 周りの世界の違った見方を 可能にしてくれるからです 295 00:17:28,066 --> 00:17:29,995 この先 この技術が 296 00:17:29,995 --> 00:17:32,032 世界について教えてくれることを 探求していくのは 297 00:17:32,032 --> 00:17:33,888 本当に心躍ることだと 思います 298 00:17:34,381 --> 00:17:35,585 ありがとうございました 299 00:17:35,610 --> 00:17:41,717 (拍手)